Arrow Lakeこと「Core Ultra 200S」予約開始!半分の消費電力で第14世代と同等の性能?
ASCII.jp / 2024年10月11日 0時0分
「Core Ultra 200Sシリーズ」発表&予約販売開始! 最上位のCore Ultra 9は激レア?
2024年10月11日0時(日本時間)、インテルは開発コード“Arrow Lake”として知られてきた新世代のデスクトップPC向けCPUを「Core Ultra 200Sシリーズ」として正式発表した。2009年、インテルが初めて「Core i」の名を冠した製品を投入して以来、最新のCoreプロセッサーまで14もの世代を重ねてきたシリーズはひとまず終了。今後はモバイル向けCPUと同様に“i”のない「Core Ultra 9」や「Core Ultra 7」「Core Ultra 5」というブランドになる。
本稿はインテルが開催したメディア向けブリーフィングの内容・資料の中から、Core Ultra 200Sシリーズの価格/プラットフォーム/パフォーマンスの3つにフォーカスしてまとめたものだ。Core Ultra 200Sシリーズに採用されたアーキテクチャーに関しては別稿で改めて解説する。
グローバルでは10月24日から販売解禁 価格は前世代とほぼ同じ?
Core Ultra 200Sシリーズの第一弾は内蔵GPUを搭載した「Core Ultra 9 285K」「Core Ultra 7 265K」「Core Ultra 5 245K」の3モデル、さらに内蔵GPUを持たない「Core Ultra 7 265KF」「Core Ultra 5 245KF」の2モデル、合計で5モデルが出荷される。
国内税込予想価格は以下の通りで、本稿が公開されると同時に予約販売も開始される(実際の開始タイミングはショップの公式情報を参照してほしい)。グローバルローンチは10月24日とされているため、国内での予約商品の引き渡しおよび販売開始は10月25日からになるだろう。
これらの情報をもとに単純にドル円レートを計算すると、K付きモデルは197〜208円換算なのに対し、KF付きモデルは183円ないし192円換算という違いがある。K付きモデルが割高なのは売れ線だから価格を高めにしたというよりも、直近の入荷量が非常に少ないからではないかと筆者は予想している。1日も早く確実に手に入れたいなら予約は必須だろう。
また、全体にドル円レートが高めなのは直近の為替相場が円安に大きく振れた影響が強いのだが、それでもCore Ultra 7および5に関しては、前世代の同格モデル(Core i7-14700K/KFおよびCore i5-14600K/KF)の初値とほぼ同価格(KFのみ1000円高い)にするなど、なるべく割高感を出さないように調整がされているようだ。
ただし、最上位のCore Ultra 285Kに関してはCore i9-14900Kよりも6000円も高く設定されている。Core Ultra 9 285Kの流通量は非常に少ないとみてよいだろう。ちなみに、本稿執筆時点におけるRyzen 9000シリーズの実売価格(大手ショップ限定)は以下の通りだ。
前述の予想価格と対比させると、Core Ultra 200Sシリーズの価格設定はなんとしてもRyzen 9000シリーズに対する価格的メリットを出そうという関係者の奮闘が読み取れる。Core Ultra 7およびUltra 5をRyzenのどのセグメントと対決させるかにもよるが、論理コア数基準ならCore Ultra 200Sシリーズのほうが割安、ブランディング基準(Ultra 7に対するRyzen 7など)ならRyzen 9000シリーズのほうが割安だ。まあこの辺りは追って検証することになるだろうが、上手く調整したなという感が強い。
プラットフォームとしての特徴
プロセスやアーキテクチャーといった技術的側面はさておき、まずはCore Ultra 200Sシリーズの概要をざっくりとまとめると、以下の通りとなる。
①ソケットはLGA1851へ変更 Core Ultra 200Sシリーズではソケット形状がLGA1700からLGA1851へ変更となるため、第12〜第14世代用のマザーボードとは互換性が消失する。Core Ultra 200Sシリーズを導入するなら新たなマザーボードの導入は不可欠だ。ちなみにCPU基板部分のフットプリントはLGA1700とまったく同じで、裏面ランドの密度が大幅に増している。だが切り欠きの位置がLGA1700と異なるので物理的にLGA1700のソケットに装着することは不可能だ。
②チップセットはIntel 800シリーズを採用 ソケット変更に伴い、チップセットも新たに「Intel 800シリーズ」が導入される。K付きモデルの倍率アンロックに対応するなら、「Z890」チップセット搭載マザーボードを使用することになるだろう。
Core Ultra 200SシリーズではCPU側にPCI Express Gen 5が20レーン(GPU用に16レーン、M.2用に4レーン)、さらにThunderbolt 4がビルトインされているが、Intel 800シリーズチップセットはこれに追加する形でPCI Express Gen 4が24レーン追加される。
USBに関しては下図では10ポート分のUSB 10Gbps(USB 3.2 Gen2)があり、さらに設計次第でUSB 20Gbps(所謂Gen2x2)等が実装できる。ただUSBの数に関しては別の資料だとUSB 3.2が最大32となっている資料もあるので、どちらが正しいかは不明である。
また、CPU側には2ポート分のThunderbolt 4がビルトインされているが、外部のチップを経由することで最大4ポート分のThunderbolt 5にも対応する。
③メモリーはDDR5-6400が定格最大に。CUDIMMもサポート DDR5メモリーは第12世代(Alder Lake-S)より導入されたが、Core Ultra 200SシリーズではDDR5をより高クロック動作で運用することが可能になった。サポートされる定格メモリークロックはDDR5-6400まで引き上げられる。ただインテルによれば、DDR5-8000がスイートスポット(Gear 2動作)だという。
また、従来のDIMMモジュールに加え、CUDIMM(Clocked Unbuffered DIMM)も利用可能だ。従来のDIMMにクロックドライバー(CKD)を追加することで、より高い信号品質で運用できるというもので、JEDECはDDR5-6400以上のモジュールに関してはCKD追加を提言している。
CUDIMMは普通のDIMMと同じメモリースロットが使えるため、「CAMM2」メモリーのように専用のマザーボード設計を必要としない(参考記事:https://ascii.jp/elem/000/004/202/4202135/)。CUDIMMでない従来方式のDDR5-8000でも、メモリーやマザーボードの設計品質が十分高ければ運用できるので、CUDIMM対応にそれほど神経を尖らせる必要はないだろう。
④CPUクーラーはLGA1700と共通 Core Ultra 200Sシリーズではソケット形状はLGA1851へ変更されたが、ソケットのフットプリント自体は変更されていない。変わったのはCPU裏面に配置されたランドの数と配置であり、CPUソケット周囲の設計はLGA1700と同一なのだ。
よってCPUクーラーは従来のLGA1700対応のものがそのまま利用できる。筆者もCPUクーラー(主にAIO水冷)を取り扱っている代理店等に尋ねてみたが、現時点ではLGA1700のクーラーをLGA1851へ適用するにあたってのネガティブな情報は出ていない。
とはいえ、実際に対応しているかどうかはCPUクーラーメーカーの情報をしっかり確認するようにしよう。Core Ultra 200Sシリーズの情報解禁に伴い、CPUクーラーのメーカーも対応情報を解禁すると思われる。
⑤アーキテクチャーはLunar Lakeに近いが、Lunar Lakeと同一ではない Core Ultra 200Sシリーズは過去の反省から、前世代よりも電力を食わず、さらに発熱量も抑えつつ同等性能を確保することが設計上のテーマになっている。
設計のベースになっているのはモバイル用のCore Ultraプロセッサー(シリーズ2)、所謂“Lunar Lake”だが、Lunar Lakeには存在しないPCI Express Gen 5やGPU用のx16レーンといったデスクトップPC、特にエンスージアスト向けの機能追加が施されている。Lunar Lakeで話題になったSMT(Hyper-Threading)の廃止はCore Ultra 200Sシリーズにも継承されており、Core Ultra 200Sシリーズのコア数は物理コア数=論理コア数という非常に分かりやすい構造となっている。
冒頭でも述べたが、Core Ultra 200Sシリーズのアーキテクチャーに関しては別記事を参照いただきたい。
パワー半分でも第14世代と同等性能?
残念ながらまだ我々メディアがCore Ultra 200Sシリーズの性能を評価する段階ではないので、インテルの資料からパフォーマンスを読み解くことにしよう。
Core Ultra 200Sシリーズは前世代よりも低消費電力・低発熱を達成しつつもパフォーマンスも確保するという非常に難しいテーマのもと設計されている。低消費電力・低発熱は言うまでもなく第13・第14世代の失敗を踏まえての新方針ではあるが、今回のCore Ultra 200SシリーズはSMTを採用していない。これまで以上に設計ハードルの高いCPUであるが、そこで出てきたキャッチコピーが「低発熱でより高効率なゲーミングCPU」というものである。
下図はそのことを表現した資料なのだが、そこに「Raptor Lake-R(Refresh)と同じ性能を半分の電力で」という記述がある。つまり純粋なベンチマークのスコアではなく、ワットパフォーマンスに大きく舵を切った(切らざるを得ない)ということだ。
ちなみに、今回のインテル発表資料の隠れた見どころはCore Ultra 9 285Kにのみフォーカスし、比較対照はCore i9-14900KとRyzen 9 9950Xや7950X3Dに限定しているという点だ。AMDはRyzen 9000シリーズ発表時の資料にセグメントごとにライバルとの対決を細かくいれてきたが、インテルは頂上対決のみに絞られている。敵軍の将を討ち取れれば十分、というわけだろうか?
気になるゲーミング性能だが、ここでも消費電力を絡めて検証している。検証に使用したゲームは全部で14タイトルだが、うち6タイトルはCore i9-14900Kと同等(この資料では差が3%以内を表現している)、4タイトルはCore i9-14900Kのほうが性能が高く、4タイトルはCore Ultra 9 285Kのほうが高い。
劇的な性能向上を夢見ていた人にはショッキングな結果だ。ただ、ゲームによっては150W以上も消費電力が低くなったものもある、というのが救いだろう。ちなみに次の図はCore Ultra 9 285KはPL1=PL2=250W設定、Core i9-14900KはPL1=PL2=253W設定(恐らくPerformance Power Delivery Profile)なので割と現実的な設定でのテストになっている。
ライバルに“どうにか”食らいついている
続いてはCore Ultra 9 285KとRyzen 9 9950Xの対決だが、ゲーム15タイトル中3%以上差をつけることができたのは4タイトル、±3%以内は6タイトル、Ryzen 9 9950Xのほうがフレームレートを出せたのは5タイトルとなった。ただ、こちらの比較では消費電力に対しまったく触れていないあたり、性能で勝ててもワットパフォーマンスでは劣勢である可能性がある。
また、インテルはCore Ultra 9 285KとRyzen 9 7950X3Dとの比較データも出しているが、ゲームで勝てるというよりも、ゲーム性能とクリエイティブ系アプリ(ただしCGレンダリング比較が多め)での性能のバランスが良い、というやや苦しい展開になっている。
インテルの発表資料をベースにしたパフォーマンス検証結果は以上となる。TDP設定や検証するベンチマークの内容に偏りがあるにしても、なんとか前世代に近い性能に仕上げることはできたし、ライバルに振り切られてはいないのでは……? と想像させてくれるデータではあった。ただこれと同じ結果が後日公開されるであろうレビュー記事と同じになるとは限らない。このあたりは後日の記事を楽しみにしていただきたい。
次回は今回意図的に避けたCore Ultra 200Sシリーズのアーキテクチャー解説を試みる。
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