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着せ替えスマホ「CMF Phone 1」はカスタマイズが楽しいが実用面での弱点もあり

ASCII.jp / 2024年11月9日 13時0分

 デザインに注力したスマートフォンを提供している新興スマートフォンメーカー、Nothingのサブブランド「CMF」を冠して発売された「CMF Phone 1」は、背面パネルを交換できるなど、ボディーデザインのカスタマイズができる仕組みを備えているのが大きな特徴だ。

CMF PHONE
「CMF Phone 1」を手にしたところ。ディスプレーサイズが大きい分幅が広いのに加え、側面が角張っていることもあり片手で長時間持っていると疲れやすい

 一方で、価格は4万4800円と低価格モデルに分類されることから、機能・性能が抑えられているのに加え、ドコモとauのプラチナバンドである800MHz帯に対応していないという、日本で利用する上での大きな弱点も抱えている。日本で満足して利用できるのか? という点を中心に、実機からレビューしたい。

横幅の大きさとと角張ったデザインが影響し 片手持ちは少々疲れやすい

 まずは本体に関してだが、ディスプレーサイズは6.67型で、サイズは約77×164×8mm、重量は197gとなる。ただし、ブルーとオレンジの2色はカバーがヴィーガンレザー仕様となっており、こちらを選ぶと高さが9mm、重量が202gになる。

 スペック上のサイズ感は一般的なスマートフォンという印象なのだが、実際に手にすると、とりわけ片手で長く使っていると手が疲れてしまう感がある。そこには横幅がやや広めであることに加え、ボディーデザイン自体も大きく影響していると感じる。

CMF PHONE
背面から見たところ。カメラとネジが目立つ独自性のあるデザインで、写真のブラックはサラサラした質感だ

 実際CMF Phone 1のボディーは、四隅の角を除くと全体的に角ばっている。側面に丸みがないことから手のフィット感が弱く、それが片手で持っているときに思いのほか大きく感じ、疲れやすい要因になっている。

 こうしたデザインになっているのは、カバー交換ができるギミックを実現するためと考えられる。海外で販売することを考えると、ディスプレーを大きくするのは必要不可欠なのだろうが、日本のユーザーが利用するうえではもう少しディスプレーを小さくしてでも、片手で持ちやすいサイズ感にしてほしかったと感じてしまう。

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右側面には電源キーが用意されている
CMF PHONE
左側面には音量キーを用意。iPhoneに近い配置となっている

 一方で背面を確認すると、カメラに加えカバーを留めるネジが目立つデザインが特徴的で、カラーや質感は背面カバーを取り替えることで変えられる。先にも触れたように、ブルーとオレンジのカバーはヴィーガンレザー素材なのでややしっとりした触感だが、ブラックとライトグリーンのカバーはマットでサラサラした質感となっている。

 側面を確認すると、右側面には電源キー、左側面には音量キーと、Android端末としては珍しくiPhoneに近い配置となっている。また、底面にはUSB Type-C端子とSIMスロットが備わっており、それ以外のインターフェースは備わっていない。

CMF PHONE
底面にはSIMスロットとUSB Type-C端子が備わっている

背面カバーの着せ替えは 往年の携帯電話を思い起こさせる

 CMF Phone 1の最大の特徴は、やはり別売りのカバーを交換してデザインを変えられることだ。フィーチャーフォン時代にはカバーやパネルを交換して“着せ替え”ができる携帯電話が多く存在したが、スマートフォンになると姿を消してしまった。そうしたことからCMF Phone 1は、その着せ替えを現代によみがえらせたモデルともいえるだろう。

 CMF Phone 1のパネルはネジ留めされており、1つを除くと手で外すことはできないので、交換するにはドライバーが必要になる。ただ着せ替え用のカバーにはドライバーとネジ、そしてカラーに合わせたSIMスロットと、交換に必要なパーツがすべて付属するので安心だ。

 実際に交換する手順も簡単で、まずSIMトレイを外したあと、手で右下のネジを外し、ドライバーで残り4つのネジを外して装着しているカバーを外す。

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カバーを外すにはSIMトレイを外し、さらにネジをカバー付属のドライバーで外せばよい

 続いて新しいカバーを装着してネジを付け、SIMスロットを交換すればよい。ネジもカバーに合わせた色となっており、こうした点はNothingのこだわりが感じられる部分でもある。

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カバーを外したら新しいカバーを装着したらネジ止めし、再びネジ留めしていく
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カバー交換が完了したCMF Phone 1(右)。元のカバー(左)と比べると見た目が大きく変わっている

 またCMF Phone 1にはカバーだけでなく、ストラップやスタンド、カードホルダーといったオプションも用意されている。カードホルダーは右下のネジに加えネジ3箇所を外して交換する必要があるが、それ以外は右下の手で外せるネジを交換するだけでよい。

 ただいずれにしても、カスタマイズにはネジの付け外しが必要になる。その分しっかり装着できるのがメリットではあるのだが、頻繁にカスタマイズするとなるとやや手間に感じてしまう。

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オプションのカードホルダーを装着したところ。こちらは指で外せる右下のネジに加え、3つのネジを付け替える必要がある

ベースの性能は高くないが日常使いに不満はない

 続いて性能面を確認してみよう。チップセットはMediaTekのミドルクラス向けとなる「Dimensity 7300」で、メモリーは8GB、ストレージは256GB。SIMトレイにmicroSDのスロットがあるので、ストレージは2TBまで拡張することが可能だ。

 実際の性能はどうか。いくつかのベンチマークやゲームで確認してみたが、性能はミドルクラス相応といったところ。それゆえ操作性に不満を抱くことはなく、またディスプレーの解像度がFHD(1080×2400ドット)で、120Hzのリフレッシュレートに対応していることもあり、性能は低いながらも、ゲームは比較的快適に遊べた。

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「Geekbench 6」のCPUベンチマークの結果
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「3DMark」(Wild Life Extreme)のベンチマーク結果
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「PUBG MOBILE」のグラフィック設定はクオリティが「HDR」、フレーム設定が「ウルトラ」まで。最近のスマートフォンとしては低い設定にとどまっている
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「原神」のグラフィック設定はデフォルトで「最低」と、こちらも低い結果に。ただ画質やフレームレートを最高の状態にしてもプレイ時にフレーム落ちなどはあまり生じなかった

 スマートフォンでもう1つ、重要な要素となるカメラはどうか。CMF Phone 1のカメラは、背面のメインカメラがソニー製のイメージセンサーを搭載した5000万画素/F値1.8の1眼構成で、もう1つカメラを備えているがこちらはポートレート撮影用のセンサーとして活用がなされているようだ。

CMF PHONE
CMF Phone 1のメインカメラで撮影した写真

 望遠カメラだけでなく、超広角カメラも搭載していないため撮影シーンの幅は広くないが、5000万画素という画素数を生かしてデジタルズームで10倍までの撮影は可能。もちろんポートレート撮影やナイトモードなど、基本的な撮影機能は対応しているのでスナップショット用途であれば十分だろう。

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同じくCMF Phone 1のメインカメラで撮影した写真
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同じ場所から2倍ズームで撮影した写真。デジタルズームは最大10倍での撮影が可能だ
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センサーを搭載しているだけあってポートレート撮影にもしっかり対応している

 フロントカメラは1600万画素/F値2.0(EXIF値より)。こちらも機能・性能はベーシックなものだが、ポートレート撮影やビューティーモードなど基本的な機能は押さえている。

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フロントカメラで撮影した写真

 他の機能・性能を確認すると、バッテリーは5000mAhと大容量だが、急速充電は33Wまでの対応となり、ワイヤレス充電にも対応していない。また防水・防塵性能はIP52と生活防水レベルで、FeliCaはおろかNFCにも対応していないことから、スマートフォン決済はQRコード決済一択ということになる。

プラチナバンド非対応の影響をKDDI回線で試してみたが 案外にもつながらない場所はあまりなかった/h2>

 CMF Phone 1を日本で利用するうえで、非常に気になるのはモバイル通信である。CMF Phone 1は5Gに対応しており、物理SIM(nanoSIM×2)のデュアルSIMで、1つのSIMスロットはmicroSDとの排他使用という形が取られている。

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SIMスロットはnanoSIM×2で、うち1つはmicroSDとの排他利用となる。eSIMは非対応

 だが最大の問題点は対応する周波数帯(バンド)だ。ドコモが使用している5G向けの4.5GHz帯(n79)に対応していないだけでなく、4GでもドコモとKDDIのプラチナバンドである800MHz帯(バンド19、バンド18/26)にも対応していない。

 800MHz帯は、2社が全国を最も広くカバーするのに使用していることから、この周波数帯が使えないということは2社、それに加えてKDDIの800MHz帯をローミングで活用している楽天モバイル回線の利用に大きな制約が生じるということだ。

 では実際のところ、日常利用にどの程度制約が出るのだろうか。筆者が2回線(UQ mobile、povo)保有しているKDDI回線を対象として、プラチナバンドでしか通信ができなさそうな場所で実際に通信ができるのかどうかを、800MHz帯非対応のCMF Phone 1と、対応しているスマートフォン(Pixel 7)を用いて比較した。

 まずは長距離を移動する新幹線だが、ここ最近の出張で筆者が乗車した東海道新幹線(東京~浜松)と北陸新幹線(金沢~大宮)で確認したところ、どちらの端末もKDDIの800MHz帯であるバンド18をほぼ掴むことはなく、2GHz帯(バンド1)や1.7GHz帯(バンド3)、そしてもう1つのプラチナバンドである700MHz帯(バンド28)でカバーがなされていた。

 長いトンネルの中などでやや通信しづらくなるタイミングは生じるものの、沿線は800MHz帯以外でのカバーがしっかりなされており、CMF Phone 1でも通信品質に大きな差は生じなかった。

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東海道新幹線の車内で測定。新幹線ではバンド1に接続する割合が高く、800MHz帯に対応した機種でもバンド18に接続することはほぼなかった

 続いてKDDIのエリアマップから、2GHz帯や1.7GHz帯でカバーがなされておらず、800MHz帯でのカバーが主と見られるエリアを探し、そちらで通信ができるか比較してみることとした。具体的には東京都の東大和市、より分かりやすく言えば埼玉西武ライオンズの本拠地「ベルーナドーム」の南側にある多摩湖周辺のエリアだ。

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KDDIのエリアマップより。色が付いていないエリアはバンド1・バンド3でのカバーがなく、バンド18のみ対応である可能性が高いことから、該当のエリアで調査を実施した

 こちらは緑地や森林の公園が多く、森林内では高い周波数帯の電波が入りにくいと想定されることから、800MHz帯に対応しないCMF Phone 1には不利……と思われたのだが、実際には大半のエリアで問題なく通信できた。その理由は700MHz帯でのエリアカバーが意外と進んでいたためで、800MHz帯非対応だからといって完全に圏外になることはなかった。

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東大和公園内で調査しているところ。公園というかほぼ森林というべき場所なのだが、もう1つのプラチナバンドであるバンド28でしっかりカバーされていた

 では、都市部でも電波が届きにくいとされる地下はどうか。地下街が多い神奈川県・横浜駅で実際に試してみたが、こちらも800MHz帯だけでなく2GHz帯でカバーされているエリアが多く、古いビルの地下の奥などではやや厳しいケースも見られたが、それでも圏外になることはなかった。

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横浜駅の地下街で調査。ほかの端末がバンド18を拾う場所でも、CMF Phone 1ではバンド1を拾ってなんとか通信を維持していた

 以上の結果から、少なくともKDDI回線では、都市部や主要鉄道の沿線であれば800MHz帯が利用できなくても、他の周波数帯でカバーできる体制が整っていることから大きな不満を抱くことはなかった。ただNTTドコモ回線の場合は異なる結果となる可能性があるし、800MHz帯のみでカバーされている場所が多い地方や山間部、離島などで比較した場合は状況が大きく異なることも考えられる。

 それゆえ、都市部からほぼ出ることがないというのであれば話は別だが、CMF Phone 1をどこでも安心して利用したいのであれば、プラチナバンドの900MHz帯に対応しているソフトバンク回線一択であることは間違いないだろう。

【まとめ】着せ替えコンセプトは面白いが 日本のスマホユーザーが利用するには不満が残る

 まとめると、CMF Phone 1はデザイン面での特徴が非常に際立っており、カバーを変えて外観を変えられるというコンセプトが面白いことは確かだ。現状ではカバーやオプションの選択肢は限られているが、もっと多様なカバーが登場すれば着せ替えの楽しさが一層増すだけに、今後オプションが追加されることに期待したい。

 ただ一方で、日本人が利用するのに適したスマートフォンか? という点には疑問が残る。プラチナバンドへの対応がなされていないだけでなく、横幅が広くデザイン的にも片手で持っていて疲れやすい点は、片手持ちでの利用が多い日本人が利用するうえでマイナスポイントといえる。

 やはり国内向けカスタマイズをしていないことが、少なからず影響している。Nothing側も低価格とスピーディーな製品投入を重視し、日本での使い勝手はある程度割り切ったのだろうが、それだけに日常使いのスマートフォンとしてはオススメしづらいと感じてしまうのが残念だった。

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