高校時代の留学に異文化理解の大きな可能性
@Press / 2020年10月7日 10時45分
新型コロナウイルス感染拡大により、世界中でさまざまな摩擦が生まれ、他者の立場を理解しようとする大切さについて、考え始めた人も多いでしょう。偏見・差別は、異文化理解を妨げる要素の一つです。
ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(※以下、IBS)<東京都新宿区 所長:大井静雄>は公益財団法人AFS 日本協会ご協力のもと、長期留学から帰国した高校生3名とオンライン座談会を行い、現地での体験から偏見・差別をなくすための異文化理解について考えました。
日本人留学生が経験した差別
AFS国際本部の追跡調査(※1)によれば、海外留学を経験していない同世代のグループと比べ、元AFS留学生のほうが、二つ以上の言語を話し、異なる文化的背景をもつ友人がいて、海外と関わりのある仕事に興味をもち、自分の子どもにも異文化交流や海外留学の体験を望んでいる傾向にあることが報告されています(AFS International, 2008)。
ただ、異文化理解の妨げとなる偏見や差別を経験した元留学生は少なくありません。
座談会には上杉花梨さん(オランダ・ヘルダーラント州に2019年夏~7カ月間留学 ※2)、百武美晴さん(コスタリカ・アラフエラ州に2019年2月~1年間留学)、伊東凛さん(アメリカ・ニュージャージー州に2019年夏~7カ月間 ※2)が参加。3人とも18歳です。
上杉さんは「アジア人はみんな中国人だと思われているようで、学校内でも、指で目を吊り上げるようにしてアジア人の顔の真似をされたり、通りすがりに『ニイハオ!』と言われたりしました」と、新型コロナウイルスが流行する前からあった差別について振り返ります。同様のことはコスタリカにもあると百武さん。オランダやコスタリカの場合、日本のことを知ってもらうため、日本についてプレゼンテーションする時間を設けてもらったともいいます。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/229467/img_229467_1.png
学校行事でクラスメイトとの仲がもっと深まった思い出の写真(百武さん:左から3人目)
ニューヨークに近いエリアに留学していた伊東さんは「リベラルな地域で、差別的な扱いを受けたことはなかったです」と言う一方で、一番仲がよかった友だちがバイセクシャルだったことを機に、LGBTQに関する偏見や差別についても考え始めたそう。
無知から生まれる差別をなくすためにも、相手を知ろうとする努力を
3人が海外での差別や偏見を体験したことで得た共通認識は、「差別は無知から生まれている」「中途半端な情報や間違った情報からも先入観は生まれる」ということ。「物事はいろいろな面から見てみないとわからないから、多方面の情報を組み合わせて考えるようにしないと、異文化理解は難しいのでは」と伊東さん。
百武さんは「その人の中にある常識と、相手がどう思うか、というところに違いがあると、偏見とか差別が生まれるのかなと思います。相手の立場に立てること、相手がどう思っているか感じ取れる能力は大事」と言います。
また、彼らは自分のことを知ってもらう前に、相手のことを知ることの大切さも感じたといいます。「偏見や差別をなくすためには、他人への理解を深めることが大切。教育をしっかりするべきだと思います。日本は民族や性別、いろいろな違いを超えて理解しようとする、そういう国になってほしい」(上杉さん)
高校生のうちに異文化体験をすることでの可能性
さらに高校生だからこそできた異文化体験があると3人はいいます。
「大学生みたいに明確な目的をもって外国に行くわけではないので、いろいろなことにチャレンジしていろいろなことを学ぶことができた」(上杉さん)。
「自分の考え方を確立していくいまの時期に、いろいろな人柄や考え方、日本では見られないような自然にふれて、純粋な心で見ることができた」(百武さん)
北米の日本人留学生と国内大学生を比較した研究(植松晃子(2010).「異文化環境における民族アイデンティティの役割」.『集団アイデンティティと自我アイデンティティの関係』, 19(1), 25-37.)などからも、異文化体験は、国籍や人種、民族、性別、年齢、人格など、「自分はどういう人間なのか」を考えるきっかけになると考えられます。
異文化体験そのものだけではなく、このようなアイデンティティの探究経験も、文化的背景の異なる人々のなかで生きていく力や自分の道を切り開いていく力につながる可能性があるのです。
高校生時代の留学は、日本や世界で偏見・差別をなくすためにも、一人の人間として成長するためにも、とても価値のある体験なのではないでしょうか。
詳しい内容はIBS研究所で公開中の下記記事をご覧ください。
■留学した高校生が考える異文化理解とは
https://bilingualscience.com/english/%e7%95%99%e5%ad%a6%e3%81%97%e3%81%9f%e9%ab%98%e6%a0%a1%e7%94%9f%e3%81%8c%e8%80%83%e3%81%88%e3%82%8b%e7%95%b0%e6%96%87%e5%8c%96%e7%90%86%e8%a7%a3%e3%81%a8%e3%81%af/
※1:1981~1982年にAFS長期/短期留学プログラムに参加したアメリカ出身の帰国生(回答数:1920)と、帰国生の高校時代の友人のうち留学未経験者(回答数:511)に対してアンケート調査が行われている。回答者の年齢は、調査時点で全員40歳以上。
※2:新型コロナウイルス感染拡大の影響により途中帰国。
■ワールド・ファミリーバイリンガル サイエンス研究所(World Family's Institute Of Bilingual Science)
事業内容:教育に関する研究機関
所 長:大井静雄(東京慈恵医科大学脳神経外科教授/医学博士)
設 立:2016年10 月
URL :https://bilingualscience.com/
詳細はこちら
プレスリリース提供元:@Press
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