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充電用USB端子経由のハッキング抑止デバイス「USB DATA BLOCKER」を衝動買いして、さらに考察する

ASCII.jp / 2025年1月25日 12時0分

公共施設にある充電用のUSB端子にPCやスマホを接続するとハッキングされる可能性を防ぐ、「データブロッカー」と呼ばれるデバイスについて衝動買いとともにテストをした

公共施設の充電用USBからのハッキングを防ぐデータブロッカー 単純にデータ通信用のラインをカットしているだけではない?

 前回(「話題になっている充電用USB端子経由のハッキング抑止デバイス「USB DATA BLOCKER」を衝動買い」)、ここ数年公共施設などにある「スマホ充電スポット」でのサイバー攻撃(ジュースジャッキング)の実情や、そのパーソナルな対策としてのデータブロッカーの役目とその概要についてご紹介した。

 世界中で販売されているデータブロッカーの基本仕様は、USBプラグ内のデータ通信端子を除去したモノやそれに準じた製品であることも合わせてご説明した。

 データ通信端子が無く、充電端子だけを備えたデータブロッカーを一般的なUSBケーブル先端のプラグに取り付け、スマホ充電スポットを利用すれば、基本的にジュースジャッキング被害に遭うことはないはず。その代わりに昨今流行の急速充電対応のスマホやUSBケーブルを用意していても、充電時間のアドバンテージは無くなるかもしれない。

 一般的にデータ通信の端子やラインをカットすると、充電器側とデバイスとの間で可変電圧での充電のネゴシエーションが不可能になり、俗に言う「急速充電」ができなくなると言う理解が一般的だ。それゆえにデータブロッカー的な機器を利用すると、充電能力は5V/1~2A程度になってしまうと想像される。

今回のデータラインをカットしたPortaPowでもUSB PDに対応したACアダプタやモバイルバッテリー、USBケーブルなら5V/2A程度の急速充電なら可能だった

 毎年のように充電効率のアップしているUSB充電世界で5V/1Aは急速充電とは言えないが、5V/2Aなら範疇に入ると考えてもそれほど違和感はない。そもそも指の数以上に種類がある「急速・高速充電」とやらが多過ぎて、どこからが急速・高速充電なのか超文系の筆者にはよくわからない。

 駅や空港などの充電スポットでの限られた時間内に本当に効率的な急速充電を望むなら、スマホに適合した専用のACアダプタとUSBケーブルを常時持ち歩くのが鉄板だろう。これなら世界中どこの充電スポットでもジュースジャッキングとは無縁でいられる。

充電スポットで真の急速充電以上を望むなら指定の専用ACアダプタ+USBケーブルが鉄板だ

データブロッカーを経由しても急速充電が可能かをテスト どうやらいずれも急速充電が可能になっているようだ

 しかし、充電スポットでUSBケーブルだけも急速充電になるか気になるという人のために、前回に引き続き3つのUSB DATA BLOCKERブランドのうち、JSAUXブランドのUSBデータブロッカーとXYZAブランドのType-C-Type-C形式の2つのデータブロッカーを使用して、実際のスマホへの充電時の様子をテストしてみた。

 今回は実際に簡易的なテスターを使って、

1. データブロッカーを全く使用せずに充電能力を測定してみたケース 2. 実際にデータ通信ラインをカットしているように見えるJSAUXブランドのデータブロッカー経由で充電したケース 3. (前回のテスト結果から)完全にはデータ通信ラインをカットしていないと思われるXYZAブランドのデータブロッカーを経由しての充電能力

を測定してみた。

データブロッカー無し、JSAUXブランドのデータブロッカー、XYZAブランドのデータブロッカーのいずれも、USB PDアダプタでテストした。データブロッカーあってもなくても25W程度の急速充電相当の充電ができている

 結果はデータブロッカーを一切介していない急速充電である25.172W(9V/3A)を出した「1」と、データブロッカーを介した場合の「2」の25.357W、「3」の25.547Wとその差はほどんどなかった。

 テスターではデータ通信ラインがカットされているように見えるJSAUXブランドのデータブロッカーを介した場合と、データ通信ラインが明らかに装備されたままのXYZAブランドのデータブロッカーを介した場合の結果が同じになるのは、素人の筆者には極めて不可思議な現象ではあるが、それ以上の詳細はわからない。

 実験の結果的には、データ通信ラインやデータブロッカーの有無に関わらず5V/2A~3V/9A程度の急速充電は可能だったということになる。ただし今回の自宅でのテストではACアダプタに急速充電対応やUSB PD ACアダプタを使用した。全世界に散在する充電スポットの出力が急速充電対応であるかどうかはわからない。

 米国ではジュースジャッキングの事例が多少あるかもしれないが、日本国内ではほぼゼロに限りなく近いのが現実だろう。今回も実際に空港やホテル、駅などのスマホ充電スポットでデータブロッカーを持って行って充電操作をしてみた。多くの人が充電スポットを利用しており、特に空港は順番待ちの人が居たり満員御礼状態だった。

 ところがよく見ると、実際の多くの利用者は自分専用のUSB ACアダプタとUSBケーブルを持ち込んで利用している人が多い。最初から充電スポットの怪しいUSBポートから直接接続さえしなければジュースジャッキングとは無縁でいられる。

案の定、データブロッカーがあってもなくても急速充電とは無縁だった。USB PD対応のACアダプタの使用が安心で充電速度も速い

 またパススルー充電機能のあるUSB PDモバイルバッテリーを介して、スマホにはUSBモバイルバッテリーから充電することで、同じようにジュースジャッキングとは無縁で安全に充電できるだろう。

USB PDに対応したモバイルバッテリー経由しての充電も確実な方法だろう

完全にデータ通信ラインをカットしていない? それなら自分でACアダプタを持って行った方が確実かつ安心

 ここ数年近くずっと話題にのぼっているジュースジャッキングの明快な対策として、データ通信ラインをカットしたデータブロッカーの存在意義も十分理解できる。そしてその徹底した対策が仇となって、昨今流行の兆しにある急速充電や高速充電を阻害することも理論的には理解できそうだ。

 しかし今回の素人テストでは、データ通信ラインのカットされたデータブロッカーを介した場合でも25W程度の急速充電は可能だった。「データ通信ラインをカットする」というのが「ジュースジャッキングからデバイスを守る不動のベスト解」であるのなら、「データ通信ラインを装備したままで急速充電」がアドバンテージのデータブロッカーはどこか心配だ。

急速充電に対応するために、何らかの仕組みが施されているのであれば、データブロッカーはどこか心配が残る

 今後主流になるであろう、外観上はデータ通信ラインの見えないType-C対応のデータブロッカーの場合、物理的にデータ通信ラインが生きた状態なのか、データ通信ラインは存在しても論理的に何らかの手段でデータ通信をブロックすることができているのか、具体的かつ論理的な技術背景の説明が必要だと思われる。

 確かなことは確実に5V/2Aの準急速充電レベルまでしか充電効率は上がらないが、Type-AーType-Cの「ポータポウ」のようなレガシーなデータブロッカーを使うのが安心だ。あるいは100g前後重くなっても、確実に安心なのは急速充電がコミットされている、専用ACアダプターとケーブルを充電スポットに持ち込むことだ。これで面倒なジュースジャッキングとは無縁でいられる。

数あるUSB PD充電器の中から最適解を選ぶのが得策だ

 目当ての充電スポットでコンセントが空いていなければそのときは諦めて市販のデータブロッカーと自前のUSBケーブルを使えばいいだろう。急速充電とは無縁だが、前回ご紹介した中で一番安価な「変換名人」(スマホ充電アダプタ)を使用してもいい。

安価な変換名人という製品は単純にデータ通信ラインをカットしているので、一番確実かもしれない

 変換名人(スマホ充電アダプタ)はデータラインを介してコンテンツの同期などを一切させず充電作業だけに専念させるアダプタなので安全確実だ。スマホ画面で時々聞かれてウザい「端末のデータへのアクセスを許可しますか?」というメッセージとも無縁だ。

 すでに世界中で数多く販売されているデータブロッカーだが当初の「データ通信ライン」をカットするという簡単確実な王道から外れ、急速充電に対応することがデバイスのアドバンテージとなり、その実現を狙ったあたりから実用品の域からガジェットに成り上がってしまった感がある。

 リスクがあると言われている充電スポットでの対応戦略は、自分のスマホに合ったACアダプタとケーブルを使うという“鉄板”戦略、まだまだType-Aポートが多く急速充電への対応不明な充電スポットの急速充電は期待せず、データラインをカットしただけのシンプルなデータブロッカーと自前のUSBケーブルを活用する戦略、データブロッカーなどという存在はすべて忘れて少し重いが使い慣れたUSBモバイルバッテリーやパススルー可能なUSBモバイルバッテリーを活用する戦略、少しの時間なら充電ごときにあくせくせず、駅や空港では人物観察でもして楽しく時間を潰す戦略の4つが考えられる。

充電スポットへの対応として、いくつかの戦略があるが、少しの時間に充電にあくせくしないのも1つの手かもしれない

 残念ながら筆者のように隅々まで文系脳だが、「リスクも楽しみな廃人」にとっては登場から数年以上経ってもなぜかまだまだ成長中の「データブロッカー」というデバイスは安価で最高のテクノロジーガジェットだ。そして時間潰しのためのコレクションには最適なデバイスでもあるのだ。

 
T教授

今回の衝動買い

・アイテム:XYZA「Type-Cデータ遮断アダプター Type-C Data Shield」、JSAUX「USBデータブロッカー&USB Cデータブロッカー(4パック)」、変換名人「スマートフォン充電特化アダプタ 給電専用」、PortaPow「USB-A - USB-C データブロッカー」 ・購入:Amazon.co.jp ・価格:順に1999円、1999円、569円、1480円

T教授

 日本IBMでThinkPadのブランド戦略や製品企画を担当。国立大芸術文化学部教授に転職するも1年で迷走。現在はパートタイマーで、熱中小学校 用務員。「他力創発」をエンジンとする「Thinking Power Project」の商品企画員であり、衝動買いの達人。

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