がん組織に薬剤を選択的に送達し、薬効を高めるリポソーム製剤「FF-10832」の研究成果 がん細胞に薬剤が持続的に作用するメカニズムを解明 免疫チェックポイント阻害剤との併用投与で生存期間延長を確認
@Press / 2018年11月12日 15時30分
富士フイルム株式会社(社長:助野 健児)は、米国で臨床第I相試験を実施している抗がん剤「FF-10832」について、患部で薬剤が放出され、がん細胞に持続的に作用するメカニズムを解明しました。また、免疫チェックポイント阻害剤(*1)との併用投与では、単剤投与の場合と比べて生存期間が延びるなど、さらに高い薬効を発揮することも確認しました。これらの研究成果は、マウス実験で明らかになったことです。なお、「FF-10832」は、膵臓がんなどを適応症とする抗がん剤「ゲムシタビン」(*2)を独自のリポソームに内包したリポソーム製剤です。
リポソームとは、細胞膜や生体膜の構成成分である有機物のリン脂質などをカプセル状にした微粒子のことで、体内で必要な量の薬剤を必要な部位に必要なタイミングで送達する技術であるドラッグ・デリバリー・システム(DDS)技術の一種です。抗がん剤には、がん組織以外の正常組織に対しても作用し、強い副作用を引き起こすケースがありますが、薬剤をリポソーム製剤にすることで、がん組織に薬剤を選択的に送達し、副作用を抑制して、薬効を高めることができると期待されています。
「FF-10832」は、血中での薬剤の消失半減期(*3)が非常に短い「ゲムシタビン」を、均一なサイズのリポソームに内包したリポソーム製剤です。「FF-10832」は、「ゲムシタビン」を血中で安定化させ、さらにEPR効果(*4)で患部へ集積させて薬剤を放出することが可能。すでにマウス実験では、「ゲムシタビン」を投与した場合と比較して1/60の低投与量でも同剤を大幅に上回る薬効を示すとともに、「ゲムシタビン」では効きにくい種類のがん細胞を移植したマウスでも薬効を発揮することも確認しています。
富士フイルムは、本年5月より米国で「FF-10832」の臨床第I相試験を開始する一方で、マウス実験にて患部での薬剤の放出メカニズムの解明や免疫チェックポイント阻害剤との相乗効果の研究を進め、以下の成果を得ました。
*1 免疫細胞の働きを弱める機構(免疫チェックポイント)を阻害することで、活性化された免疫細胞が、がん細胞を攻撃して効果を示す薬剤の総称。悪性黒色腫、肺がん、胃がん、腎がんなどに幅広く用いられる。「FF-10832」との併用投与で使用した免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4抗体。
*2 米国イーライリリー社が開発した抗がん剤(一般名:ゲムシタビン、製品名:ジェムザール)。膵臓がんの第一選択薬として用いられ、そのほかにも幅広いがん(肺がんや卵巣がんなど)に用いられている。
*3 血中薬物濃度が、半分に低下するまでの時間のこと。
*4 がん組織は増殖に伴い周囲の血管を新生させるが、新生血管は未成熟で、正常血管には存在しない血管壁の隙間が存在する。リポソームや高分子などを血液中に滞留させると、隙間がない正常な血管壁は透過せず、がん組織周辺のみで血管壁を透過する。また、がん組織ではリンパ組織が未成熟であるため、透過したリポソームや高分子などが排除されにくく、結果的にこれらはがん組織に集積する。これをEPR(enhanced permeability and retention)効果という。
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