1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. IT総合

なぜパスポートにラブレターを書いたらダメなのか

ASCII.jp / 2024年10月2日 7時30分

 海外旅行に不可欠な「パスポート」に関して、先日ネットを騒がせたニュースがありました。それは、とあるカップルYouTuberが相方のパスポートに手書きのラブレターを書き込んでしまった動画をアップして物議をかもしたというもの(すでに削除)。実はこれ、非常にめんどうなことになるケースがあるんです。

筆者のパスポートは有効期限1年を切っており、そろそろ切り替えの時期です

■パスポートにラクガキやシール貼りはNG

 パスポートは一見するとメモ帳のような感じなので、ついつい書き込みたくなる気持ちは分かりますが、国が発行する公文書。外務省の公式サイトでは、以下のようにアナウンスされています。

 パスポートの中で、所持人が記載することのできるページは所持人記入欄(裏表紙の内側)だけです。3ページ以降数字が印刷されているページには「渡航先」、「追記」又は「査証」と書かれていますが、これらのページは旅券事務所や各国が使用するものであり、例えば「渡航先」のページは渡航先が限定される場合に、旅券事務所が必要な事項を記載するところです。また,所持人記入欄の1つ前のページも国が注意書き等に使用するスペースですので、何も記載しないでください。

実際の外務省の「パスポートの保管・使用に関する注意事項」

 勝手に記入してしまうと、最悪の場合は入国を拒否されることも。ちなみに私の友人にもいたのですが、スタンプをキレイに押してもらうため、鉛筆で格子状に線を入れるのもNG。とにかくなにも書かない、貼らない、というのが決まりです。

 とはいえ、海外渡航時のパスポートは子どもにとっても必要なもの。うっかり子どもに渡して、ラクガキやシールを貼ってしまうと大変なことになるため、子どものパスポートは、基本的には親などの責任者がしっかりと管理しておきましょう。

■防虫剤と一緒にタンス保管はダメ

 多くの人はパスポートを使う頻度が少ないため、自宅で大切に保管している人が多いはず。その際に注意したいのが「防虫剤」と一緒にしまわないこと。これも外務省のサイトに記されていますが、防虫剤と一緒に保管するとパスポートのラミネートが変色してしまう可能性があるそうです。

外務省のパスポートQ&Aに、防虫剤に注意、との案内があります

 出入国審査では、顔写真のラミネート部分をスキャンして読み込む作業があるため、ここが変色してしまうと、正しく読み取れなくなってしまうといった可能性があるわけです。

 ちなみに最新のパスポートはICチップを内蔵しています。ICチップは磁石に弱いのですが、パスポートは、磁気ネックレスやハンドバッグの留め具に使われているような磁石の4〜10倍の磁力に振れても壊れないような設計になっています。

 とはいえ長期間磁気を受けるのは避けたほうがいいとのこと。また、うっかり衣服のポケットに入れたまま洗濯してしまい、早く乾かすために電子レンジに入れるというのも、当然ながらICチップが壊れてしまうためNGです。

■旅気分でのSNS投稿には気をつけて

 出入国審査を通過してスタンプが押されたページを記念に撮影し、そのSNS投稿もよく見かけますが、これも要注意。実はパスポートの下部にパスポート番号が記載されているので、それが漏れてしまうのです。

 パスポート番号はドットで書かれているので、意外と気がつきにくいんですよね。パスポート番号が漏れてしまっても、それだけでほかの個人情報が漏れたりするケースはほぼありませんが、名前や生年月日、住所などと組み合わせることで詐欺行為などに悪用される可能性があります。パスポート番号を登録しているWebサイトがない人はそこまで神経質になる必要はありませんが、一応パスポートの各ページに番号が記載されていることは頭に入れておきましょう。

査証欄下部にドット文字があり、実はパスポート番号が記載されている(こちらの写真は増補したページのため、番号ではなくSUPPLEMENTと記載されているだけ)

■出入国スタンプを押す場所が無くなったら?

 パスポートはビザを貼り付けたり、出入国のスタンプを押していくため、渡航回数が多いと査証欄のページを使い切ってしまうことも。以前は1回だけ査証欄を追加できる増補制度があり、現在、自分のパスポートも増補されている状態です。

これは、40ページ増補されている筆者のパスポート

 ところが旅券法令改正によって、この増補制度は2023年3月で廃止となってしまいました。そのため、査証欄に余白がなくなった場合は、新しいパスポートを申請し直す必要があります。

 その際、「切り替え申請」と「残存有効期間同一申請」のふたつから選択可能です。切り替え申請は新規で申請するのと同じく、10年(1万6000円)か5年(12歳以上/1万1000円、12歳未満/6000円)となっています。

 一方「残存有効期間同一申請」は、現在所持しているパスポートの有効期間満了日と同一のパスポートが発行でき、料金は6000円となっています。また切り替え申請と残存有効期間同一申請どちらもパスポート番号は新しくなるため、番号は引き継がれません。

「切り替え申請」と「残存有効期間同一申請」の案内

 パスポートの査証欄に空白が少ないと入国拒否となるケースもありますので、残り3ページを切ったら申請し直したほうがいいでしょう。ちなみに結婚や離婚、本籍の都道府県が変わった場合も、残存有効期間同一申請で変更可能です。

■2025年3月からパスポートはオンライン申請が安い

 直近の旅券法施行令の改正で、来年3月24日から新パスポート「2025年旅券」の発給が決まっています。といっても、現在のサイズや表紙の色、査証欄に「富嶽三十六景」があしらわれたデザインは同じ。

 変更点としては、偽造対策として現在ラミネートされている顔写真部分がプラスチック製に変更され、ICチップもそこに埋め込まれます。

現在はパスポートのノド部分(真ん中)にICチップを埋め込んだページがあります

 料金も変更となり、オンライン変更では10年有効旅券が1万5900円、5年有効券が1万900円(12歳未満は5900円)とそれぞれ100円安くなります。一方書面での申請では10年有効旅券が1万6300円、5年有効券が1万1300円(12歳未満は6300円)と300円の値上がり。オンラインで申請した方が400円オトクになります。

 また、現在は都道府県旅券事務所や一部の在外公館で旅券を作成していますが、2025年旅券は国内の国立印刷局のみの1ヵ所で作成する体制となります。そのため、国内でも輸送する時間がかかるほか、在外公館での申請も必ず日本からの輸送となり、交付までかなりの時間がかかります。そのため、海外在住の日本人が現地で申請するといったケースで、現在より時間が必要(数週間単位)になることが想定されます。

 さらに、これまでは旅券が発行できる在外公館の国ならば、パスポートを紛失しても短期間で再発行できましたが、こちらも日数がかかるようになるため、場合によっては「帰国のための渡航書」を交付してもらい、旅行を中断して帰国する必要がでてきそうです。

在インドネシア日本国大使館の案内でも、「現在と比べて旅券の申請から交付までに時間を要することになる」と記載されています

 以上が、最新のパスポート事情でした。海外旅行には必須のアイテムなので、ルールを守ってムダな出費がないよう大切に使いましょう!

この記事を書いた人──中山智(satoru nakayama)

世界60ヵ国・100都市以上の滞在経験があり、海外取材の合間に世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。雑誌・週刊アスキーの編集記者を経て独立。IT、特に通信業界やスマートフォンなどのモバイル系のテクノロジーを中心に取材・執筆活動を続けている。

  • 「旅人ITライターさとる」(IT系メイン)
  • 「さとる・たべる・あそぶ」(旅行・エンタメ系メイン)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください