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携帯キャリア「30GBの壁」めぐる争い

ASCII.jp / 2025年1月7日 7時0分

参考写真 Frederik Lipfert | Unsplash

 2025年、スマホ業界は「30GBの壁」を巡る戦いが過熱しそうだ。

収入低迷のドコモ、破れかぶれのデータ増量

 ことの発端は昨年10月、NTTドコモ「ahamo」が月間データ容量を20GBから30GBに増量したことで、スマホ業界に激震が走った。

 そもそも各キャリアは2020年から21年にかけて、菅政権による「官製値下げ」により、通信料収入で大打撃を受けた後、なんとか収益が回復しつつある状態であった。

 特にKDDIとソフトバンクはサブブランドとして「UQモバイル」「ワイモバイル」、さらにオンライン専用ブランドとして「povo」「LINEMO」があるなか、いかに「小中容量ブランドから、メインブランドのデータ使い放題に移行させるか」が経営課題であった。

 最近では、ソフトバンクが初めて「ソフトバンクからワイモバイル」へ移行するユーザーよりも「ワイモバイルからソフトバンク」に移行するユーザーの方が多かったとして、宮川潤一社長が「(収益の柱を)構造転換していく」と説明したばかりだった。

 NTTドコモはKDDIやソフトバンクよりも小中容量プランである「irumo」の投入が遅れていたこともあり、いまだにデータ通信料収入の低迷から抜け出せていない。そんななか、破れかぶれにahamoでデータの増量に踏み込んだものだから、他社としても「寝耳に水」の驚きだったようだ。

「ahamo」30GB攻勢に各社が対抗

 NTTドコモの前田義晃社長は、ahamoユーザーによるデータ容量が足りないという声を吸い上げたようだが、それであれば、もっと80GBを追加できる「ahamo大盛り」を訴求すればいいものを、ユーザーに逃げられないようにするため、20GBを30GBに上げてしまった。これでは、通信料収入は増えるどころか横ばいは避けられないだろう。

 ひょっとすると、データ使い放題プランの「eximo」から「ahamo」に乗り換えるユーザーが殺到して、収益構造が悪化してもおかしくない。

 ただ、このahamoによる「30GB攻勢」はよほど他社が堪(こた)えたようで、UQモバイルは「コミコミプラン+」として33GBで対抗。ワイモバイルもMプランは20GBから30GBに容量を増加、Lプランは30GBから35GBとなり、おうち割光セットとPayPayカード割を組み合わせることで、3278円を実現している。

 LINEMOに関しても「ベストプランV」では20GBから30GBに増量され、5分間の通話定額込みで月額2970円と、まさにahamoに対抗してきているのだ。

 povoについても、当初は1年間、大容量のトッピングをつけると、月額3000円程度で30GB使えるという立て付けであったが、それではahamoに対抗できなかったようで、2024年12月26日からは30日間30GBで2780円という、わかりやすい「ahamo対抗トッピング」を始めたのだった。

ahamo対抗、楽天モバイルに追い風か

 KDDIとソフトバンクがNTTドコモ「ahamo」対抗を明確に打ち出す中、意外と追い風が吹き始めているかもしれないのが楽天モバイルだ。

 楽天モバイルは月額3278円でデータ使い放題の「最強プラン」が人気で昨年、800万契約を突破したが、決算資料では、ユーザーの月間平均利用データ容量が1日1GB、つまり月間30GB程度なのだという。

 既存3社のユーザーは、それほど多くのデータ容量は消費しておらず、一方で大量にデータを使うユーザーが楽天モバイルに殺到している状況が見て取れる。

 当然のことながら、5Gエリアの広がりによって、どこでも高速で通信ができる環境が整えば、ユーザーはもっとデータを消費するようになるだろう。これまでahamoや対抗プランが提供する月間30GBに収まっていたユーザーが月末になってデータ容量が足りなくなるのが当たり前になったとき、どんな動きをするのか。

 既存3キャリアとしてはメインブランドで提供しているデータ使い放題に乗り換えてほしいというのは間違いない。しかし、ユーザーとすれば、月々の支払額が倍近くになってしまうだけに、かなり躊躇してしまうはずだ。

 しかし、楽天モバイルであれば30GBを超えても月額3278円で収まるし、昨年からは家族や子供向けの割引やポイント付与もあり、負担額はさらに抑えることも可能だ。

「30GBの壁」超えるか、静観か

 既存3キャリアとすれば、月々の金額はそのままで、30GBからさらにデータを増量する「禁断の果実」に手を出すことも可能だが、それでは収益の柱にしたいはずの「データ使い放題プラン」がさらに見劣りすることになる。

 各社とも、月々の金額を下げるという直接的な値下げは、収益を直撃するダメージにつながるだけにできるだけ避けたい。ただ、競争上、他社に勝つには「データ増量でお得に見せる」という手法がわかりやすく手っ取り早い。

 2025年、既存3社のうち、どこが「30GBの壁」を超えてくるのか、それとも静観するのか。楽天モバイルを横目に3社のにらみ合いが続きそうだ。

 

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。

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