白内障で片眼の手術後、高度近視の筆者が自動焦点アイウェアの「ViXion01」を衝動買い(続き)
ASCII.jp / 2024年10月12日 12時0分
自動焦点アイウェアの「ViXion01」を装着しつつ ポメラやモバイルPCで原稿書きをやってみた
2週間の間隔をあけた白内障の左右の眼の手術の合間に「ViXion01」を衝動買いした筆者。前回は前編としてViXion01の機能概要とファーストインプレッションをご紹介した。
その後、白内障も落ち着いたので,モバイル環境での原稿書きデバイスである「ポメラ DM250」とViXion01を持って近所のガストでほんの少しだが原稿書きをやってみた。
ポメラ DM250はご存じの方も多いだろうが、7インチの液晶を搭載したモノクロ表示の文章書きデバイスだ。7インチだと昨今の大型のスマホと比較しても、使用画面が縦か横かという違いはあってもそれほど大きなサイズ差はない。ともに目の前の30~40cmの距離で使うデバイスだ。13.3~14インチクラスのモバイルPCもそれ自体はよく似ている。
一方で昨今、デジタル系デバイスと切っても切れない関係にあるのが、従来のメガネとは別世界のスマート系のメガネだ。新ジャンルとは言え従来のメガネを無視できない背景もある。日本人のメガネ装着率は調査機関(株式会社プラネット・2021年度の日本人4000人調査)の結果では、コンタクトレンズを含む「常に」+「必要時」を合計した「メガネ使用派」は、なんと57.5%で過半数を超えている。
昔ながらのメガネは眼球を動かせる範囲は視界と視力が保証される
高校生の頃から常時メガネ派の筆者の感覚では、アナログテクノロジーのメガネとデジタルテクノロジーメガネのひとつであるViXion01との最大の違いは、その視界の差を大きく感じることだ。ViXion01はメガネでは無いが形状の類似性からどうしてもメガネと比較されるのは避けては通れないところだろう。
一般的にメガネはレンズサイズが大きく、矯正調整されたメガネなら眼球を動かせる範囲はピントが合って、快適な視界と視力が保証される。ViXion01はレンズ径が極めて小さいがゆえに、その視界がかなり限定かつ制約される。一方、ViXion01は正しくキャリブレーションされていれば、近くや遠くを見るときに自動で焦点を合わせてくれる便利なデバイスでもある。
ViXion01が自動で焦点を合わせてくれる範囲は5cm~無限だ。なので遠くの景色を眺めてから、手元の本を読んだり、スマホを操作するときは自動で焦点を合わせてくれる。今回はViXion01単体でキャリブレーションしたViXion01を、スマホのViXion01アプリとBluetooth接続して、実際に目的の箇所を見たときのステータスデータをスクショしてみた。
遠くを見ているときのスクショには、現在の気温や明るさバッテリー残量の下側に現在ViXion01を装着している人が見ている対象までの距離がリアルタイムに表示される。この例では2m~無限大を指している。表示される数値は、ViXion01の正面中央にある距離センサーの値であって、装着者が現在見ている場所や部分と完全に一致しているとは限らない。
本を読むときや手元でスマホを操作する際、前述のポメラやモバイルPCのような小型のデバイスなどを実際に使ってみたときのViXion01と誌面/画面までの距離は約35~40cmだ。アプリの画面を見て遠くを見たときのスクショと手元のスマホを見ているときのスクショを比べると左右のレンズの度数が異なっている。
距離を問わずに焦点を合わせてくれる点はメリット大だが 視野の広さという点では人間にマッチし切れてない部分もある
このことからもわかるように、ViXion01はメガネのように目の前に装着する自動焦点の拡大率ゼロのズームレンズのようなデバイスだ。白内障手術前の筆者のような高度近視だと、目の前2~3cmでも見えるが一般的に老眼と言われる人は目の前30cm以内だと見えずらいことが多い。ViXion01は前述したように自動焦点の可能な距離は人の目に近い5cm~無限だ。しかし視界の広さは今のところ人には追いついていない。
健常者の視野は左右の目を合わせると前方を中心に180度以上あり片眼の視野は鼻側に約60度、耳側に約100度、上方向に約60度、下方向に約70度とかなり広いという。一方で、ViXion01は視野に関する情報が公開されていない。しかし小さなレンズをメガネのように目の前にある程度の距離をおいて装着するので、人の裸眼やメガネ装着時の視野とはかなりの差がありそうだ。
実際に今、裸眼視力が左右0.4程度の筆者がViXion01を装着して、いろいろと場所を変えて7インチのポメラDM 250やThinkPad X1 nanoで文章を入力。その内容をスマホなどで検証している。
スマホもポメラもThinkPadも画面サイズは6.73~13.3インチと2倍以上の開きがあるが、いずれも30~40cmの距離で使うことが普通なので不自然さや使い辛さはあまり感じない。視野的にも十分にViXion01の守備範囲だ。
次に同じ原稿を普段原稿書きに使っているEIZOのFlexScan37.5インチ曲面モニターで画面まで30~40cmの距離で続きを書いてみた。中央に位置するテキストエディター画面はViXion01の正面に位置するので問題ない。
ところが左右に配置したChrome(左側)とPaintShop(右側)を見る場合は、いつものメガネをかけているときの習慣が出てしまう。実際にはほとんど頭を動かさずに、普段のくせで視線だけを目的のアプリに向けてしまう。その結果、ViXion01のレンズから視線が外れてしまい、ViXion01による視力矯正が働かず左右に開いたアプリの細かな文字が見え辛い。
視野の左右を見る場合は常に首を振って頭全体を動かせばいいが どうにも人の行動としては不自然さを感じる
もちろん解決方法がまったく無いわけではない。左右のアプリを見る場合は、目線の移動だけでは無く左右に25度ずつ首を振って頭全体を動かして見ることで問題なく読めるのだが、どうもこれは人のモノを見るという標準的な行動としては不自然な気がしてしまう。まったく首を動かさずに見ることは少ないとは思うが、少し首を左右に振るのと視線の移動の組み合わせが現実的だろう。
これはViXion01を装着して大型テレビを画面からどの程度の距離で見るかというケースでも同様だ。筆者宅では60インチのTVを使っているが、3m離れれば問題なくViXion01を装着していても見ることができるが、リビングの床に寝ころんで1.5mあたりの距離だと全画面を見るのに首の運動が必要だ。
今までViXion01を装着して遠方(2m以遠)や最も使用頻度の高そうな近接距離(30~40cm)、テレビなどを観る中距離(1.5~3m)でのViXion01の操作性を見てきた。続いて筆者もよくやる作業なのだが近接距離よりもっと近い目の前、5~10cmの距離での見る作業が必要な腕時計のバッテリー交換をやってみた。
マニュアルモードや設定の切り替えでより便利に使える
ViXion01のキャリブレーションは前の2例とは異なりオートフォーカスモード(自動焦点)ではなく、マニュアルモードを使ってみた。ViXion01を装着して対象物である分解済みの腕時計のバッテリー周辺を見たり、裏ぶたの小さな文字がハッキリ見える程度に左右のレンズのキャリブレーションをする。ViXion01本体かアプリで「マニュアルモード」を選択する。これで腕時計の分解修理に特化した作業環境が実現する。腕時計に限らず細かな作業をする必要のある人にとって最高に便利だ。
今まで試した遠距離、中間距離、近接距離、超近接距離などはその設定を最大3つをスマホ上のアプリに登録保存出来る。また必要なときに必要な設定を、リアルタイムでスマホからViXion01にダウンロード可能だ。基本的にどの距離で設定してもオートフォーカスなので問題ないはずだが、微調整の必要を感じる時もあるのでセーブ&ロード機能はなかなか便利だ。
30~40cmの近距離でモバイルPCなどの入力デバイスを使うことが最も多い筆者のようなユーザーは、ViXion01を装着して連続して作業すると、俯角45度近辺で姿勢が固まってしまうことが多い。首の健康管理のためにも、モバイルPCスタンドで画面の高さをできる限り視線と水平の位置辺りまで持ち上げた方がいいだろう。
ネット会議以外では「モバイルPCスタンド不要論者」の筆者だがViXion01は例外だ。その考え方を延長すれば筆者の普段使いの曲面37.5インチワイドディスプレイでも左右のアプリを見る時も視線だけでは無く首を大きく左右に振れば肩こりの軽減になるのかもしれない。いずれにせよViXion01は今後の展開が楽しみな期待したい筆頭デバイスだ。
今回の衝動買い
・アイテム:ViXion「ViXion01」 ・購入:ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba ・価格:7万9800円
T教授
日本IBMでThinkPadのブランド戦略や製品企画を担当。国立大芸術文化学部教授に転職するも1年で迷走。現在はパートタイマーで、熱中小学校 用務員。「他力創発」をエンジンとする「Thinking Power Project」の商品企画員であり、衝動買いの達人。
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