日常的にくるみを摂取すると、ピロリ菌が原因となる疾患を予防できる可能性が動物実験により判明
@Press / 2021年4月16日 9時0分
カリフォルニア州フォルソム(2021年2月9日)―日常的にくるみを摂取することでヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染による疾患の予防が期待できるとする研究(*1)が、『Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition』誌に発表されました。本研究はカリフォルニア くるみ協会の支援によるもので、韓国のCHAがん予防研究センターの研究グループが実施したマウス実験によって、くるみを豊富に含む食生活が、ピロリ菌感染による疾患を予防できる可能性があるとする予備的なエビデンスが示されました。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/255716/LL_img_255716_1.jpg
くるみイメージ
本研究結果では、くるみ全体から生成された抽出物には胃腸内において保護たんぱく質の生成と抗炎症作用を促進する可能性があり、それがピロリ菌感染やピロリ菌が引き起こす悪性腫瘍を予防することが示唆されています。
ピロリ菌は世界で最も感染者数の多い細菌のひとつに数えられており、現在、ピロリ菌の感染者数は世界人口の半分以上に上るとされています。ピロリ菌感染は総じて社会経済的状況や衛生環境に関連するため途上国で多くみられ、感染経路は「ヒト-ヒト感染」または食べ物や水とされています。日本ではほかの先進国と同様、若年者の感染率は低いものの、高齢者になるにつれて感染率が上昇し、特に高度経済成長期に入る1950年以前に生まれた人の感染率は70~80%にのぼります。
ピロリ菌感染は、胃や小腸の潰瘍、胃がん、消化性潰瘍などの主な原因となっています。日本では胃がんの年間罹患者数はがんの中で2番目に多く、死因では3番目に位置づけられています。現時点でピロリ菌を除去するための治療法は確立されていますが、抗菌薬に対する耐性が強まっていることが懸念されています。耐性菌の増加に伴い、菌そのものでなく食生活を始めとした別の視点からのピロリ菌感染への対応策が模索されてきており、この研究もそのひとつです。
マウスによる実験でくるみが消化器がんのリスクを下げるとされたのは、今回が初めてではありません。『Cancer Prevention Research and Nutrients』誌には、食生活にくるみを取り入れることで、腸内細菌のバランスが変わって大腸での腫瘍発生が抑制されたり、がん細胞の増殖を促す血管形成が阻害されて大腸がんの進行が抑制されるといった動物実験結果が2件掲載されています。
動物実験は基礎的な情報を取得するのに非常に有用であり、その後のヒトを対象とした研究の基礎としても利用されています。くるみに関するこの研究を始めとする既存のエビデンスを考慮すると、ピロリ菌感染による炎症などの症状を和らげる食生活をしっかりとした臨床試験で検証することのメリットは、非常に大きいと考えられます。
本研究に対し、順天堂大学大学院腸内フローラ講座の特任教授である大草敏史先生は、「Fat-1トランスジェニックマウスでn-3系多価不飽和脂肪酸がピロリ菌感染による慢性萎縮性胃炎を軽減して、胃腫瘍の発生を抑制することが知られています。
今回の研究では、同様に、ピロリ菌感染マウスに対して高塩分飼料を与えて萎縮性胃炎を発症させ、n-3系脂肪酸を豊富に含むくるみを100mg,と200mg/Kgと飼料に添加投与することで、ピロリ菌感染による萎縮性胃炎やビランが軽減するか検討したものです。
その結果はくるみの添加投与で、粘膜の炎症マーカーが低減し、萎縮性胃炎が改善し、胃腫瘍形成が抑制されたという結果でした。今回の研究は動物実験でありますが、くるみがピロリ菌感染胃炎を軽減することで、胃がん発生を予防できる可能性を示唆している大変興味深い研究である。」と評価しています。
参考文献:
(*1) Park JM, Han YM, Park YJ, et al. Dietary intake of walnut prevented Helicobacter pylori-associated gastric cancer through rejuvenation of chronic atrophic gastritis. J Clin Biochem Nutr. 2021; 68(1): 37-50. doi:10.3164/jcbn.20-103 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcbn/68/1/68_20-103/_pdf/-char/en
Hooi JKY, Lai WY, Ng WK, et al. Global Prevalence of Helicobacter pylori Infection: Systematic Review and Meta-Analysis. Gastroenterology. 2017; 153(2): 420-429. doi:10.1053/j.gastro.2017.04.022
Fahey JW, Stephenson KK, Wallace AJ. Dietary amelioration of Helicobacter infection. Nutr Res. 2015; 35(6): 461-473. doi:10.1016/j.nutres.2015.03.001
Nakanishi M, Chen Y, Qendro V, et al. Effects of walnut consumption on colon carcinogenesis and microbial community structure. Cancer Prev Res (Phila). 2016; 9(8): 692-703.
Nagel JM, Brinkoetter M, Magkos F, et al. Dietary walnuts inhibit colorectal cancer growth in mice by suppressing angiogenesis. Nutrition. 2012; 28(1): 67-75.
加藤元嗣ほか.Helicobacter pylori感染の疫学.日本内科学会雑誌.2017年第106巻第1号 p. 10-15 Asaka M, et al. Relationship of Helicobacter pylori to serum pepsinogens in an asymptomatic Japanese population. Gastroenterology. 1992; 102: 760-766.
厚生労働省『令和元年(2019)人口動態統計』
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei19/index.html
厚生労働省『平成29年(2017)全国がん登録罹患数・率報告』
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000624853.pdf
【カリフォルニア くるみ協会について】
カリフォルニア州の約4,800軒のくるみ生産者と約100社のくるみ加工・販売業者から成る、カリフォルニア州食品農業局(CDFA)管轄の非営利団体です。1987年に設立され、生産者の課徴金と米国連邦農務省からの活動資金により、各種調査・研究、輸出相手国において商品の販売を伴わない啓蒙活動を行っています。海外では日本の他に韓国、中国、インド、トルコ、UAE、EU、ドイツ、スペイン、イギリスに代表事務所を置いています。対日活動は1986年にスタートし、その主な役割はカリフォルニア産くるみの需要拡大を目的とする宣伝、PR、販売促進、調査などを企画実施することにあり、高品質なカリフォルニア産くるみを広めるための様々なマーケティング活動を展開しています。
現在カリフォルニアくるみ産業界は世界で流通するくるみの約2/3を生産しています。
カリフォルニアくるみに関する健康情報、レシピ、または産業界に関する情報は、ホームページをご覧ください。
【カリフォルニア くるみ協会ホームページ】
日本語: https://www.californiakurumi.jp/
英語 : https://walnuts.org/
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