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ソフトバンクの次の一手が出た! 「AI-RAN」で100台のスマホを接続してもスムーズに動画再生

ASCII.jp / 2024年11月15日 9時0分

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 ソフトバンクがAI(人工知能)とRAN(無線アクセスネットワーク)の統合ソリューション「AITRAS(アイトラス)」を発表した。同一のコンピュータプラットフォーム上でAIとRANが動作する仕組みで、高品質なRAN環境を提供すると同時に、AIアプリケーションの運用も可能となる。

 ソフトバンクの商用ネットワークに導入されるほか、2026年以降には国内外の通信事業者への展開・拡大を目指すという。発表に先駆けて、12日にメディア向けの説明会が開催され、AITRASを活用したデモンストレーションも披露された。

AIとRANの統合ソリューション「AITRAS」を発表

 説明会は慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)で実施された。SFCにはAITRASのアンテナが20基設置され、AITRASの実証実験が行なわれている。

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SFCの校舎の上に20基のアンテナを設置。アンテナはさほど大きくはなかった

 AITRASのプレゼンテーションは、ソフトバンク 執行役員 兼 先端技術研究所 所長 湧川隆次氏が担当した。

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ソフトバンク先端技術研究所 所長 湧川隆次氏

 湧川氏は、ソフトバンクが日本で最もトラフィックが多い通信事業者であり、通信の大容量化に向けて、TD-LTE、C-RAN(集中型RAN)、Massive MIMOなどを導入してきたことを紹介。そのうえで、“次の一手”として「AITRAS」を発表した。

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ソフトバンクは日本で最もトラフィックが多い移動体通信事業者だ
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大容量化に向けて、さまざまな取り組みを行ってきたことをアピール
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新たな施策としてAIとRANの融合に取り組み、他社にも提供する製品として「AITRAS」を発表

基板にはNDIVIA GH200を採用

 AITRASは、サーバーにNDIVIA GH200 Grace Hopper Superchipを使用。仮想化基板やオーケストレーターなどのソフトウェアはソフトバンクが開発。エッジAIサーバーには「NVIDIA AI Enterprise」を実装し、用途・目的に合ったAIアプリケーションを開発・運用できる。

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AITRASのシステム概要
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NVIDIAの基盤を用いて、Red Hat、富士通とも協業
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パートナー企業とのコラボの内容

 ソフトバンクとNVIDIAは、これまでに5年以上のパートナーシップ関係があり、それによって実現したシステムともいえよう。また、AITRASの開発にあたっては、世界的なオープンソースソリューションのプロバイダーであるRed Hatと富士通ともパートナーシップを締結している。

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米国テキサス州ダラスにある富士通の施設でも実証実験が行われる予定

 SFCでは、TDD(4.8GHz~4.9GHz)の周波数帯を使って、20セルでエリアを構築。実際に稼働しているサーバールームも見学させてもらった。7層のNVIDIA GH200で構成されるサーバーは、上の2つがRAN、下の4つがAIに用いられるという。さらに、予備のサーバーも備えている。それぞれのサーバーは、オーケストレーターによってRANとAIの役割を切り替えられる仕組みだ。

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SFCに構築されているAITRASのRANの概要
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都市部での導入を想定して、比較的高密度のエリア構成となっている
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これがサーバー
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オーケストレーターの概要
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NVIDIAのSenior Vide President, Telecomのロニー・ヴァシシュタ氏も登壇し、NVIDIAのAI-RANへの取り組みについて紹介し、AI-RANが大きな収益を生むことを強調していた

AITRASを活用したデモストレーションも披露

 説明会の後に、AITRASのユースケースを紹介するデモンストレーションが披露された。

 通信の安定性を紹介するために、まず100台のスマホで動画をストリーミング再生するデモが披露された。SFCのAITRASエリアは20セルで構成されるが、各セルに5台のスマホを設置して同時に動画を再生。その様子がZoomで中継された。ややわかりにくいデモではあったが、100台が同時に接続しても、スムーズに動画を視聴できることはわかった。

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動画視聴デモの概要
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100台のスマホで動画が再生される様子が中継された
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AITRASのvRANの最大スループットは、1セルあたり下りが1.3Gbpsで、上りが180Mbps
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他社のvRANと比べて電力効率がよいこともアピール

 NVIDIA AI Enterpriseを活用するエッジAIサービスの事例として、3つのデモも披露された。

 まずは自動運転。AIによって遠隔サポートを支援するもので、ソフトバンクが開発した「交通理解マルチモーダルAI」を使用。ライブレコーダーが捉えた映像や、交通状況を問うプロンプトなどからリアルな状況を理解し、予測困難な状況でもリスクを回避できるというものだ。

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「交通理解マルチモーダルAI」の特徴
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ソリューションの概要

 SFC内の道路で、横断歩道の手前に停車している車両があり、横断歩道を渡る人がいるかどうかを確認できない状況で、自動運転のバスが走行。停車中の車両に並んで一時停車した後、安全が確認できてから発車する様子を確認できた。ドライバーが運転している場合と同じような判断速度であった。

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右に見える道路上でデモを実施。それを見下ろせる状況で説明を受けた。自動運転バスは、交通理解マルチモーダルAIによってリスクが推察され、徐行しつつ横断歩道の前で停車した
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安全が確認されると、バスが動き出した

 次に見せてもらったのが、四足歩行のロボットが不審者を追いかけるデモ。あらかじめプログラムされた動作だけでなく、状況を判断して、臨機応変に動けるLLM(大規模言語モデル)ロボットを使用。当然のことながら、通信で遅延が生じると、不審者を追随することはできない。デモでは、約0.1秒ほどの低遅延で、ロボットが小走りに逃げる人を追いかけていた。また、遅延を1秒ほどにして、ロボットが立ち往生してしまう様子も実演された。

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LLMロボットは会話の文脈を理解し、初めての状況にも対応できる
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デモの概要
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まるで実際の犬のように軽快な足取りで不審者役の男性を追いかけた

 最後に見せてもらったのが、RAG(検索拡張生成)のデモ。一般的なLLMが事前に学習した情報のみに基づいて回答するのに対して、RAGは社内の機密情報など、LLMでは呼び出せない情報も回答できる。デモでは、テキストだけでなく音声や画像も認識する「マルチモーダルRAG」を使用。通常のLLMと、RAGを有効にした場合の回答の違いが示された。なおデータは、インターネット上のクラウドではなく、エッジAIに保存されるので、機密性も保持されるようだ。

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RAGは、クローズドのネットワークから情報を検出することが可能
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「RAG Menu@Edge」として、企業が必要なオプションを追加できるサービスを提供
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一般的なLLMを用いたチャットとの違いがデモされた

宮川社長はAITRASの海外展開にも意欲

 ソフトバンクは2025年以降、AITRASの実用性と効果の実証を目的として、通信事業者向けにAITRASのリファレンスキットを提供する計画だ。

 AITRASの説明会には、当初は登壇の予定がなかったソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川潤一氏も駆けつけて、AITRASの優位性をアピールした。SFCでの実証実験は「世界に向けた第一歩。AITRASの有効性を証明して、海外にも輸出していきたい」と意欲を示していた。

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ソフトバンクの宮川社長がサプライズで登壇。質疑応答にも参加した

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