私立大の24%の学科で学費引き上げ 25年度 物価高が学費を直撃!実質値上げの傾向鮮明に 学費ナビ 第2回学費実態調査
@Press / 2025年1月21日 11時45分
全国の小学校から大学・専門学校までの学費を検索・比較できるサイト「学費ナビ」を運営している株式会社アイガー(所在地:東京都千代田区丸の内1丁目9-1 グラントウキョウノースタワー36F、代表取締役:木田 裕士、上場市場:TOKYO PRO Market、証券コード:9226)が、学費ナビに登録された2025年度の全国の私立大学3,801学科(577校)の学費を調査したところ、初年度納入額で全体の約22%、卒業までの総額で約24%の学科・大学で値上げした実態がわかりました。初年度納入金を引き下げた学科のうち約6割で卒業までの総額が前年度より上がるいわゆる「実質値上げ」となりました。この実質値上げの割合は前回調査(24年度)では3割に過ぎませんでした。
人件費等の上昇による物価高や財政安定化等を反映した私立大学の学費の引き上げ傾向が鮮明になりました。文部科学省の私立大学に関する調査では学費の平均値しか把握できません。しかも、私立大学の学費は国立大学とは違い大学・学部ごとに異なります。分かりにくいと言われる私立大学の学費の実態が把握できる調査です。学費ナビによる学費実態調査は昨年に次いで2回目となります。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/423076/LL_img_423076_2.png
学費の引き上げを実施した学科数
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/423076/LL_img_423076_3.png
表1
注)1%以上の値上げ・値下げが行われた学科を抽出しています。また学費のうち実習費、諸会費等(文部科学省調査の「参考」に該当)は集計から除外しています。
「学費ナビ」への登録年のデータ比較です。一部前年度の情報を掲載している大学もあり、実際の年度と異なる場合があります。
「学費ナビ」のデータから、2025年度の学費が値上げになっている学科・大学を調べると、初年度納入額では、844学科(107校)で、これは全体の約22%にあたります。
また卒業までの総額で見ると、906学科(116校)、全体の約24%となりました。前回調査の18%から6ポイント増えたうえ、初年度納入額を値上げした学科・大学を上回りました。
表1を見ると、「値下げ」が行われたのは88学科(22校)ありますが、その中の約6割にあたる53学科(11大学)では、総額が改定前より高い“実質的な”値上げとなっています。
<値上げの平均額(総額)は人文科学・社会科学系17万円台から理学・工学系21万円台>
総額で見た場合に、5%未満の値上げが620学科(90校)で16%、5%以上が286学科(41校)で8%となっています。
実際の金額は、値上げした学科の総額の平均は概算で、文系では人文社会系の学科が平均17万8,000円、社会科学系17万6,000円、理系では理学系21万1,000円、工学系20万2,000円となり、文系より理系の方で値上げ幅が大きいことが分かります。
画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/423076/LL_img_423076_4.png
学問系統別の値上げを行った学科数と最高・平均額
注)1学科で複数の学問系統に登録されている場合があります。
平均額は値上げを実施した学科を対象に[合計額/学科数]で算出しています。(文部科学省調査は加重平均で算出)
<値上げ要因>
大学の学費の引き上げについては、様々な要因が絡んでおり、具体的には以下のような理由が挙げられます。
【物価上昇】
インフレ率が上昇すると大学も運営コストが増加し、人件費、光熱費、通信費、教材費など、全てのコストが物価上昇に伴って増えるため、その分を学費に転嫁する必要が出てきます。
【財政の安定化のため】
大学は持続的な運営を続けるために財政の健全化を図る必要があります。大学の収入は学生からの学費収入と、国からの助成金で成り立っているため、入学者の減少が収入の減少に直結してしまいます。学生数の減少により、一人当たりの学費を上げざるを得ない状況になっている大学が増えているという現状もあります。
【教育環境の向上と学生サービス】
建物や設備の維持・管理に加え、ICTに関わるインフラの整備やアップグレード、教育のグローバル化による留学生の受け入れや、海外の大学との連携強化などにも多額の資金が必要となります。またキャリアサポート、メンタルヘルスケア、学習支援など学生へのサービスを充実させることも必要です。こうした教育環境の向上と学生サービスの拡充のために学費を値上げすることがあります。
2024年は、中央教育審議会(中教審、文部科学相の諮問機関)で国立大学の授業料の引き上げの提言や、東京大学の授業料の改定など、国立大学の学費に関するニュースが大きな話題になりました。それに対して私立大学の学費の値上げに関してはニュースとして取り上げられることも少なく、値上げが行われていることは分かっても、その実情を知ることは難しいかもしれません。
<分かりにくい私立大学の値上げの状況>
私立大学の学費は、国立大学とは異なり大学・学部ごとに異なります。学費の改定についても、いつ、どのくらいの増減を行われるかも大学ごとに異なります。
文部科学省の「私立大学等の入学者に係る学生納付金等調査」(※2)の「平均学費の推移」を見ると、下のグラフのとおり平成27年以降は毎年ゆるやかに上がり続けていることが分かります。
※2 文部科学省「私立大学等の入学者に係る学生納付金等調査結果について」
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/mext_02654.html
画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/423076/LL_img_423076_5.png
私立大学学部 平均額の推移
画像5: https://www.atpress.ne.jp/releases/423076/LL_img_423076_6.png
私立大学部 平均額の推移(表)
※ 総額は、[入学料]+([授業料]+[施設設備費])×4年間で計算した参考額
文部科学省「私立大学等の入学者に係る学生納付金等調査結果について」を元に作成(令和3年までは毎年、4年以降は隔年調査)
初年度納入額の令和5年度と前回調査の令和3年度を比較すると、その差額は8,201円(0.6%)の増額と、あまり変わっていないように見えます。しかしこの数字はあくまでも平均額のため、実際に値上げした大学を個別にみていくと大きな差があります。
また、上の表を見てお気づきになると思いますが、入学金は毎年下がっているのに対し、毎年納入が必要な授業料は値上げとなっています。これは初年度納入額が下がっていても、卒業までの総額は“実質的な”値上げとなっている場合が含まれていることを意味しています。
このように分かりにくい私立大学の学費の現状について、「学費ナビ」のデータから紐解くことができます。
画像6: https://www.atpress.ne.jp/releases/423076/LL_img_423076_1.jpg
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