大事なモノを“隠すガジェット”衝動買い
ASCII.jp / 2024年11月23日 12時0分
昭和の昔の頃は牛乳の配達箱に鍵を隠したもの 今でも同じ目的のアイテムはいろいろあるようだ
昭和の時代には「へそくり」という言葉が一般的に通じたと思うが、「タイパ」とかいう新しい略語が続々と若者の間で生まれる令和に、「へそくり」が今も彼らに通じるのかどうか筆者はよくわかっていない。
「へそくり」とは、家族みんなの家計用共有財産ではなく、「内緒でこっそり貯蓄した金銭」で、その目的はあくまで個人的に使用することのできる「私財」というのが一般的な定義だ。金額幅は考え方次第で個人差がある。
また昨今のように、自宅に突然侵入され被害に遭う時代だと、同じ昭和言葉の「タンス預金」なんてのも極めて危険な存在だ。もちろん金融機関に預けていても特殊詐欺という、AIで毎日更新される詐欺で騙され、多額の金銭を引き出される時代なので油断も隙もあったものではないが。
そして昨今はキャッシュレスワールドと呼ばれる時代……キャッシュレスとは無縁の、極めて美味しいレトロな喫茶店や食堂が多数存在するがゆえに、街を徘徊するときにはいくらかのキャッシュは持っていないと落ち着いて楽しくすごせない。
そんな時代に“隠す”をテーマにした、いくつかのガジェットを探して買ってみた。昔は玄関脇に取り付けられた牛乳配達箱などに自宅の鍵を隠した経験のある人もいるだろう。今でも同様の必要性があるのか、鍵を“石風”のガジェットに隠したり、玄関先の前庭に他の石と並べて大事なモノを隠蔽するといったアイテムは現役だ。
一方、令和のテクノロジー時代にはスマホアプリで鍵を開ける製品や、本体に取り付けられたテンキーのパスコードで限られた人だけが開閉できるキーボックスなども多くが発売されている。
貴重品や現金などを目当てに宅内へ侵入する窃盗犯の目を欺くためには、超古くはタンスや押し入れがポピュラーだったが、少し前には冷蔵庫やオーディオ装置、楽器ケースなどが注目された時期もあった。
以前筆者が購入した中には、ソフトウェアのパッケージ内部を小型金庫に改造した製品もあった。しかしアプリのダウンロードが一般化した現代では、本棚にこの手のアプリの外箱があることの方が違和感があるかもしれない。
隠蔽専用のガジェットではなく 本物の製品をベースに隠蔽機能を加えたものを今回紹介
この手の商品は社会環境やテクノロジーの変化に応じて過去からさまざまなモノが登場しては消えている。いずれの商品も大事なモノをそれらを狙う人から隠蔽するカモフラージュ技術が商品の原点だ。今回ご紹介する3点は今もポピュラーな「石型隠しキーボックス」と同様のコンセプトを採用している。
ただし、レガシーな石型ではなく、モバイル時代のスマホやIoT系の影響を受けてアップツーデートされている。従来の石型隠しキーボックスがフェイクのレジンやABS系の石を使用したのに対して、今回の3点はカモフラージュの必要のない本物のパーツなどを流用したところが最大の違いだ。
まず電球は、IoT時代の昨今ならごく普通に手に入るE26規格の口金の付いたプラスチックの割れないLED電球。そして昨今のスマホユーザーなら絶対に毎日使うUSB出力のUSB ACアダプタ。最後の商品は見かけることの多いちょっと太字のなんちゃって油性ペンだ。
内容積が一番大きいのは電球型の“隠すガジェット”。本来は内部のLEDライトの灯りを遠くまで届けるために薄い色の白い球体だが、貴重品を入れるには色が薄すぎて角度によっては中に何かが入っているのが透けて見えてしまう。
そこで一時的にティッシュペーパーを適当に折って入れてみたが効果はありそうだ。貴金属系のモノも十分収納できるので使い勝手はよさそう。結構堅牢に作られているのでE26口金を使って天井ソケットに半差ししても耐えられるだろう。隠蔽度はかなり高いが、頻繁に出し入れするならかなり面倒だ。予備電球として段ボールパッケージに収納する程度でもよいかもしれない。
続いてUSB ACアダプタータイプの“隠すガジェット”は、小さな女性用の腕時計程度なら収納可能だが、ボーイズサイズ以上は無理だった。より小さな指輪とかネックレス、小さく折った紙幣などは十分収納可能だ。筆者の持ってる実働中のUSB ACアダプタと並べて見ても、元々本物の“隠すガジェット”はまったくもって隠蔽向きと言える。
隠すというより、いざ足りなくなったときに必要な 名刺や紙幣を入れておけるアイテムを紹介
誰かから狙われる状態から守るという目的とは多少ズレがあるが、筆者が以前から興味を持っているのは、通常の名刺を切らしたときの「最後の数枚」や飛び込んだお店で現金の必要なお店だった場合などの対策だ。
筆者が友人たちと企画制作から販売までしている「ThinkAero(シンクエアロ)」という名前のブリーフケースは、底にベルクロで封印して内容物が落ちない設計のシークレットポケットがウリ。本来は交通系ICカードを入れて自動改札を通過するのが目的だったがおサイフケータイが主流になった昨今では、最後の3枚の名刺や紙幣の両方を入れてピンチの際に何度か助けられている。
最後に紹介する油性マーカー風ペンの“隠すガジェット”も同じ目的のアイテムとして活用できそうだ。紙幣を小さく折るのに少し工夫はいるが1万円札程度なら隠して収納できる。他の筆記具と一緒にペンケースに入れておけば自分も忘れるくらいにナチュラルだ。
今回衝動買いした中で一番値段の高かったこの製品は、筆記という本来の機能を搭載しているはずだったが、我が家に到着した時にはインクがほぼ干上がっていて濃くは書けないと、「Temuあるある」状態だった。もっとも筆記にはまったく期待していない商品なので問題はない。ここに1万円紙幣さえ忍ばせていれば現金オンリーのお店でも安泰だ。
まだまだ探せばこの手の“隠すガジェット”は一杯ありそうだ。ただしここでご紹介したモノは既にパブリックになってしまったのでその隠蔽効果はかなり限定的になってしまったかもしれない。各自が独自の工夫で新しい“令和の隠すガジェット”を発想してDIY開発・製造してほしい。
今回の衝動買い
・アイテム:石型キーボックス、電球、ACアダプタ、油性マーカー ・購入:Temu ・価格:261円、199円、206円、650円(価格はすべて今年7月末時点)
T教授
日本IBMでThinkPadのブランド戦略や製品企画を担当。国立大芸術文化学部教授に転職するも1年で迷走。現在はパートタイマーで、熱中小学校 用務員。「他力創発」をエンジンとする「Thinking Power Project」の商品企画員であり、衝動買いの達人。
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