富士フイルムとファンペップ ヒトパピローマウイルスに対する抗ウイルス薬の共同研究契約を締結
@Press / 2017年5月15日 11時45分
富士フイルム株式会社(本社:東京都港区、社長:助野 健児、以下 富士フイルム)と株式会社ファンペップ(本社:大阪府茨木市、社長:平井 昭光、以下 ファンペップ)は、本日5月15日、ヒトパピローマウイルス(Human papillomavirus、以下 HPV)(*1)に対する抗ウイルス薬の共同研究契約を締結いたしましたので、お知らせいたします。本共同研究では、ペプチド(*2)を用いた中分子医薬品の分野を中心に、HPVに対する抗ウイルス薬の候補化合物の創出を目指します。
◆詳細はWebページをご覧下さい。
⇒ http://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_1190.html?link=atp
中分子医薬品は、低分子医薬品と抗体医薬品(高分子医薬品)の中間にあたる分子量を有し、化学合成による製造が可能で細胞膜透過性に優れる低分子医薬品の特長と、標的への特異性や結合力が高いため副作用が少ない抗体医薬品の特長を併せ持つことが可能な医薬品として注目されています。中分子医薬品は、有効成分が細胞内に入ることで、細胞内でのたんぱく質間相互作用(*3)を阻害するアプローチなどが可能になるため、従来の医薬品とは異なる新しい創薬標的が狙えるといわれています。さらに、低分子医薬品と同様、化学合成による製造が可能なため製造コストを抑制できます。こういった背景から中分子医薬品に対する期待がますます高まる中、現在、ペプチドを用いた創薬研究が活発化しています。
富士フイルムとファンペップは、今回の共同研究を通じて、HPVの増殖を阻害する抗ウイルス薬の候補化合物の創出を目指します。富士フイルムは写真フィルムの研究開発で培った、高度な化合物の合成力や設計技術のほか、グループの富山化学工業が強みを持つ感染症領域の知見やノウハウなども活かし、ペプチドおよび低分子化合物の合成・設計を行います。またファンペップは、これまでペプチドを用いた創薬研究で蓄積してきた経験に基づき、富士フイルムが合成・設計した候補化合物の評価(薬効・毒性評価)を実施します。
HPV感染を原因とする代表的な疾患としては、皮膚や粘膜の微小な外傷から感染し、手足などにできる尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)(*1)や外陰部などにできる尖圭(せんけい)コンジローマ(*1)などのウイルス性疣贅があります。これらの疾患に対しては、外科的治療(凍結療法やレーザー治療など)や薬物療法(体の免疫を活性化させる自然免疫賦活剤の投与)が行われていますが、現在、直接HPVの増殖を阻害する性質を有する医薬品はありません。
今後、富士フイルムとファンペップは、新規抗ウイルス薬の創出を通じて、HPV感染症に対する治療法の新たな選択肢を提供することを目指します。
*1 ヒトパピローマウイルスは皮膚や粘膜の傷口から接触感染するウイルス。代表的な疾患としては、尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)や尖圭(せんけい)コンジローマなどがあります。
尋常性疣贅:手足、膝、顔などの傷を受けやすい部位に発生する皮膚のイボで、小児期に多く発生します。液体窒素による凍結療法やレーザー治療が行われています。
尖圭コンジローマ:外陰部や肛門周辺などの皮膚や粘膜に発生する、先の尖った硬いイボです。性感染症として主に成人にみられます。液体窒素による凍結療法やレーザー治療に加え、イミキモド(自然免疫賦活剤)による薬物療法が行われています。
*2 ペプチドは一般的にアミノ酸が2~50個程度繋がったタンパク質の断片。生体内のペプチドのアミノ酸や立体構造を参考にした人工的なペプチドを有効成分とする中分子医薬品を開発することでアンメットメディカルニーズの充足に貢献すると期待されています。
*3 たんぱく質間相互作用とは、たんぱく質が、代謝やシグナル伝達などの機能を果たすためにほかのタンパク質などと結合する作用のこと。その仕組みを解明し、人工的に化合物を設計することで、創薬に繋がる化合物が得られる可能性が高いと考えられています。
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