Disney+も対応し、注目が集まっている「IMAX Enhanced」とは何か? 体験方法を解説
ASCII.jp / 2024年11月17日 9時0分
オーディオビジュアル業界では、新しいフォーマットや企画が定期的に登場している。そんな中、耳にすることが増えたのが「IMAX Enhanced」だ。マニア層を中心に「Disney+」でクイーンやマーベル作品の配信が始まったことで、期待感を持っている人もいるだろう。
ここでは、現状のAV機器でDisney+などのIMAX Enhancedコンテンツを楽しむための方法や具体的な機器についてまとめていこうと思う。
IMAX Enhancedとは何か?
IMAX Enhancedは、この映画館(IMAXシアター)の迫力ある映像と音を自宅でも体感できるようにするためのガイドラインと考えるとわかりやすい。テレビやプロジェクターなどの映像機器、サラウンドアンプやサウンドバーなどの音響機器など、IMAX Enhancedの認定を受けた製品を組み合わせ、IMAX Enhanced対応のコンテンツを再生すれば、高画質・高音質に楽しめ、IMAXが持つコンテンツの魅力を存分に体験できるということになる。
具体的には、IMAX Enhancedに最適化した「専用の画質・音質モード」を利用できたり、イマーシブオーディオの規格である「DTS:X」音声の再生ができたり、縦方向に広い「IMAXならではのアスペクト比(画角)」で作品を鑑賞できたりする点などがポイントだ。
IMAXシアターでは、撮影(カメラ)やフィルム(フォーマット)といった制作面から、プロジェクターや音響システムなど映画館の設備まで、つまりコンテンツの入り口から出口までの品質を一貫して管理する。また、IMAXシアターでは、縦方向の画角が広く、大きくて迫力あるスクリーンがあるのも特徴だ。これは専用のカメラ(やフィルム)を使っているから実現できることで、シネスコやビスタといった一般的なスクリーンより縦方向が広く正方形に近い画角になっている。そして、こうした基準に見合った上映ができるとIMAXをお墨付きを与えた、映画館がIMAXシアターということになる。
制作から再生までが一貫しているという点では、IMAX Enhancedの考え方も基本的には同じだ。一部ブラックボックス化されている部分もあるが、映画館などと同様に広いダイナミックレンジ(音の強弱)をとった音声を使っているなど、映画館の品質を家庭にどう提供するかに主眼が置かれている。
また、認定を出す以上、画質や音質についても一定の品質を備えていると期待できるので、IMAX Enhancedのコンテンツだけを鑑賞するのでなくても、対応した機器を手元に置いておけば色々安心という面もあるだろう。
2024年は2018年のスタート以来の大きな変化
IMAX Enhancedは2018年に発表され、コンテンツとしてはIMAX Enhanced対応のBlu-ray Discなどがリリースされている状態だ。2024年のいま改めて注目され始めたのは「Disney+」や「Sony Pictures Core」などのストリーミング、オンライン配信サービスを通じて対応コンテンツの配信が徐々に始まっているからである。
Disney+を例にとると、日本で視聴可能なIMAX Enhanced対応コンテンツは、クイーンのコンサート作品「QUEEN ROCK MONTREAL」やマーベル作品など17タイトル(プレミアムプランの契約が必要)。まだまだ限定的だが、映画を中心としたプレミアムコンテンツの配信の高画質化、高音質化に新しい動きが出てきたこと自体に興味がわく人もいるだろう。
上にも述べたように、IMAX Enhanced対応の製品であれば最適化された画質・音声でIMAX Enhancedのコンテンツを楽しめることになるのだが、DTX:X音声でIMAX Enhancedのコンテンツを楽しむためには、機器の設定や連携方法に注意点があるので、ここを中心に紹介していこうと思う。
筆者は先日DTS Japanで開催された説明会に参加したが、その中でDisney+など、動画ストリーミングサービスで用いられるDTS:Xは、ストリーミング用に最適化された「Profile2」(P2)と呼ばれるものだという。ロッシー(非可逆圧縮)ながら従来のDTS音声に用いていたものよりも効率がよく、聴感上はロスレスと同等の品質が得られるという。また、上にも述べたように、その音声はダイナミックを広くとった映画館に近いものとなっている。マニアには嬉しいところだろう。
Disney+のIMAX Enhanced対応作品をDTS:Xで楽しむには、以下の条件を満たす必要がある。(1)Android TVまたはGoogle TV対応のテレビでかつ「IMAX Enhanced」認証とDTS:X対応を果たしている機器を準備する、(2)テレビにインストールしたDisney+アプリを使ってIMAX Enhanced対応アプリを立ち上げる、(3)IMAX Enhancedの認証を受けたAVアンプを用意し、テレビのeARC/ARC経由で音声を送るーーというもの。
Disney+アプリでIMAX Enhanced対応コンテンツを探すには、検索やマーベル作品からIMAX Enhancedで視聴できる製品を絞り込んでいく方法などがある。再生開始時にはDTS:Xをオンにするかの確認が出るほか、再生中でもポップアップでオンにできる。この状態で一度再生をすると、次回以降はコンテンツの説明画面に「DTS:X」の表示が出る(逆にいうと、初回ではDTS:Xで再生できるという表示がないので手順を踏む必要がある)。
ちなみに(1)の条件を満たしたテレビは現状ではまだ少なく、国内ではソニーのBRAVIA(ブラビア)が中心。2024年モデルでは「BRAVIA 9」(A95L)、「BRAVIA 8」(XR80)、「BRAVIA 7」(XR70)など7機種が該当する。このほか、シャオミが最近日本向けにIMAX Enhanced対応テレビを投入しており、「S Mini LED」はIMAX EnhancedやDTS:Xに対応している。ただし、Disney+は10月時点ではステレオ再生のみしかできず、ウォルトディズニーとの間で対応を協議中とのことだった。また、TCLのテレビも同様の状況だが、11月末までにアップデート予定という説明だった。
なお、ソニーはIMAX Enhancedにかなり力を入れており、主にブラビアユーザー向けに展開している映画配信サービス「Sony Pictures CORE」でも対応作品が配信されている。こちらのコンテンツも今後、DTS:Xに対応させていくいく方針だという。
このように、IMAX Enhanced/DTS:Xをストリーミングで楽しむのはまだハードルが高い面はあるのだが、そのコンテンツを体験してみると大いに魅力があると感じたのもまた事実である。
DTS Japanの試聴室で、BRAVIA 9(XR90)の85V型モデルに、マランツのAVアンプ「AV8805」「MM8077」とKEFのスピーカー「Qシリーズ」で組んだ7.1.4chシステムをつないでDisney+のコンテンツを体験した。例えば、「ソー:ラブ&サンダー」では、映画館を思わせるような重低音に加え、DTS:Xならではのストリーミングでも解像感の高い立体音響が楽しめたし、「アヴェンジャーズ/エンドゲーム」では後半の集合シーンでダイナミックレンジの広い音響の迫力を感じ取れた。4K HDRと上下に広い拡大アスペクト比による映像もよく、細かいディティールまで見られる高画質だった。
もし、上記の環境でIMAX Enhancedのコンテンツを楽しめるのであれば、ぜひ体験して欲しいのが「QUEEN ROCK MONTREA」だ。ロックバンド・クイーンによる1981年のコンサートで、画面サイズが1:1.43と正方形に近いサイズであるのも特徴となっている。撮影は、一般的なコンサートを撮るというのではなく、コンサートフィルムを撮るのがコンセプトだったそうで、一般的な35mmフィルムに加えて、アナモフィックレンズを使った撮影の両方が行われたそうだ。そこから1:1.43の画面比率のコンテンツを作り、2月には日本のIMAXシアターでも上映されている。そのIMAX Enhanced版が視聴したものだ。
1981年はフレディ・マーキュリーがなくなるちょうど10年前であり、コンサートも11月24日から25日に開催とフレディが亡くなる日と一致しているというから、何か運命を感じさせる。画はフィルムが元にしては、思いのほかツルっとした仕上がりだが、透明感があって非常に美しい。パワフルで、低音がズンズンと響く一方で、ピアノの高音もいい。HDRの映像とIMAX、そしてDTS:Xの魅力が存分に味わえる仕上がりだった。なお、映像は、IMAXシアターと同じ拡張アスペクト比で再生されたため、左右が黒くなる状態ではあったが、設定によって画面いっぱいに表示することも可能だそうだ(また、画角の変更だけであれば、IMAX Enhanced認定テレビでなくても表示できるとのこと)。
現状、高画質・高音質の配信フォーマットというとDolby VisionとDolby Atmosの組み合わせを思い浮かべる人が多いと思う。まだコンテンツは少ないものの、それだけに力が入ったコンテンツが厳選されているとも言える面もあるだろう。
認定機器の中では、ソニーのブラビアと最新サウンドバーの組み合わせは比較的容易に導入できると思われる。興味を持った人はこうした組み合わせから、IMAX Enhancedの世界を体験してみてはどうだろうか。
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