年輪年代データセットの公開について(平城京左京三条一坊一坪出土遺物)
@Press / 2024年12月19日 17時30分
0 今回の発表の要旨
年輪年代測定の根拠となる対象物の年輪幅時系列、年輪幅計測用画像等の年輪年代データについて、奈良文化財研究所リポジトリ上でデジタル公開し、関連分野の研究者や地公体文化財担当者等の幅広い利活用を目指す。
年輪年代学は、年輪の年代を1年精度で誤差なく明らかにすることができるものであるため、木造文化財の製作年代の考究等に有用である。そこで、年輪幅時系列の数値データだけではなく、その計測の根拠となる調査試料の高解像度の画像と、調査試料のどの部分を計測したかを示す低解像度の画像をあわせて公開することとした。
年輪年代が導出された試料の年輪幅時系列、年輪幅計測用画像等の年輪年代データをデジタル公開することにより、年輪年代測定の根拠を示すとともに、他者による追検証を可能なものとする上で非常に意義が高いと考えられる。
【公開ページはこちら】全国遺跡報告総覧
平城京左京三条一坊一坪出土遺物の年輪年代データセット - 文化財データリポジトリ - 全国遺跡報告総覧 : https://sitereports.nabunken.go.jp/ja/search-cultural-data-repository/item/74
画像 : https://newscast.jp/attachments/vuBuTiN942ZnWIdWBwYJ.jpg
1 現在までの経緯と状況
年輪年代学は、年輪の年代を1年精度で誤差なく明らかにすることができるものであるため、木造文化財の製作年代の考究等に有用であり、これまで考古遺物、歴史的建造物、木彫像等の様々な木造文化財について年代測定がなされてきた。
また年輪は、その樹木が生育していた時代・地域の気候や生態情報を記録するものであり、古気候学や古生態学的な潜在性を有している。
しかし、その根拠となる年輪年代データについては、研究上の事情やデータの特性(物理的な木材の輪切りである、といった形状の事情等)から、これまで日本では積極的な公開がなされてきていない。
2 近年の研究状況
従来、実体顕微鏡を用いて行われていた年輪年代学に関するデータ取得が、デジタル技術の発展に伴い、デジタルカメラやスキャナー等のデジタル機器を用いたデータ取得を主とするように変化してきている。
また、近年の研究を取り巻く環境も、公的資金による研究データの管理・利活用について、機関リポジトリへの研究データの収載を進めることが求められており(*1)、研究データのオープンアクセス化は今後の必須課題となっている(*2)。
3 今回の研究基礎データ公開の内容
年輪年代測定の根拠となる対象物の年輪幅時系列、年輪幅計測用画像等の年輪年代データについて、奈良文化財研究所リポジトリ上でデジタル公開し、関連分野の研究者や地公体文化財担当者等の幅広い利活用を目指す。
今回、公開するのは、2024年3月に出版された奈良文化財研究所学報第103冊に掲載された年輪年代に関するデータセットで、対象遺物18点の年輪幅時系列(西暦342~775年)と、年輪幅計測用および年輪幅計測線を示すデジタル画像147点。
年輪幅時系列の数値データだけではなく、その計測の根拠となる調査試料の高解像度の画像と、調査試料のどの部分を計測したかを示す低解像度の画像をあわせて公開することとした。これらをあわせた形で年輪年代データを公開する取り組みは、世界的に見ても先駆的といえる。
4 公開の意義
年輪年代が導出された試料の年輪幅時系列、年輪幅計測用画像等の年輪年代データをデジタル公開することにより、年輪年代測定の根拠を示すとともに、他者による追検証を可能なものとする上で非常に意義が高い。
5 今後の展望
初期的には年輪年代測定の科学的根拠を示す役割が高いものとなることが予想されるが、今後の進展により年輪年代学への注目度が高まり、当該分野への参入希望者の増加につながることが考えられ、ひいては木造文化財の保存・活用・継承に資するものになることが期待される。
また、年輪年代学の専門性の高い研究者だけでなく、文化財科学や博物館学、もしくは森林生態学や木材科学等の関連分野の研究者や、地公体文化財担当者等が公開された年輪年代データを利活用し、当該分野をより発展的に進展させることを可能としたい。
さらに、公開したデータを元に、深層学習等の研究が展開することによって、年輪の自動読み取り・計測等、飛躍的な研究の進展も期している。
*1「独立行政法人日本学術振興会の事業における研究データの取扱いに関する基本方針」(2023年10月23)https://www.jsps.go.jp/file/storage/open_science/basic_policy.pdf
*2 国立文化財機構ではこうした課題に対応するため、全国遺跡報告書総覧・文化財データリポジトリ https://sitereports.nabunken.go.jp/ja/search-cultural-data-repository や、Colbase https://colbase.nich.go.jp/ ・e国宝 https://emuseum.nich.go.jp/ などの取り組みを進めている。
これらが評価され、日本学術振興会「人文学・社会科学データインフラストラクチャー強化事業」の拠点機関に採択されている。
報道発表資料
報道発表資料はこちら : https://www.nabunken.go.jp/news/docs/20241219press.pdf
詳細はこちら
プレスリリース提供元:@Press
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