KDDIローソン、狙いは“学生” 「無料ギガ」と「吊るし」でアピール
ASCII.jp / 2024年9月20日 11時30分
三菱商事、ローソン、KDDIは9月18日、「未来のコンビニ」に向けた合同記者会見を開催。三菱商事とKDDIによる共同経営体制となったローソンは今後、「リアルテックコンビニエンスストア」を目指すとして、様々な取り組みが明らかになった。
なかでも注目を浴びているのが、KDDIが手がけるオンライン専用ブランド「povo」だ。「povo Data Oasis」として、povoユーザーはローソンに訪れると1回あたり100MBがもらえるという施策で、月に最高1GBまで付与されるサービスが年内にも始まるという。
かつて、povoは「ギガ活」として、ローソンで500円以上を購入して初めて300MBがもらえるという施策を展開していたが、今回からはローソンに訪れるだけで、ギガがもらえるようになるのだ。
さらにKDDIでは、2024年度内にローソンにおいてギガチャージ専用のeSIMを全国のローソンで展開していくという。KDDIの髙橋誠社長は「povoをあらゆるキャリアのサブ回線に」として、NTTドコモやソフトバンクのユーザーにもpovoをサブ回線として持ってほしいとアピールする。
記者会見終了後、一部メディアのインタビューに応じた髙橋社長は「昔、GREEでやったような『吊るし』をローソンでやりたかったんだよね。データチャージカードでもやってきたが、『吊るし』はいわばプロモーションとして効果は絶大で、povoを知ってもらうチャンスになれば良いと思っている」と語る。
「吊るし」のPOSAカードで学生にリーチ
『吊るし』とは、コンビニや家電量販店で陳列されている「プリペイドのカード」を指す。専門的には「POSA(ポサ)カード」と言われているが、店頭でPOSAカードをレジに持って行き、現金を支払うことで、残高をチャージできるカードだ。クレジットカードや個人情報を入力する必要がなく、残高をチャージできるとあって、クレジットカードを持てない学生、さらには小遣い制のお父さんなどに人気なのだ。
あのPOSAカードは店頭に陳列されていることで、客の目にとまり、結果として、ブランドの認知度が上がる効果がある。
povoは「オンライン専用ブランド」ということで、ネットでの認知度を上げ、ユーザーにリーチすることはできても、リアルの店舗で学生などに普及させる手段がなかった。
しかし、KDDIがローソンに出資したことで、コンビニという顧客接点を獲得。povoが不得意だったリアル店舗にPOSAカードを陳列することで、ブランド認知を図りつつ、ユーザーの拡大につなげていけるというわけだ。
記者会見では「サブ回線なんて言わずにメイン回線を狙っていけばいいのではないか」という質問が飛んでいたが、この「あえてサブ回線を狙う」にも深い意味がある。
POSAカードならクレジットカードも不要
メイン回線にするには当然、電話番号が必要で、契約するには「本人確認」をしなくてはならない。最近では犯罪を防止する観点から、マイナンバーカードのICチップによる本人確認が義務づけられる方針になりつつあるため、手続きや作業がかなり面倒になっている。
また、他社からMNPで乗り換えるにも手続きが煩雑であり、それだけで乗り換えを断念してしまうユーザーも多い。
しかし、「サブ回線」として「データ専用」に特化すれば、本人確認は不要になる。POSAカードと言うことでクレジットカードの登録も不要だ。
ローソン店頭でPOSAカードにチャージして、すぐにスマホにeSIMをダウンロードすれば、あっという間にデータ通信が使えるようになる。
メイン回線の通信料金は親に負担してもらいつつ、月末、ギガが足りなくなったら、自分の小遣いからサブ回線のpovoに現金でチャージして、データ通信を使い続けたいという学生の需要も掘り起こせるというわけだ。
“au”から“Ponta”へ サブスク名称変更で強化
KDDIではこれまで「auスマートパスプレミアム」として、月額548円で、iPhoneやiPadの修理や紛失のサポート、クーポンの配布、ウェザーニュースの有料機能が使えたり、フードデリバリーサービスの配達料が無料になるといったサービスを提供してきた。
この「auスマートパスプレミアム」を10月2日から「Pontaパス」としてリニューアルし、毎月600円以上、ローソンで得するクーポンや、au PAYでの決済において2%のポイントが貯まるようにもなるなど、毎月3000円以上、得になるサービスに強化していくという。
KDDIでは会員数を1500万から2000万に増やしたいとしている。
個人的には2000万なんて言わず、もっと会員数を増やせるような気がしたが、そのあたりを髙橋社長に突っ込んだところ「これまでのauスマートパスプレミアムだと、auだけと思われるところがって、やっぱり販売しづらい面があった。今回、名称を変えるので、ローソンでも扱っていただけるようになるのは大きいのではないか」と語った。
確かに「auスマートパスプレミアム」ではauユーザーしか契約しないが、「Pontaパス」であれば、NTTドコモやソフトバンクのユーザーで、ローソンに頻繁に通うような人も契約しやすくなる。
今回、KDDIはローソンという全国に1万4000を超える店舗網を持つコンビニを手にしたことで、これまでリーチできなかったNTTドコモやソフトバンクのユーザーへの接点を持つことになった。KDDIとしては、まずはpovoやPontaパスで、他キャリアユーザーを引き込もうという戦略のようだ。
筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)
スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。
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