再生医療分野における画期的な研究成果 間葉系幹細胞の抗炎症作用を大幅に高めることに成功
@Press / 2017年3月8日 12時0分
富士フイルム株式会社(社長:助野 健児)は、細胞培養に適した当社独自の細胞外マトリックスと間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell:MSC)(*1)を組み合わせることで、MSCが持つ抗炎症作用を大幅に高めることに成功しました。
細胞外マトリックスは、細胞の外側にあるコラーゲンといったタンパク質などで、生体組織の支持のみならず、細胞の増殖・分化などの調整にも重要な役割を果たすものです。富士フイルムは、長年の写真フィルムの研究で培ったコラーゲン技術や、遺伝子工学技術を用いて、動物由来成分を含まず高い安全性や生体適合性を実現する細胞外マトリックス「CellnestヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチド」(*2)(以下、「セルネスト」)を開発・上市しています。今回、この「セルネスト」を活用して、以下の研究成果に繋げています。
<研究成果の概要>
(1)「セルネスト」のマイクロサイズのペタロイド状微細片(図1)とMSCを組み合わせて三次元細胞構造体「CellSaic(セルザイク)」(*3)(図2)にすると、炎症刺激に応じてMSCから産生される抗炎症液性因子(*4)の分泌量が3~4倍に高まることを実証。
(2)炎症性腸疾患モデルマウスの実験において、上記の「セルザイク」を投与すると、炎症を鎮静化し、大腸の組織の再生が促進されていることも確認。
本研究成果は、MSCの抗炎症作用を飛躍的に高めてさまざまな組織の再生を可能にする画期的なものです。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/123872/img_123872_1.jpg
◆詳細はWebページをご覧下さい。
⇒ http://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_1162.html?link=atp
この研究成果から、「セルネスト」のペタロイド状微細片と細胞を組み合わせた「セルザイク」は、細胞移植や組織再生といったさまざまな再生医療への活用が期待できると考えています。なお、今回の研究成果は、2017年3月8日に仙台国際センターにおいて開催される「第16回日本再生医療学会」にて発表する予定です。
富士フイルムは、長年の写真フィルムの研究で培ってきた高機能素材技術やエンジニアリング技術と、Cellular Dynamics International, Inc(セルラー・ダイナミクス・インターナショナル)の世界トップのiPS細胞関連技術・ノウハウ、株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングの治療用細胞の生産技術など、再生医療関連のグループ会社の技術を活用し、再生医療分野の研究開発をさらに推進し、再生医療の産業化に貢献していきます。
*1 間葉(骨、軟骨、腱、脂肪など)に由来する体性幹細胞。主として間葉系細胞への分化能を持ち、さまざまな再生医療における細胞源として有望と考えられている。
*2 遺伝子工学を用いて酵母細胞に産生させた人工タンパク質。研究用試薬として、2014年12月より発売。コラーゲンは動物の結合組織を構成する主要タンパク質で、ヒトI型コラーゲンは骨や皮膚などに存在し、ヒトの全コラーゲンの95%を占める。
*3 細胞と細胞外マトリックスを組み合わせた、モザイク状の三次元細胞構造体。Cell and Scaffold, forming Mosaicのcellと、Mosaicのsaicを合わせた造語。
*4 液性因子とは細胞から分泌されるタンパク質で細胞間シグナル伝達物質。免疫、炎症に関係したものも多い。
富士フイルムニュースリリース一覧
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