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忘れると飛行機に乗れなくなるもの、なーんだ?(※パスポートでもチケットでもありません)

ASCII.jp / 2024年9月25日 7時30分

 「アメリカ旅行のため空港へ行ったら、飛行機に乗れなかった」という失敗談をSNSやYouTubeで見かけることがあります。その原因のほとんどは、電子渡航認証システム「ESTA(エスタ)」の申請忘れです。

申請を忘れるとアメリカに行けない電子渡航認証システム「ESTA」

■2009年からは日数に関わらず取得が必須

 アメリカへは、短期商用・観光など90日以内の滞在目的で旅行する場合、ビザ(査証)の取得は免除されていますが、2009年からは、ビザなしでのアメリカ入国にはESTAの取得が必須となっています。アメリカへ向かう際、空港でのチェックインでESTA申請の有無が確認され、未申請の場合は飛行機に乗せてもらえません。

 ESTAの存在をそもそも知らなかったというケースもあるようですが、ESTAは有効期限が2年間なのでその期間を過ぎていたり、パスポートを更新すると新たにESTAも申請が必要だったりするので、再申請を忘れてしまったというケースもよくあります。

 またアメリカを経由して他国へ行く場合も、アメリカでの乗り継ぎ時に入国審査が必要なためESTAの申請が必要。目的地がアメリカじゃないので、うっかり申請を忘れてしまう人も出てくるわけです。

ESTAは公式のスマートフォンアプリがあり、有効期限がチェックできる

■ESTAはどうやって取得する?

 ESTAの取得自体は、米国国土安全保障省ウェブサイトからでき、表示言語に日本語もあるのでそこまで難しくはありません。ですがESTA申請の平均記入時間は23分で、申請してから承認までも時間がかかり、米国国土安全保障省も72時間前までの申請を推奨しています。

申請開始から承認まで40分ほどで通るケースもありますが、申請数などの状況にもよるため、公式では72時間前までの申請が推奨されています

 そのため空港に着いてチェックイン時にESTA未申請という事がわかり、そこから慌てて申請しても承認される頃にはチェックインは締め切られて飛行機に乗れない……、というわけです。この場合、自己都合でのキャンセル扱いになるため、航空券の予約変更などが必要になります。格安チケットでキャンセル不可の場合は予約の変更もできず、返金もない場合が多いので、懐へのダメージも大きいです。最悪、旅行自体がキャンセルとなると、支払い済みの宿代なども同じ扱いになるので、旅行もできず、すべてムダな出費となるだけです。

■申請必要な国は米国以外にも広がっている

 このようなアメリカへ旅行する際にESTAの申請を忘れて大失敗というのは、旅行業界ではあるあるともいえるトラブルです。

 そのうえ、ここ最近はアメリカと同じような電子渡航認証システムを採用する国が増えてきており、同じような出発時のトラブルが増えるのでは……とみられています。

 同様のシステムを採用している国としては、オーストラリアの「ETA(イータ)」があります。こちらもビザ免除でオーストラリアに入国する際は必須で、事前の申請が必要。有効期限はアメリカより短い1年で、パスポートを更新すると再申請が必要なのは同じです。

オーストラリアのETAは原則スマートフォンアプリからの申請となっています

 また、ヨーロッパもシェンゲン圏に旅する日本人に対して、ビザ免除で入国する際は「ETIAS(エティアス)」の申請が必要となります。こちらは2025年に導入予定なので、現時点では必要ありませんが、フランスやスペイン、イタリアなど29のシェンゲン協定加盟国とキプロスの30ヵ国が対象となります。またモナコ、バチカン市国、サンマリノはシェンゲン協定加盟国を経由してアクセスとなるため、実質的にはETIASが必須となります。有効期限は3年で、パスポート更新で再申請は同じです。

ETIAS対象の30ヵ国
用語解説 シェンゲン協定
 ヨーロッパの国家間移動時に入国審査などなしで国境越えを許可する協定。主にEU加盟国が対象となるが、EU非加盟国のスイス、ノルウェー、アイスランドも協定に参加しており入国審査は不要となっています。ただし、2024年3月31日に締結国となったブルガリアとルーマニアに関しては陸路での出入国審査は継続しており、入国審査廃止は空路と海路のみです。

 同じヨーロッパでもイギリスはシェンゲン協定非加盟ですが、こちらも独自の電子渡航認証システム「UK ETA(エタ)」の対象国籍を2025年1月8日から拡大予定で、日本もその対象となっています。こちらの有効期限は2年間で、パスポート更新時の再申請は同じです。

イギリスのETAも原則スマートフォンアプリからの申請

 つまり、来年からは電子渡航認証の事前申請が必要な国が一気に約30ヵ国も増えるわけで、「申請を忘れていて飛行機に乗れなかった」というトラブルが増える要因となりそうです。

 ちなみに日本人には関係ありませんが、日本も電子渡航認証システム「JESTA(仮称)」を導入予定。現状は2030年までに導入予定とのことで、海外での導入スピードに比べると日本らしいのんびりとした対応だなと思ったりします。

■事前申請書類はほかにもある

 また電子渡航認証システムではありませんが、コロナ禍以降「電子入国カード」や「電子健康申告書」の事前申請を求めている国も増えてきています。たとえばシンガポールは紙の出入国カードを廃止し、電子入国カードの「SG Arrival Card」を採用。シンガポール到着日2日前から申請可能となっています。

シンガポールの電子入国カード「SG Arrival Card」

 マレーシアも2024年1月から電子入国カードの「MDAC」を採用しており、マレーシアの到着3日前以内に事前登録が必要。フィリピンは2022年12月から「eTravel」を新たに導入。こちらは電子入国カードだけでなく、健康申告や税関申告の電子申請も兼ねており、やはり3日前から申請可能となっています。

シンガポールの「eTravel」申請もスマートフォンアプリが用意されている

 これまで機内や入国審査場で紙の入国カードに手書きをしていた手間は省けますが、電子入国カードになっても入国時には毎回必要なのは同じで、渡航が多い人にとっては結構めんどうです。

 ただし電子入国カードの申請は電子渡航認証システムと違って、空港でのチェックイン時に確認があるケースはあるものの未申請の場合でも搭乗拒否にはならず、「入国審査までに申請してください」と注意を促されるケースがほとんど。とはいえ、そのまま忘れていると現地で慌てて登録するはめになり、申請のためにすぐインターネットの接続を確保する必要もあるなど、意外にめんどうなんですよね。入国審査に時間もかかってしまいますので、結局は自宅など日本に居るあいだに申請したほうが無難です。

どの申請も入力項目は意外と多いので、事前に落ち着いた状態で済ませておいたほうがいい

■「パスポートひとつで海外へ」は昔の話

 日本のパスポートはビザ免除もしくはアライバルビザで入国できる国が多く「パスポートひとつで海外に行ける」という印象が強いですが、各国の入国に際してデジタル化が進んだため、渡航前にしておく作業は増えている状態です。

 忘れるとせっかくの旅行が台無しになりかねません。海外旅行が決まったら「(渡航先の国名)、入国」といったキーワードで入国条件を調べると共に、事前申請がある場合はカレンダーやリマインダーなどに登録して、忘れないようにしておきましょう。

この記事を書いた人──中山智(satoru nakayama)

世界60ヵ国・100都市以上の滞在経験があり、海外取材の合間に世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。雑誌・週刊アスキーの編集記者を経て独立。IT、特に通信業界やスマートフォンなどのモバイル系のテクノロジーを中心に取材・執筆活動を続けている。

  • 「旅人ITライターさとる」(IT系メイン)
  • 「さとる・たべる・あそぶ」(旅行・エンタメ系メイン)

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