Windows 11 Ver.24H2が登場 Copilot+ PCとそうでないPCで実質Windowsが2つに分かれる
ASCII.jp / 2024年10月6日 10時0分
10月1日にWindows 11 Ver.24H2の配布が開始 Copilot+ PCに本格的に対応したバージョン
Windows 11 Ver.24H2が完成し、一般向け配布が開始された。「Windows 11のリリース情報」(https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/release-health/windows11-release-information)によれば、完成版は10月1日付けのOSビルド 26100.1742だが、すでにWindows Insider PreviewのRelease Previewチャンネルで9月23日にOSビルド 26100.1876と進んだバージョンが配布されている。
これは、Copilot+ PC用に限定したビルドがプレインストール版として出荷され、その後にRelease Previewチャンネルでアップデートがプレビューされているためだ。
よく知られているとおりに、Windows 11 Ver.24H2は高性能なNPUを搭載するプロセッサを活用する「Copilot+ PC」に本格的に対応した。この24H2以後の新機能には、「Copilot+ PC」対応マシンでのみ利用できる機能と、非対応PCでも利用できる機能の2つに分かれる。同じWindows 11ではあるが、ハードウェアによって、見える“景色”が異なるようになるわけだ。
これまでの経緯から、現行Windowsにおいては、CPUの世代でPCを大きく3つに分類できる。
Windows 11 Ver.24H2は、Copilot+ PC対応の高性能NPUの有無で仕様が異なる。Windows 11という名称とバージョンは変わらないが、実質、2つの異なるバージョンのWindowsがあるのと同じだ。Copilot+ PCで動いているWindows 11は、「隠れWindows 12」と言ってもいいほど、非Copilot+ PCのWindows 11とは違っている。
NPUでのローカル推論を活用した機能が加わる いずれは自然言語でユーザーの望む操作ができるように!?
Copilot+ PCは、今年始まったばかりで、シェアの拡大もこれからである。このため、しばらくはCopilot+ PCであるかどうかがユーザーの使い勝手に大きな違いを生み出すことはないと思われる。しかし、今後アプリケーションのローカル推論対応が進めば、同じWindows 11なのに、その差は大きくなっていくことが予想される。
1度、高性能NPUが導入されれば、たとえこの先、Copilot+ PCの機能を誰も使わなくなったとしても、互換性のため、当面はCPUに内蔵されたままになる。また、NPUでローカル推論を想定しているAI処理は、その負荷の高さなどからクラウド側に戻ることもないだろう。となると、今後もWindowsのバージョンは同じでも、できることが異なる状態は当面続くと考えられる。
現在では、WindowsのGUIで操作可能なことは、ほとんど「Power Automate Desktop」(https://www.microsoft.com/ja-jp/biz/smb/column-power-automate-desktop)で実行できる。
すでに米国では、CopilotでPower Automate Desktopのフローを生成する機能がプレビューされている(https://learn.microsoft.com/ja-jp/power-automate/desktop-flows/copilot-in-power-automate-for-desktop)。デスクトップフローの開発に関しての質問に答えることができ、ユーザーが入力したプロンプト(質問文)に対応したデスクトップフローの作成が可能だという。こうしたものがローカル推論に対応するのは時間の問題だろう。
こうしたローカル推論の応用が可能になると、たとえば、自然言語でリアルタイムにコンピュータを操作することも可能だろう。
従来のPCの音声操作は、あらかじめ決められたフレーズとコマンドを対応させているだけの「音声コマンド」でしかない。しかし、ローカル推論を使うことで、リアルタイムに自然言語を解釈してユーザーの望む動作をすることは難しくない。そうなると、Windowsの使い方自体が大きく変わる可能性がある。
ウワサの「リコール」のほか、Windows検索も強化
Windows 11 Ver.24H2に搭載されるCopilot+ PC用の機能としては、数え方にもよるが、
・リコール ・クリックして実行 ・Windows検索の強化 ・Windowsスタジオ効果 ・超解像処理、画像生成とリスタイル(フォトアプリ) ・生成塗りつぶしと消去(ペイントアプリ) ・ライブキャプションと自動翻訳
の7つがある。このうち「リコール」と「クリックして実行」はプレビュー、「ライブキャプションと自動翻訳」は44言語から英語への翻訳のみになる。
「リコール」は、デスクトップのスクリーンキャプチャから、対象や作業内容を判断し、ユーザーがデスクトップ上で見たものを、検索可能にするもの。
「Windows検索」も、「BBQパーティ」のようなテキストから画像検索を可能にする。AIで画像の「要約」や「説明」を付けるわけだ。ローカル推論であるため、画像ファイルをクラウドに送信することなく、短時間で多数の処理が可能になる。
「クリックして実行」は、AIを使ってデスクトップ上で実行されているアプリケーションを認識、適切な作業(クイックアクション)を右クリックメニューから提案するもの。いまのところイメージやテキストに関するクイックアクションしか想定していないようだが、従来とはまったく異なるWindowsの操作方法である。
非Copilot+ PCにおいても、システムトレイの改良や sudoの搭載などいろいろな機能が際割っている
さて、Windows 11 Ver.24H2には、NPUを必要としない新機能もある。主なものとしては、
・システムトレイ&タスクバーの改良 ・エクスプローラーの改良 ・スマート電源管理 ・Wi-Fi関連の強化(QRコード共有など) ・音声Clarity対応 ・Sudo ・その他の変更と機能強化(設定ページなど)
などだ。
Windows 11のアップデートに連動して、Microsoftストア経由で配布されている標準アプリケーション(Windowsターミナル、フォトアプリなど)やコンポーネント(WSLやWindowsサンドボックスなど)もアップデートされる。
これらの変更点を含めると、新機能・改良点は少ないというわけではない。ただし、Windows 11では、定期的に新機能が導入・改良されていくことを考えると、機能によっては実用的と感じるまでに時間がかかるものもあるかもしれない。
ローカル推論に対応しないプロセッサで動作しているWindows 11は、マウスとキーボードで操作する現在の延長線上の機能しか利用できない。ただ、PCを「道具」として考えた場合、必ずしも「自動化された」AIによる機能だけが有効というわけでもない。
従来型のPCはそのままで使い続けることが可能であり、ユーザーが必要とする作業が変わるわけでもない。しかし、ローカル推論は、いずれコンピュータの使い方そのもの、そしてアプリケーションの在り方を変えることになるだろう。
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