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「折りたたみスマホ」いまだに低調 欲しいと思える「何か」が足りない

ASCII.jp / 2024年10月4日 18時0分

筆者撮影

 中国のスマホメーカーであるXiaomiは2024年9月26日(現地時間)、ドイツ・ベルリンで新製品となる折りたたみスマートフォン「Xiaomi MIX Flip」を発表した。

 価格は1299ユーロ(12GB+512GB)となる。

 Xiaomiは現在、サムスン電子、アップルに次ぐ、世界で第3位を誇るスマートフォンメーカーだ。ただ、販売台数の多くを稼ぎ出しているのはサブブランドなる「Redmi」が中心だ。

 Xiaomiではドイツの老舗カメラメーカーである「ライカ」と技術協力をすることで、スマートフォンのカメラ性能を向上。ハイエンドフラグシップモデル「Xiaomi 14 Ulrta」を投入しつつ、今回のXiaomi MIX Flipでもライカブランドを冠したカメラとなっている。

サムスンに対する優位性をアピールしたシャオミ

 Xiaomiが折りたたみスマートフォンを発表したことは、ネットでも事前に噂が出ていただけに、とくに驚きはない。

 ただ、世界第2位のスマートフォンメーカーもようやく本腰になったということで、いよいよ折りたたみスマートフォンが一気に開花し、普及するのではないかという気がしている。

 折りたたみスマートフォン、特に縦に折るフリップタイプに関しては、これまでサムスン電子が「Galaxy Z Flipシリーズ」、さらにモトローラが「razrシリーズ」として頑張ってきた。

 ハードウェア的には、ヒンジ部分が小さく薄くなったり、画面の折りたたみ部分の折り目が目立たなくなるなどの進化が見られている。

 後発となるXiaomi MIX Flipでは、先行するGalaxy Z Flip 6を相当意識しているようで、具体的な名前こそは出さないが、それとなくGalaxy Z Flip 6だとわかるスペック比較のプレゼン資料を投影。画面の大きさ、冷却システムの違い、バッテリー容量の大きさ、ライカブランドがあるかないかの比較をして、優位性をアピールしていた。

 ただ、折りたたみスマートフォンを出すメーカーは、スペック競争もやるべきではあるが、もうちょっと「新しい使い方提案」を競ってほしいものだ。

既視感しかない「ハンディカム持ち」

 やはり、単なる画面サイズやバッテリー容量でスマートフォンの価値を競っていたら、折りたたみよりも従来のスマートフォンのほうが分が良いに決まっている。

 そんななか、折りたたみスマートフォンは「こんな機能が使いたいから、ぜひ既存のスマートフォンから折りたたみに乗り換えたい」という強い欲求までは生み出せていない気もしている。

 確かに、折りたたみスマートフォンは、閉じればシャツの胸ポケットにも入るほどコンパクトになり、携帯性に優れている。一方で、開けば大画面となり、YouTubeなどの動画も見やすい。

 ノートパソコンのように置いておけるという構造の特徴を生かし、Galaxy Z Flip 6では自撮りする際に目の前に置いて撮影できる、というスタイルを訴求している。

 Xiaomi MIX FlipではVlog需要として、まるでハンディカムのように動画を撮影できるスタイルをアピールしていたが、同様の持ち方、撮影方法は他社もとっくの昔に提案しており、既視感しかなかった。

「自慢デバイス」ではなくなった折りたたみスマホ

 サムスン電子が初代Galaxy Z Flipを出してから5年以上が経過し、もはや折りたたみスマートフォンは誰もがビックリするような珍しいデバイスではなくなってしまった。

 「人に見せて自慢できる」ようなデバイスではなく、存在が当たり前になりつつあるなかで、メーカーとしても「大画面化」「小型軽量化」「バッテリー寿命改善」といった従来の競争軸での戦いに落ち着きつつあるのだ。

 しかし、それでは既存のスマートフォンから折りたたみに乗り換えようという強い需要には結びつかない。

 もはや、どんなメーカーでも折りたたみスマートフォンが作れるようになりつつあり、参入障壁もかなり低くなっている。

 値段においても、ZTEがソフトバンクとタッグを組むことで、数万円で手に入る販売施策もするなど、「高いから買わない」という心理的ハードルも解消されているはずだ。

新しい体験価値を提供できたメーカーが勝者に

 実際、ソフトバンクが示したデータでは、海外では折りたたみスマートフォンはそれなりに売れているにも関わらず、日本では未だに低調である一方、市場のこれからの伸びしろはかなり期待できるとしている。

 日本でなかなか折りたたみスマートフォンがブレイクしないのは、ユーザーが欲しいと思える「なにか」が足りないような気がしている。 

 この「なにか」がわかればいいのだが、いまのところ、メーカーやキャリアには答えが出ていないように思える。

 この「折りたたみを欲しいと思える何か」を見つけ出し、ユーザーに新しい体験価値を提供できたメーカーが、折りたたみスマートフォンで勝者になれるようなが気がしている。

 

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。

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