鉄道大手、「車軸組み立てで不正」相次ぐ 各社の対応まとめ
ASCII.jp / 2024年9月19日 17時5分
JR貨物の工場で車輪(輪軸)組立時の不正行為が発覚した件を受け、国土交通省は9月12日、全国の鉄軌道事業者に対して輪軸の緊急点検を指示。大手を含む複数の事業者で類似の不正行為が発見され、対応に追われている。
JR東海や東京メトロなど複数の事業者に影響
9月19日現在、自社または業務委託先の工場で不正行為が発覚した事業者は以下のとおり。
●JR東海
JR東海では国交省の指示を受け、新幹線(約8000本)および在来線(約3880本)の車輪および大歯車に車軸を圧入する作業の記録を確認。9月14日付で点検結果を公表した。
同社によると、圧入力の値は機械で自動的に記録され、あとから修正できない仕様のため、記録データの改ざんはなかったとのこと。あわせて、新幹線の車両については全車両で圧入力値が目安値の範囲に収まっている(問題がない)ことを確認したという。
一方、在来線車両については、目安値を超過している輪軸が11本発見されたことから、該当車を一時運用から外し、別の輪軸へと交換することになった。
同社は本件の原因について、輪軸組立時のルールで圧入力が目安値を超えた際の対応がはっきりと示されていなかったことを挙げ、今後、目安値を超えた際の対応を明確化する方針を示した。
なお、同社は交換対象となった輪軸について、組立時に圧入力値以外のデータ(圧入前の「しめしろ」や圧入力波形など)を確認して安全が確保されており、今回の交換はあくまで「念のため」の措置としている。
●JR西日本
JR西日本は9月18日時点で、全所属車両の約7割の点検を完了。検査完了分については、圧入力値、圧入力波形ともに問題ない値で正しく記録されているという。
なお、9月17日には城端線の車両2両が急遽運用を離脱、一部列車が運行休止となるトラブルが発生した。本件について同社は、当該車両の大歯車の圧入力値が目安値の上限付近となっていたため、安全上の問題はないが、念のため使用を中止したと発表。輪軸の交換が完了次第、通常の運用に復帰させるとしている。
●メトロ車両(東京メトロ・東葉高速鉄道・埼玉高速鉄道)
東京メトロ、東葉高速鉄道、埼玉高速鉄道の3社では、業務委託先のメトロ車両で不正が発覚した。
発表によると、メトロ車両では車輪を車軸にはめ込む際の圧入力値について、各社が定める基準値を超えた場合、基準値内に収まるよう記録簿に虚偽の数値を記載していたという。
東京メトロ、東葉高速鉄道、埼玉高速鉄道の3社は、圧入力値の超過が一定の範囲内に収まっているものについては、超音波探傷検査で安全性を確認した上で運行を継続。それ以外の車両については輪軸の交換完了まで使用を中止した。
本件の報告を受け、国土交通省は東京メトロとメトロ車両に対し、9月19日から特別保安監査を実施。安全管理体制等について確認する。また、東葉高速鉄道と埼玉高速鉄道に対しても、東京メトロとメトロ車両の監査結果を踏まえ、必要な対応をとるとしている。
●京王重機整備(都営地下鉄・都電)
東京都交通局(都営地下鉄・都電)でも、業務委託先の京王重機整備で記録簿の数値を差し替える不正があったことを発表した。9月18日現在、同局の車両でデータ差し替えが判明した輪軸の数は以下のとおり。
都営地下鉄
・三田線:203軸(20編成) ・新宿線:230軸(14編成) ・大江戸線:1軸(1編成)
都電
・荒川線:33軸(12両)
さらに三田線については、96軸(4編成)分のデータが確認できない状態だという。
同局では基準値を下回った車両とデータが確認できない車両については、緊急点検でバックゲージ(車輪間隔)を測定し、車輪の緩みがなく、安全上問題がないことを確認した上で運用を継続。基準値を超過した車両(大江戸線用の1編成)については、念のため使用中止の措置をとり、近日中に輪軸交換を実施する予定だ。
なお、京王重機整備側の発表では、東京都交通局を含め、圧入力値が基準値の範囲外となっていたケースが31社(1786本)、データを確認できなかったケースが10社(587本)判明しているが、同社は影響を受けた鉄軌道事業者の名称を公表していない。
不正が発生した根本的な原因を突き止め、解決することが重要
国交省では今回の緊急点検について、JR貨物には9月20日まで、それ以外の事業者には9月30日までに同省へ結果を報告するよう求めている。9月19日時点では調査結果を公表していない事業者が多く、今後、前述の事業者以外に不正が発覚することもあり得る。
また、本件では資本的なつながりをもたず、地理的にも離れている複数の事業者で類似の不正行為が発生している。通常の不祥事と異なり、個々の現場の問題ではなく、不正が発覚した各事業者に共通する、より上流の工程で何らかの問題が起きている可能性も否定できない。
国交省と各事業者には、問題の根本的な原因を探り、解決することが求められる。
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