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あだち充の最高傑作は『みゆき』。異論は認める

ASCII.jp / 2024年12月28日 15時0分

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 いや、分かる。諸君の言いたいこともよく分かる。でも私にとってはやっぱり『みゆき』なのだ。まあ、聞き給え。

他のあだち作品と『みゆき』はどこが違うのか?

 私はかなり古参のあだち充ファンなのだが、少女漫画と少年漫画の両方を手掛け、中性的な立ち位置で描かれることの多かったそれまでのあだち作品と『みゆき』が決定的に違ったのは、無意味にヒロインたちのお色気シーンが多数登場したりするような、とことん男の子の(妄想)目線で描かれていた点だった。口には出さなかったが『みゆき』連載開始当時思ったものだ。

「これだ! これこそ俺の求めてたあだち充だっ!!!」

 要するにアホだったのである。昭和のこのころは何をするにも牧歌的というかゆるい時代だったのだ。

 そして、もうひとつ特筆すべきなのは、この作品から明らかにあだちヒロインの魅力度が増していることだ。男子キャラは普通よりちょっと劣るくらい、つまりまだ自分に自信が持てないでいる中学生男子が自分を投影できるくらいの存在で、逆にヒロインがとびっきり魅力的に描かれている。おそらくだが、あだち先生自身も、主人公よりもヒロインを魅力的に描くほうが得意であり人気も出る、という気付きを得ることができた作品になったのではないかと思うのだ。

第2、第3の『タッチ』はあっても 第2の『みゆき』はもう生まれない

 『タッチ』にしろ『H2』にしろ『ラフ』にしろ、あだち作品の名作と言われる作品に共通しているのはヒロインがとても魅力的ということだ。でもその土台を築いたのは間違いなくこの『みゆき』であり、数あるあだち作品の中で唯一、この作品のヒロインたちだけが、男子中学生のバカな妄想に徹底的に付き合ってくれる。そして悲しいかな、コンプライアンスが声高に叫ばれる昨今、そんなヒロインが描かれるあだち作品が生まれることはもうないだろう。だから『みゆき』は希少で尊い。当時中学生だった私からすると、今読んでも中2に返って「ムフッ」とできる、そんな貴重な作品なのだ。

みゆき あだち充 (著) 全12巻(完結)

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