ノロウイルス等の腸管感染に対する“ラクトフェリン”の抑制作用とメカニズムに関する最新研究 11月2日(月)~6日(金)に開催された「第12回国際ラクトフェリン会議」で発表した内容のご報告
@Press / 2015年11月11日 15時0分
森永乳業は、ノロウイルス等の腸管感染に対する“ラクトフェリン”の抑制作用とメカニズムについての最新の研究成果を2015年11月2日(月)より6日(金)までウェスティンナゴヤキャッスル(愛知県名古屋市西区)にて開催されました第12回国際ラクトフェリン会議にて発表いたしました。
※2015年10月27日 当社配信リリースにてご報告
本会議では、麻布大学獣医学部との共同研究で行った、ラクトフェリンとその消化物のマウスマクロファージ細胞におけるマウスノロウイルス増殖抑制作用および細胞死抑制作用や、名古屋大学農学部との共同研究で行った、ラクトフェリンの腸上皮細胞への取り込み機構の経時的観察が発表されたほか、当社からはラクトフェリンのヒト腸上皮細胞におけるインターフェロン・ラムダ(ウイルス増殖抑制物質)産生促進作用などを発表いたしましたので、これらを含め、関連演題の発表内容をご報告いたします。
(1) ラクトフェリンとその消化物はマウスマクロファージ細胞RAW264.7におけるマウスノロウイルスの増殖を抑制する(麻布大学・藤野 寛)※当社との共同研究内容
ヒトノロウイルスは培養細胞に感染させることが難しいため、マウスノロウイルス(以下 MNV)が代替ウイルスとして研究されている。過去の研究では、ラクトフェリン(以下 LF)がRAW264.7細胞におけるMNVの増殖を抑制することが報告されている。一方、経口摂取したLFの一部は胃で消化されることから、LFとLF消化物(以下 LFH)の混合物がノロウイルスの感染部位とされる小腸に到達すると考えられる。
今回、LFだけでなくLFHもMNVの増殖を抑制することが確認された。また、そのメカニズムとして、LFおよびLFHがMNVの増殖に必要な「脱殻」に関与する酵素(カテプシン L)を阻害する可能性が示された(下図)。
図 ラクトフェリンおよびラクトフェリン消化物の推定マウスノロウイルス抑制メカニズム
https://www.atpress.ne.jp/releases/80859/img_80859_1.jpg
(2) 腸上皮細胞におけるラクトフェリンの取り込み機構の経時的観察(名古屋大学・大島 健司)※当社との共同研究内容
GFP(蛍光タンパク質)で標識したLFを作製し、ヒト腸上皮細胞に作用させ、共焦点レーザー顕微鏡を用いてリアルタイム観察することにより、LFの細胞への取り込みと細胞内での動態を観察することに成功した。
また、LFが核まで移行していることが確認され、LFが腸上皮細胞の機能に対して何らかの作用を及ぼしている可能性が示唆された。
(3) ラクトフェリンがヒト腸上皮細胞HT-29のインターフェロン・ラムダ産生に与える影響(森永乳業・新光 一郎)
インターフェロン・ラムダ(IFN-λ)は、ノロウイルスやロタウイルスなどの腸管ウイルスに対する感染防御に関与する可能性のある生体物質として近年注目を集めている。今回、poly i:c(合成2本鎖RNA)刺激下でヒト腸上皮細胞にLFを作用させたところ、IFN-λの遺伝子発現とタンパク質産生の促進を確認した。
このことは、LF摂取による腸管での抗ウイルス作用メカニズムの一端を示唆するものと考えられる。
(4) ラクトフェリンとそのペプチドの抗ノロウイルス作用の可能性(森永乳業・織田 浩嗣)
これまでに報告されたLF及びそのペプチドとノロウイルスまたはその代替ウイルスに関する研究を総括した。
1) 細胞実験
LF及びそのペプチドは、ノロウイルスの細胞への付着を阻害する、細胞にウイルス増殖抑制物質であるインターフェロン・アルファ/ベータ(IFN-α/β)の産生を誘導する、細胞内でノロウイルスの脱殻を阻害する、の3つのメカニズムにより抗ノロウイルス作用を示す可能性が考えられている。
2) 動物実験
正常なマウスにLFを経口投与すると、ノロウイルスの感染部位とされる小腸において、IFN-α/βの遺伝子発現とタンパク質産生が促進することが報告されている。
3) ヒト試験
保育園児を対象とした試験では、LF配合食品の摂取(400mg/日、16週間)によりノロウイルス胃腸炎の発症率が有意に低下したことが報告されている。また、LF配合食品(100mg/本)を日常的に摂取している人を対象とした追跡調査では、摂取頻度が高い人ほど冬の間にノロウイルス胃腸炎と診断された人の割合が有意に低いことが報告されている。
(5) ラクトフェリンの小児領域における研究と30年間にわたる育児用ミルクへの利用(森永乳業・若林 裕之)
ラクトフェリン基礎研究の進展、および工業的生産の開始により、1986年、森永乳業は、世界で初めて育児用ミルクにウシラクトフェリンを添加した。その後、多くの臨床試験によりラクトフェリンの乳児への有効性、とくに感染症への防御効果が示されてきた。現在では、アジアを中心にラクトフェリンが育児用ミルクに添加されているが、今後、米国やヨーロッパでも利用されることが期待される。
■第12回国際ラクトフェリン会議について
国際ラクトフェリン会議は、1992年にハワイで第1回国際ラクトフェリン会議が開催され、今回で12回目を迎えます。日本での開催は、1999年に札幌で開催された第4回国際ラクトフェリン会議以来、16年ぶりとなっております。日本ではラクトフェリン研究が非常に活発に行われており、国際会議での参加者数・発表者数ともに世界でもトップクラスです。
なお当社は第1回会議から毎回参加しており、共同研究を含めて毎回5件以上の発表を行っております。
WEBサイト: http://plaza.umin.ac.jp/~lactoferin12/index.html
期間 : 2015年11月2日(月)~6日(金)
場所 : ウェスティンナゴヤキャッスル
(所在地:愛知県名古屋市西区樋の口町3番19号)
■補足資料
<ラクトフェリン>
人などの哺乳類の乳汁や唾液などに含まれるタンパク質で、感染防御作用や免疫調節作用など、さまざまな生理機能を示すことが知られています。中でも母乳、特に初乳に多く含まれており、抵抗力の弱い赤ちゃんを病原菌やウイルスなどの感染から守る重要な成分として考えられています。
<森永乳業のラクトフェリン配合商品開発の歴史>
当社では、母乳の機能に近い育児用ミルクの開発に取り組む中で、乳に含まれる“ラクトフェリン”の持つ働きにいち早く着目し、1960年代初頭より研究を重ねてまいりました。
1963年に“ラクトフェリン”に関する研究報告を日本で初めて発表、1986年には世界で初めて“ラクトフェリン”入り育児用ミルクを発売いたしました。
“ラクトフェリン”は牛乳(生乳)にも含まれていますが、熱に弱く、抽出が困難といわれていました。しかし、当社では、ラクトフェリンを本来の性質を保持したまま高い純度で抽出する技術と、変性しない殺菌技術の開発に成功し、育児用ミルクの他、ヨーグルト、機能性ミルクなどのラクトフェリン配合商品を発売してまいりました。
また、ラクトフェリンの働きに関する研究においても、他社に先駆けて多くの研究発表を行なっております。
<森永乳業ウェブサイト> http://www.morinagamilk.co.jp
<ラクトフェリン オリジナルウェブサイト> http://www.m-lf.jp/nv/
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プレスリリース提供元:@Press
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