本国ではスマホが復調&EV事業を本格化 中国での“ファーウェイの現在”を見てきた
ASCII.jp / 2024年10月26日 12時0分
8月下旬、中国・東莞市でファーウェイの研究開発施設などを見学する機会を得た。
取材の主目的は、ウェアラブルデバイスに搭載される「TruSense」という健康モニタリングシステムの発表会だったが、深圳市に足を延ばして、ファーウェイのフラッグシップストアやスマートホームのショールームを取材する機会もあった。
日本では、ここ数年スマートフォンを発売しておらず、製品ラインアップは縮小傾向にある同社だが、本拠地の中国では、スマホの売れ行きが復調し、スマートウォッチやスマート家電など、コンシューマー向けの製品も充実させているようだ。また、自動車メーカーと組んで、電気自動車の開発にも力を入れている。中国での“ファーウェイの現在”を見てきた。
ファーウェイの研究開発拠点は テーマパークのように欧州の街並みを再現
「HUAWEI TruSense」の発表会の翌日に取材陣が案内されたのは、東莞市の松山湖エリアにある広大なキャンバスだ。
ファーウェイは中国・深圳市に本社がある。深圳は多くのグローバル企業が本社を構え、「中国のシリコンバレー」とも呼ばれる街で、同市の郊外にも巨大な本社キャンパスがあるのだが、そこから2018年に研究開発部門を移転させたのが松山湖キャンパスだ。
松山湖キャンパスの広さは148万m2。東京ディスニーランドの約3倍に相当する。ちなみに、長崎のハウステンボスは152万m2だそうなので、ハウステンボスに行ったことがある人は、同じ程度の広さをイメージするとわかりやすいだろう。
キャンパスは12のエリアに分かれていて、オックスフォード(イギリス)、ブルゴーニュ(フランス)、ベローナ(イタリア)など、それぞれヨーロッパの街並みを模して設計されている。
お城のような建物があったり、クラシカルな大学や博物館のような建物があったり、さながらテーマパークのような趣きだ。敷地内には3路線の鉄路が敷かれ、従業員は電車で移動できる。なお、運転手付きのカートやレンタル自転車などもあった。
ここには約3万人が従事していて、近隣の住宅や、深圳市から通勤しているとのこと。深圳市からは車で約1時間ほどだが、毎日300便のシャトルバスが運行されているのでそれが利用できる。また、キャンパス内には、約1000台を収容する地下駐車場が12ヵ所あるという。
取材に訪れたのは平日の午前中。多くの人が勤務していたはずだが、建物間を移動する人は少なく、閑散とした雰囲気だった。電車に乗っている人は、ファーウェイの取引先と思しき人で、我々と同じようにガイドの案内を受けていた。社員向けの食堂とは別に、豪華なレストランもあり、来客をもてなす場にもなっているようだ。
今回の取材では、研究開発施設の内部を見ることはできなった。ガイドの説明によると、内部まで欧州風というわけではなく、一般的なオフィスや研究室だったりするらしい。
唯一、内部まで公開されたのが図書館だ。フランスの国立図書館を模してデザインされたそうで、天井が高く、細部に細かい細工が施されていて、クラシカルで豪華な雰囲気。世界から集めた約11万冊が所蔵されていて、日本の図書もたくさん見かけた。
一見、実用的な図書館ではなく、接客のための観光施設という印象を受けたが、社員は自由に利用して、本を借りたりもできるらしい。キャンパス内にはスポーツジムもあったので、仕事を終えてから利用する人が多いのかもしれない。
スマートホーム事業も積極的に展開
深圳市の中心からは少し離れた(されど、結構賑わっていた)場所にあるスマートホームのショールームにも案内された。ファーウェイだけではなく、広東省と深圳市の政府機関、ハウスメーカー、住宅設備機器メーカーなどが共同で出展している施設らしく、高層ビルの2フロアを使って展示されていた。
ファーウェイの共通プラットフォームではあるHarmonyOSをベースとするシステムについて紹介を受け、実際にスマート家電を設置したモデルルームを見学することができた。
スマート家電は多くのメーカーが手掛けているため、個々の製品や機能に驚くことはなかったが、ファーウェイは家中の電気製品をトータルでコントロールできるシステムを提供できるのが強み。中国ではマンションも内装されていない状態で販売されるのが主流なので、集合住宅でもスマートホームは導入しやすいようだ。
ファーウェイフラッグシップストアでの看板商品はEV
最後に取材に訪れたのはファーウェイのフラッグシップストア。深圳市内では最も広い店舗で、敷地は1万m2もあるという。その店頭に並んでいたのはスマホでもスマートウォッチでもなく自動車だった。
ファーウェイが近年、中国市場で最も力を入れているのが自動車事業だ。自社で自動車を開発・製造するのではなく、自動車メーカーと協業し、電気自動車のシステムや車載デバイスなどを提供するスタンスをとっている。ファーウェイが中心となってHIMA(Harmony Intelligent Mobility Alliance)という団体が設立され、中国の主要自動車メーカー4社が参加している。
展示されていた自動車はHIMAに参加するメーカーのもので、HarmonyOSによって制御される。安価なもので30万元(約600万円)、高いものは50〜60万元(約1000〜1200万円)もするそうだが、売れ行きは好調とのこと。実際、深圳市や東莞市では電気自動車を見かけることが多かった。
電気自動車(ハイブリッド車を含む)とガソリン車とではナンバープレートが異なり、電気自動車は政府からの助成もあり、安く購入できるそうだ。
この店では、予約すると自動車の試乗もできる。われわれ取材陣は運転はしなかったが、後部座席に乗車して、乗り心地を体験させてもらうことができた。
試乗させてもらったのは、AITO(問界)という新興メーカーの「M9」というモデル。HIMAの中では最新で最高グレードのハイブリット車だ。満充電からの航続距離は、バッテリーだけを使う場合は600kmで、ガソリンを使う場合は約1300kmとのこと。
中国では自動運転システムが急速に整備されており、すでに中国全土の95%の道路が自動運転に対応しているという。ただし、カーナビに対応する道路における普及率なので、郊外の狭い道などは含まれないようだ。
ナビ画面には走行中の車だけでなく、横断歩道を渡る人のイラストなども立体的に表示され、周囲の状況を視覚的に確認できる仕組み。
中国の道路には、それだけの数のカメラが設置されているということだろう。走行中は揺れが少なく静かで、運転手がハンドルを握らなくても、車線変更したり、赤信号で止まったりする。
中国にも、安全のために一定時間おきにハンドルに触れないといけないというルールがあるようだが、ほぼハンズフリーで目的地に向かえるそう。日本でも自動運転の研究開発が進んでいるが、それが一般的になるまでには、まだまだ長い年月がかかりそうだ。中国は一歩も二歩も先に進んでいる印象で、通信インフラを手掛けるファーウェイがその進歩に寄与する部分も少なくないようだ。
なお、HIMAの電気自動車は車内の快適性にも注力されている。乗車する際に足を載せるステップが出てきたり、座席にマッサージ機能が付いていたり、大きなスクリーンを出して、後部座席から映画などを楽しめたりといった機能が搭載されていた。
店内には、スマートフォンやウェアラブル製品、スマート家電などを展示・販売するコーナーもあり、レクチャー用のスペースもあった。
スマホは、日本でも人気だったHUAWEI Pシリーズの後継となる「HUAWEI Pura 70」シリーズや、折りたたみ式の「HUAWEI Mate X3」「HUAWEI Pocket 2」など展示され、注目を集めていた。なお、三つ折りの「HUAWEI Mate XT」は取材した時点では発表されておらず、見ることができなかった。
ちなみに、万象天地という繁華街にあるファーウェイの店にも行ったが、そこでも店頭に展示されていたのは自動車だった。日本ではファーウェイは、スマートウォッチのメーカーという印象が濃くなってきているが、中国では住宅機器から自動車までを取り扱う巨大メーカーとして成長を続けているようだ。
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