加入をまったく強要しないポータルサイトで、サービス加入者を増やし続けるKDDI独自のメソッド
ASCII.jp / 2024年9月30日 17時30分
KDDIの「ココロオドルSelect」に迫る!
KDDIが2023年から運営している「ココロオドルSelect」を知っているだろうか。
ココロオドルSelectは、「恋愛」「スポーツ」「お笑い」「音楽」といったジャンルごとにおすすめの作品をKDDI社内の編集部がピックアップして紹介するほか、季節やトレンドに合わせた独自の特集コンテンツを掲載しているポータルサイト/メディアだ。
SNSでの情報発信が主流となって久しい時代に、敢えてポータルサイトの形式をとって、キャリア自身がポータルサイトやメディアを運営する理由はどこにあるのだろう。ココロオドルSelectの立ち上げと運営にかかわった同社コミュニケーションデザインの浅葉森氏と、竹下めぐみ氏に話をきいた。(以下、略敬称)
“KDDIのポータルサイト”がいま必要なワケとは
──企業からの情報発信の形式として「ポータルサイト」というのは、SNSの時代になってからは珍しいと思いました。ポータルサイトという形式を用いたのはなぜなのでしょう?
浅葉「興味を持っていただいたお客様に対して、より丁寧な体験を提供したいと考えたためです。SNSも重要な接点ではありますが、コンテンツの回転も激しく、ひとつひとつの情報との接触時間が非常に短い媒体です。さまざまなルートから来訪していただき、編集部がおすすめしたい作品やサービスを独自の形でお届けする場所としては、ポータルサイトという形式が適していると考えました。このサイトはKDDIやauのブランディングも大きな目的になっており、ユーザーの皆さまにじっくり閲覧いただきたいと考えています」
──複数者のサービスが、コンテンツのタイプを問わずジャンルや特集テーマ別で一覧表示される形式も新鮮です。
浅葉「普通はなかなか実現しにくい形式だと思いますが、パートナー企業さまが私たちのコンセプトに理解を示してくださったおかげで、この並べ方ができました。たとえば「映画、スポーツ動画」といったコンテンツ別の並べ方ですと、どうしても、ひとつのコーナーに表示できるコンテンツやサービスが限られてしまいますから」
竹下「『恋愛』『スポーツ』などジャンル別におすすめ作品を並べたり季節の特集コンテンツを見ていただくことで、普段なら出会わなかった作品が『ココロオドルSelect』なら出会えるという体験を作れると思います。また日々作品を追加したり、開くたびに作品の並びがランダムに切り替わるような表示設定で、いつ来ても新しい作品に出合える工夫もしています」
──あ、本当だ! ちなみに、コンテンツはどのように選定しているのでしょうか?
竹下「担当メンバーのうち、この社員は恋愛担当、この社員は音楽担当といったかたちで、担当制にしています。それぞれが普段から担当ジャンルを眺めておいて、会議に合わせて『この作品はどうかな?』と持ち寄るんです」
──KDDIの社員さんによるキュレーションメディアの要素もあるんですね。作品によっては、担当の社員さんのコメントがサムネイルの下に表示されるのも、親しみが湧きます。
浅葉「レンタルショップで作品を探している時についつい見てしまう、店員さんのコメントポップのようなものをイメージしています。作品を観るきっかけづくりとして継続していきたい取り組みです」
今後の独自コンテンツの拡充にも期待大!
──現在は独自コンテンツとして、樋口幸平さん、塩野瑛久さん、浅川梨奈さん、桃月なしこさんに“ココロオドル”作品を紹介していただくコラムが載っていますね。こういったコンテンツの取材はどのようにしているんですか?
浅葉「外部のエンタメメディア編集部の方々と一緒に人選・インタビューを実施しています。今回のコンテンツの4名は編集部のメンバーからの推薦でお声をかけましたが、自然と、タイプの異なる俳優さんが集まってくださって、紹介する作品のタイプやジャンルにも幅を持たせることができたと思います」
竹下「皆さん、本当に作品やコンテンツに対する気持ちが強い方ばかりが揃ってくださって、作品についての語り口に情熱を感じました。“ココロオドル”作品の紹介によって、気になるあの人のいつもとは違うプライベートな一面が垣間見える、ここでしか見られない特集になっています。ぜひ一度見に来てください」
サービスへの加入を“強要しない”スタイル
──ビジネス的な部分にも触れてみたいのですが、このポータルサイトが今後狙っていく成果として、サービスごとの加入者数をいつまでにどのくらい増やすとか、ユーザーの契約プランをどのように変えていきたいといった、具体的な目標は決まっていますか?
浅葉「もちろん、会社のプロジェクトとして運営する以上は、事業への貢献度は試される部分ではあります。ただあくまで一番の目的は『au・KDDIというブランドをもっと好きになっていただく』ことなので、加入者数や売上などについての具体的な目標は設定していません。サイトの動線においても、さりげなくプラン変更へのリンクを出す程度にとどめています」
──でも、その方法でもブランディングを図りつつビジネス貢献目線でも一定の効果が出ているからこそ、サイトが続いているということになりますよね。
浅葉「はい。au IDの分析を通じ、サイトに来訪された後の料金プラン変更や各エンタメサービスへの加入割合などを検証しています。サイトによる間接的なビジネス貢献は一定以上の成果が出ているという評価で、いきなりサービス概要や料金の紹介から入るのではなく、作品から興味を持っていただくフローは非常に重要だと感じています」
竹下「コンテンツをタップして、しばらく時間を置いてから各サービスに加入してくださる方が多い印象なので、じっくりと作品の概要を読んでから、本当に見たいと思って加入してくださっているものと受け止めています」
──ここを訪れたユーザーはそもそも、興味を持ったコンテンツをタップすると思いますから、強く勧められなくても、自然とサービスに加入したくなるのかもしれませんね。お話をうかがって、ポータルサイトという形式のおもしろさや、ビジネスの手法としての魅力もよくわかりました。本日はありがとうございました。
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