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スマホでおなじみのスナドラ搭載で、自動車の世界にもAIの潮流がやってくる

ASCII.jp / 2024年10月24日 10時0分

車内エンタメや運転支援のためのSnapdragonに新型登場

 クアルコムは、10月21~23日(現地時間)の3日間に渡り、米ハワイ州マウイ島で「Snapdragon Summit 2024」を開催した。「Snapdragon 8 Elite」を発表した21日から一転、会期2日目の22日は、Automotive(自動車)一色のイベントとなった。

 基調講演では、車載向けの「Snapdragon Cockpit Elite」および「Snapdragon Ride Elite」を発表している。

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Snapdragon Summit会期2日目の基調講演では、Snapdragon Cockpit/Ride Eliteが発表された。写真は、Snapdragon Cockpit Eliteを掲げるクアルコムのAutomotive, Indastrial and Cloud担当のグループGM、ナクール・ドゥガール氏

 前者のSnapdragon Cockpit Eliteは、カーエンターテイメントやダッシュボードへの情報表示などを行なうスマートコックピット向けのプロセッサー。後者は、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転を処理するためのプロセッサーとなる。

 どちらも半導体としては同じものだが、自動車メーカーのニーズに合わせて用途別にプラットフォーム化している。また、クアルコムは1つでCockpitとRideの両方に対応するオプションも用意しているという。

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車載向けはスマートコックピットを実現するSnapdragon Cockpit Elite(左)とADASや自動運転などを制御するSnapdragon Drive Eliteの2つに分かれる

Oryon採用で前モデルから性能が3倍向上した

 新たにカスタムCPUのOryonを採用したSnapdragon 8 Eliteと同様、Snapdragon Cockpit EliteおよびSnapdragon Ride EliteにもOryonが採用されている。ただし、スマホ用のSnapdragon 8 Eliteとは異なり、PrimeコアとPerformanceコアのbig.LITTLE構成にはなっていないようだ。

 Oryonを採用したことで、クアルコムは処理能力が前世代との比較で3倍に向上したとアピールする。

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チップセットの構成。CPUにはPC用、スマホ用と同じアーキテクチャーのOryonを初めて採用した
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従来比で、処理能力は3倍向上しているという。毎年徐々にアップデートを重ねているスマホ向けのプロセッサーより進化の幅が大きい

 クアルコムによると、車載用のOryonはより堅牢性を重視して開発されており、PCやスマホ用のプロセッサーと比較した際にも、より多彩な処理を同時にこなせるよう安定性を高めているという。

 スマートコックピットに採用した場合でも、運転手だけでなく、助手席や後部座席に異なる情報、映像を表示することがあるうえに、Snapdragon Ride EliteでADASや自動運転などの処理は安全性にも直結するため、ユースケースに合わせて最適化をしている。

AIの処理性能は12倍に! 車内でできることが大きく増える

 より大きく性能が向上しているのが、AIの処理を担うHexagon NUPで、こちらは前世代との比較で性能が12倍も向上している。AIや生成AIをスマートコックピットに取り込むためだ。基調講演では、応用例の1つとして、車内で子供の数学のテストのための問題を生成AIで作成し、音声で読み上げるというユースケースが紹介された。

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NPUは、前世代と比べて12倍もの性能向上を果たした
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翌日の数学のテストに備え、生成AIに問題を作らせているユースケース

 また、AIを安全性能を上げるための歩行者認識に活用しつつ、位置情報で近くに駐車場がないことを知らせたり、目の前にある歴史博物館の情報を表示するといった事例も紹介された。AIの処理能力が高まることで、できることの広がりを示していたのだ。

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近隣の駐車場の情報や博物館の情報だけでなく、歩行者の検知もしている

 Snapdragon Cockpit EliteにはAI Audioチップも搭載されており、これによってシートごとに異なる音楽や音声を流す「zonal audio」にも対応できる。後部座席に乗っている人には音楽やモニターに表示している映画の音声を流しつつ、運転手にはナビゲーションの声が聞こえるようにするといったことが可能になる。スマホで培ったアドバンテージを活かし、車載用のプロセッサーも進化させた。

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シートごとに異なる音を流すzonal audioには、AI Audioを活用
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計16の4Kディスプレイへの出力にも対応する

グーグルとの提携で車載用Google Cloudを採用することに

 Snapdragon Summitの基調講演では、グーグルとの戦略的提携も発表され、ゲストとして同社のグローバル・オートモティーブ・パートナーシップ担当のディレクター、グレチェン・エフゲン氏が登壇。車載用のSnapdragon Digital Chassisで利用するための生成AI対応デジタルコックピットの開発フレームワークや、車載用のクラウドGoogle Cloudを提供していく方針が語られた。

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基調講演には、グーグルもゲストとして登壇。両社の緊密な協力関係をアピールした

 Snapdragon Cockpit Eliteと同Drive Eliteは、2025年にサンプル出荷が開始される。搭載した自動車が登場するのは、2026年ごろになる見込みだ。

 スマホのように、即製品発表とはいかず、サンプル出荷から製品投入までにタイムラグがあるが、各種開発キットを活用することで従来よりも期間は短縮できているという。

 サンプル出荷前のため、Snapdragon Summitの会場では、第4世代となる既存のSnapdragon Cockpitを使ったスマートコックピットのデモが行なわれていた。

 まず紹介するのが、パーソナルアシスタント。声で語りかけるだけでその車のマニュアルを表示できたり、目的地のランドマークやそこへの行き方が表示されたりといったユースケースを紹介していた。

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音声アシスタントに頼んでマニュアルを表示してもらったり、自然な会話でランドマークをピックアップしてもらったりといったことができた
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 1つのチップセットでコックピットの機能と安全走行のための機能を両立させる「Snapdragon Ride Flex」の展示では、モニターを2つに区切り、ADASとナビゲーションが同時に動作している様子を確認できた。クアルコムによると、1チップで両方の処理をまかなえることから、よりコストを抑えた大衆車向けのソリューションになるという。

 デモは現行のチップが使われていたが、同様に1チップでSnadpragon CockpitとSnapdragon Rideを兼ねる仕組みはSnapdragon Cockpit/Ride Eliteでも用意される。

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ADASなどの走行に関わる機能と、インフォマティクスの機能を1チップで動作させるSnapdragon Ride Flex
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デモでは、ADAS(左)とナビゲーション(右)を同時に表示させていた

 PCではAI、生成AIへの対応はスマホやPCの潮流になっているが、Snapdragon Cockpit/Ride Eliteの登場で、その流れは自動車にも波及することになりそうだ。

 Snpadragon Summitで示されたユースケースは、まだ必要性や実用性に疑問符がつくようなものもあったが、これらのプラットフォームを活かしたメーカーごとの工夫にも期待したい。

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