紙おむつのカーボンニュートラルな廃棄プロセスを開発 吸収剤を天然素材に置換、分解微生物による生分解を実現
@Press / 2021年3月4日 16時30分
芝浦工業大学(東京都港区/学長 村上雅人)工学部応用化学科山下光雄教授は、紙おむつの吸収剤を石油由来のものから、天然素材のセルロース系素材に置き換え、分解微生物を用いて生分解するカーボンニュートラルなプロセスを開発しました。
高齢化社会の進行による需要の高まりから、紙おむつ排出量は増加傾向にあります。しかし使用済み紙おむつは、生ごみと同等の含水率で焼却効率を下げ、二酸化炭素排出を増加させる原因の一つとなっています。吸収した水分と共におむつ全体の7割を生分解可能にすることで、溶液化したおむつは焼却処理する必要がなくなり、排水処理することが可能となります。
■ポイント
・紙おむつの吸収剤を石油由来から天然由来へ置換し、生分解プロセスが実現
・合成したセルロース系吸収剤が市販品の吸収量を超えることを確認
・紙おむつを生分解・溶液化し、分解物を排水処理することで焼却負荷を軽減
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/249602/LL_img_249602_1.png
紙おむつの生分解プロセス
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/249602/LL_img_249602_2.png
図 合成微生物による12時間生分解後のセルロース系吸収剤重量変化
■研究概要
市販されている紙おむつの吸収剤は非生分解性で焼却処理しますが、水分を含む吸収剤の焼却はエネルギー効率が悪く、二酸化炭素排出を促進させ、焼却炉を劣化させる原因となっています。この吸収剤を生分解性の素材と置き換え、微生物により溶液化し吸収された水分と共に排水処理することで、焼却処分する際の二酸化炭素排出が抑えられます。
吸収剤を生分解性セルロース系素材であるCMC(カルボキシメチルセルロース)に架橋剤EGDE(エチレングリコールジグリシジルエーテル)と合成したものに置き換えます。このように合成したセルロース系吸収剤は、市販紙おむつの吸収量210gと比較して最大吸収量260gとなることを確認できました。また図のように、セルロースを生分解する合成微生物(セルロモナスジェリダ)を添加し溶液化することで、水分を含むセルロース系吸収剤50gが12時間後には1.5gになることが確認できました。
■今後の展開
紙おむつ構成材の残り3割を構成する非生分解性プラスチックを分解できる微生物の獲得、またはその部分を生分解可能な素材に置き換えるための研究を行います。
■芝浦工業大学とは
工学部/システム理工学部/デザイン工学部/建築学部/大学院理工学研究科
https://www.shibaura-it.ac.jp/
日本屈指の海外学生派遣数を誇るグローバル教育と、多くの学生が参画する産学連携の研究活動が特長の理工系大学です。東京都とさいたま市に3つのキャンパス(芝浦、豊洲、大宮)、4学部1研究科を有し、約9千人の学生と約300人の専任教員が所属。創立100周年を迎える2027年にはアジア工科系大学トップ10を目指し、教育・研究・社会貢献に取り組んでいます。
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