乳幼児向け動画視聴、悪影響を与えるとは限らない
@Press / 2020年7月27日 9時30分
乳幼児向けの家庭教材として、DVDや動画など映像を活用したものが増えています。一方で保護者は「赤ちゃんに映像を見せることは良くないらしい」と映像教材の活用に不安を感じることも多いと言います。ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(※以下、IBS)<東京都新宿区 所長:大井静雄>は、こうした保護者からの声を受け、乳幼児期のメディア利用に関する国内外の調査を考察しました。
1日1時間以上見続けると悪影響?「スマホ育児」など否定的な見解が目立つ乳幼児の映像・動画視聴
テレビ、パソコン、スマートフォンやタブレット端末、ゲーム機器など、映像や動画を見る方法が多様化する中、日本では、0~6歳の未就学児がいる共働き家庭の母親の7割近くが、子どもに何らかのデバイスを使わせたり触らせたりしています。
一方、約半数の母親がメディアの「使いすぎによる心身への悪影響」や「将来的に脳の発達に及ぶ悪影響」について心配していることも明らかになりました(橋元ほか, 2018)。日本では近年、乳幼児期のデジタルメディア利用について、「メディア漬けの子育て」、「スマホ育児」といった言葉も生まれるほど否定的な見解が目立ちます。
WHOが2019年に公表した5歳未満の子どもに対するガイドライン(World Health Organization, 2019)では、子どもがテレビなどの画面を見てじっとしている時間(1日あたり)を0~2歳未満は0分、3~4歳は60分以内にするよう推奨。乳幼児期から身体を動かす時間や睡眠時間をしっかり確保することは、将来の生活習慣や身体的・精神的な健康につながるとしています。
ただこれは、じっとしている時間を減らし、運動不足を防ぐことが目的。同じ「映像を見る」であっても、スマートフォンを子どもに渡して一人で動画を何時間も見させることと、映像や動画の真似をして親子で手足を動かしたりボール遊びをしたりすることは区別する必要があると考えられます。端的に0~1歳の子どもは映像を一切見てはいけない、1日1時間以上見続けたら悪影響が及ぶ、ということではないのです。
学力の差は、テレビ接触時間の違いが直接的に生み出すとは限らない
NHK放送文化研究所による長期的な調査(NHK放送文化研究所, 2010)によると、子どもは1歳以降から自発的にテレビを見ることが多くなるものの、年齢が上がるにつれて視聴時間が増え続けるわけではありません。また、親の育児に対する充実感や自信が子どものテレビ接触時間に影響する一因となっている可能性もあるといいます。
さらに同調査によれば小学3・4年生になったときの学力の差は、テレビ接触時間の違いが直接的に生み出すのではなく、読書時間や塾・家庭での学習時間、親の最終学歴・収入といったほかの要素が影響する可能性も示されています(近江ほか, 2013)。
また、日本教育情報化振興会(2018)によれば、子どもと十分にコミュニケーションをとっている親ほど、メディア利用についてルールを決めて子どもに指導しているといいます。「メディア利用時間が長い子どもほど発達や学力に何らかの問題がある」という結果があったとしても、それは、家庭の経済状況や親子関係、育児に関する親の知識・価値観・行動やストレスなど、子どもが置かれているさまざまな周囲環境が要因に含まれている可能性があるのです。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/220130/img_220130_1.png
どう選び、どう使えばいい?
2012年のアメリカの調査(Northwestern University, 2014)によれば、メディア中心の生活を送る家庭ほど、世帯年収が低いことや、ひとり親家庭の割合が高いことがわかっており、こうした家庭ほど子どもの教育のためにテレビ番組やDVD映像を活用しようとする親の割合が多いことも報告されています。経済的な事情で長時間働く必要があったり、仕事や家事をひとりでこなすために忙しかったりする親にとっては難しく、育児の手助けになるどころか、負担やストレスがさらに増えてしまうことになるかもしれません。
新型コロナウイルスの感染拡大により、自宅時間が増える中、より多くの子どもたちが映像などのメディアを通じて多様な体験をするようになりました。アメリカ小児科学会は、映像視聴に関する注意喚起だけではなく、適切な映像内容や視聴方法についての提言も行っています。メディアを全否定するのではなく、メディアを通じた体験も新たな教育機会としてとらえ、乳幼児向けの映像教材や教育アプリなどを利用する際には、何を選んでどう使うか、という「質」の側面が重要なのではないでしょうか。
詳しい内容はIBS研究所で公開中の下記記事をご覧ください。
■「乳幼児は映像を見てはいけない」は本当か?
https://bilingualscience.com/english/%e3%80%8c%e4%b9%b3%e5%b9%bc%e5%85%90%e3%81%af%e6%98%a0%e5%83%8f%e3%82%92%e8%a6%8b%e3%81%a6%e3%81%af%e3%81%84%e3%81%91%e3%81%aa%e3%81%84%e3%80%8d%e3%81%af%e6%9c%ac%e5%bd%93%e3%81%8b%ef%bc%9f/
■ワールド・ファミリーバイリンガル サイエンス研究所(World Family's Institute Of Bilingual Science)
事業内容:教育に関する研究機関
所 長:大井静雄(東京慈恵医科大学脳神経外科教授/医学博士)
設 立:2016年10 月
URL :https://bilingualscience.com/
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プレスリリース提供元:@Press
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