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【レビュー】今年は「iPhone 16」がお買い得、実機のベンチマークでそれを確かめた(西田宗千佳)

ASCII.jp / 2024年9月18日 21時0分

iPhone 16 Plus(ピンク)とiPhone 16(ウルトラマリン)

 iPhoneは「2サイズ×2ライン」構成がしばらく続いている。今年も「iPhone 16系」と「iPhone 16 Pro系」でそれぞれ2サイズだ。

iPhone 16 ProとiPhone 16 Pro Max。カラーはどちらもデザートチタニウム

 毎年どちらが買いかで盛り上がるが、今年は「iPhone 16系」、すなわちスタンダードモデルがお買い得な年だ。それはどういうことなのか、実機を数日使って感じたことをまとめてみたい。

ベンチマークからわかる「iPhone 16のお得さ」 メインメモリーはiPhone 16もiPhone 16 Proも同じ8GB

 iPhone 16シリーズは、Apple Intelligenceを使うことを前提に作られている。Apple Intelligenceを利用可能にするためには、プロセッサーのAI推論処理能力を高める必要が出てくる。というわけで、今回、iPhone 16系とiPhone 16 Pro系の機能差は小さくなった。以下ベンチマークをご覧いただきたい。

Geekbench 6のテスト結果。赤枠内が今年のモデル
3D Markでのテスト結果。赤枠内が今年のモデル
Geekbench AIによる、Neural Engineの推論能力のテスト。赤枠内が今年のモデル

 過去機種と比較すると性能はアップしているのだが、CPU・GPUが「A17 Pro」採用のiPhone 15 Proシリーズからの改善幅はそこまで大きくない。

 一方、Neural EngineでのAI推論能力をテストする「Geekbench AI」の値を見ると、「A18」「A18 Pro」を搭載したiPhone 16シリーズは、A17 Proを使っているiPhone 15 Pro Maxに比べ大幅に優位な値が出た。

 メインメモリーも8GBで、iPhone 16系も16 Pro系も同じになっている。なおiPhone 15は6GBであり、iPhone 15 Pro系は8GBだったので、今回は「プロセッサーもメモリーもかなり近いものになった」と言っていいだろう。iPhone 16 Proの強みはゲームを中心に使われるGPUの性能であり、それ以外だと差は感じづらいかもしれない。

 とはいえ、ベンチマークはベンチマークに過ぎない。Apple Intelligenceの動作速度などはまだ見えてこない。ただし、アップルは「iPhone 15 Pro Maxでも、iPhone 16シリーズでも、Apple Intelligenceの機能や使い勝手に大きな差はない」とコメントしている。ちょっとした速度差や将来性という意味ではiPhone 16シリーズの方が優位……ということになるだろう。

 実際使ってみて感じるのは、性能の向上よりも「発熱の低下」だ。正確に言えば「比較的素早く冷える」という感じだろうか。熱が拡散しやすく、スポット的に熱を持ちづらい。

 以下はスマホ連動サーモグラフィカメラ「FLI R」で撮影したもの。iPhone 15 Pro Max、iPhone 16 Pro Max、iPhone 16でグラフィックベンチマークソフト「3D Mark」を走らせて高負荷になっているタイミングと終了直後、終了から5分後に撮影した(気温は26度)。

左から、iPhone 15 Pro Max、iPhone 16 Pro Max、iPhone 16。発熱傾向の違いがわかるだろうか

 発熱自体、iPhone 16シリーズの方が小さくなっているのだが、熱が全体に広がっていること、より速やかに熱が下がっているのがわかる。特にiPhone 16は、Pro Maxに比べ処理能力が抑えられている分、発熱も小さい。

 性能と発熱(消費電力)はトレードオフの関係にあるが、日常的な使い勝手ではiPhone 16はバランスが取れている……と言えそうだ。

iPhone 16 Plusのカメラコントロール。どの機種も同じ位置にある

シャッターより凝った作りの「カメラコントロール」

 iPhone 16の特徴の1つは、カメラ操作用の「カメラコントロール」が搭載されていることだ。

 いわゆる「カメラボタン」「シャッター」に類するものだが、単なる押しボタンではない。ボタンとして動く距離は小さく、「押し込んだ感覚」は振動とセットで、ある種の錯覚で表現されている。

 カメラコントロールは単なる押し込むボタンではない。カメラではおなじみの「半押し」(カメラコントロールではLight Press、軽押しに近い)や「ダブルタップ」、左右への「スライド」といった複数の機能を搭載している。

 こうした機能を搭載した理由は、カメラの撮影をもっと楽にするためだ。

 ボタンを押すとカメラアプリが起動する、シャッターが切れるというだけならすぐに実現できる。だが、スマホのカメラはもっと複雑になってきた。ズーム操作だけでなく、露出の変更や色合いの調整もある。

 特にiPhone 16には「スタイル」という機能が搭載されたことが大きい。これは写真の色味を加工するものだが、これまでの機能に比べ自由度が増している。

 こうした機能は一般的には画面を見ながら操作するものだ。それは今も変わらない。しかし、写真を撮るとき被写体に集中しやすいよう、カメラのUIは「シャッターの周り」にある方が良い。

 というわけで生まれたのがカメラコントロール、ということになる。

 正直、ちょっと慣れがいる。タッチセンサー+押し込みという操作系はこれまであまり体験してこなかったからだ。ズームや露出変更などを行う場合には、指を左右に滑らせる。

 実は「じわじわと動かす」操作と「サッと滑らせる」操作では、意味するところが異なっている。サッと滑らせると一定のところまで動き、じわじわ動かすと細かく調整できる。例えばズームの場合だと、サッと滑らせると「0.5倍」「2倍」などの光学ズームが効くキリのいいところへ動き、その中間で止めたい時にはじわじわ動かす。

 指を動かすというとタッチパッドのように感じられるが、実際には一方向に「スライドして使う」ものである。その上で「サッと滑らせる」「じわじわ動かす」の両方を覚えればいいだろう。

 写真を撮るのにこの機能が必須か、というとそんなことはない。だが確かに楽だ。

 今後、一眼カメラなどでいう「半押しによるフォーカス・AEの固定」機能も搭載になる。これは最初から欲しかったものだが、搭載になるとカメラフォーカスの価値が大きく変わりそうだ。

 また、Apple Intelligenceで「画像をAIに読み込ませて使う」はカメラコントロールから呼び出すことになる。この先重要なUIになるのは間違いない。

iPhone 16シリーズはカメラ配置が変わり、空間ビデオ・空間フォトに対応

Apple Intelligence時代の基本機能は「16」に詰まっている

 Apple Intelligenceのない状態だと、今年のiPhoneも去年のiPhoneもそこまで大きな変化はない。特に今年のプロセッサーは、CPUやGPUの大幅な進化より発熱や消費電力の低下を重視しているように見える。

 そして処理能力向上はNeural Engineの側にあり、それもApple Intelligenceあってのものである。そう考えると、今年はiPhone 16がかなりお得だ。

 まだ便利だと思う人は少ないかもしれないが、「空間ビデオ」「空間フォト」の撮影も可能になった。思い出はその時、リッチに残しておかないと後悔する。カメラの画質が上がったという意味でも、機能が上がったという意味でもプラスと言える。

 機能的にはiPhone 16もiPhone 16 Plusもほぼ同じであり、サイズの好みで選んでいい。この辺は非常にわかりやすい。

 Apple Intelligenceの評価は定まっていないが、長くiPhoneを使うのであれば意識しないのはもったいない。そういう意味では、iPhone 16は「新しい時代のiPhone」ということになる。

 まだ見えていないものだけに「来年でいい」という考え方もあるだろう。ただ、先の要素を除いても「今のiPhoneとして十分に使いやすい」ということは重要だ。そういう意味で、iPhone 16は良いバランスの製品だと感じる。

 

筆者紹介――西田 宗千佳  1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。取材・解説記事を中心に、主要新聞・ウェブ媒体などに寄稿する他、書籍も多数執筆。テレビ番組の監修なども手がける。主な著書に「生成AIの核心:「新しい知」といかに向き合うか」(NHK出版)、「メタバース×ビジネス革命 物質と時間から解放された世界での生存戦略」(SBクリエイティブ)、「ネットフリックスの時代」(講談社)、「ソニー復興の劇薬」(KADOKAWA)などがある。

 

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