【試乗記】「ラブレターになってしまいごめんなさい!」 新型「ケイマンS」に乗る

Autoblog JP(オートブログ) / 2013年3月30日 17時0分

【試乗記】「ラブレターになってしまいごめんなさい!」 新型「ケイマンS」に乗る


Gallery: 2014 Porsche Cayman S: First Drive Photos



昨年のLAオートショーでお披露目された新型ポルシェ「ケイマンS」に 試乗してきたのでご報告しよう。しかし最初に、この車は言葉や数字だけでは語れない特別な車だということをご理解いただきたいと思う。ケイマンのハンドルを握って筆者の五感が捉えたものをお伝えできるよう書き進めたいので、いささか長い文章にはなるが最後までお付き合いいただきたい。
新型ケイマンのエクステリアは当然のことながら新型「ボクスター」の流れを引き継いでいるが、先代モデルに比べるとテクニカルな面では様々な変更がなされている。パワーは向上し、車両重量は削減、環境性能も改善された。さらに、MT仕様でもシフトダウン時には自動的にエンジン回転を合わせてくれる機能が付いたり、初めて電動式パワー・ステアリングを採用したことなどによって、ケイマンは明らかに新世代に移行した。だが、ひとつ変わらないことがある。それはこのクルマが、市販車の中で最高のドライビング・カーの1台であるということだ。その理由をこれから説明していこうと思う。

ポルシェのエンジニアは先代に比べホイールベースを2.4インチ(約60mm)延長し、フロントのトレッドを1.6インチ(約40mm)広げた。その結果、全ての車輪が四隅に適切に配置されている。前後のオーバーハングが短くなっているため、全長は1.3インチ(約33mm)長くなっただけで済んでいるから、見た目で大きくなったとは感じる人は少ないだろう。それよりも最初に目を引くのは、サイドシルからエアインテークに掛けて大胆に抉られたドア・パネルだ。ポルシェではこれを「ダイナミック・リセス(力強い凹み)」と呼ぶ。ブラックにペイントされたサイド・インテークはミッドシップに搭載された6気筒ボクサーエンジンに空気を送り込む。















フロントの左右に開けられたエアインテークは、ケイマンSではボディーカラーに関わらずブラックだが、ベースモデルのケイマンでは、ボディーカラーと同色になる。逆にフロントスプリッターは、ケイマンはブラックのままだが、ケイマンSではボディ同色にペイントされる。またエキゾースト・テールパイプは、ケイマンでは楕円のシングル、ケイマンSでは丸型ダブルとなる。その他に大きな違いはない。ボクスター同様に左右のテールランプまで伸びるリアスポイラーは走行速度が120km/hを超えると自動的に上昇。ダウンフォースが40%増加する。

ウィンドスクリーンが先代に比べ、約4インチ(約10cm)前方に移動した結果、新しいケイマンはボクスターに無理やり屋根を取り付けたような冴えない印象を与えていない。クーペとオープンという大きな違いはあるが、ケイマンとボクスターが同じ遺伝子を持っているのは明白だ。ケイマンの開発に携わったエンジニアやデザイナーは違うというかもしれないが、同じような雰囲気を醸し出している。

実際に目のあたりにすると、ケイマンはゴージャスな車としか言いようがない。たくましくなった側面に新しくオプションとして用意された20インチ・ホイールを装着した姿は、これまでより成熟した印象を与える。純粋主義者達は異論を挟むかも知れないが、ケイマンとケイマンSは、「911」を含めたボルシェのラインナップの中でも最も美しい姉妹と言えるだろう。



























インテリアは、ほぼ先代と同じだが、新型のスポーツシートが標準で装備されているのが目を惹く。このスポーツシートは座り心地とサポートのバランスが取れている。特にサイドのサポート感が程良く、長距離ドライブでも締めつけが少ない。自分の家の椅子をトイレも含めてすべてこのシートに変えてしまいたいと思ったほどだ。標準装備のスポーツシートは、前後の位置と高さの調整は手動のアルカンターラを使ったタイプ。我々が試乗したケイマンSには電動調整機能がついたレザーシートが取り付けられていた。 販売される国の安全基準にもよるが、オプションでカーボンファイバー製のフルバケット・シートも選ぶことができる。これは履いているズボンが分子レベルでシャシーに固着されると感じるほど、しっかりとホールドしてくれる。それから室内ではエアベントのデザインが変更された。また、新型のラゲッジスペースは先代より0.5立方フィート(約14リッター)大きくなり、15立方フィート(日本公式サイトではフロントとリアを合わせて425リッター)となっている。さらに嬉しいことに、ホイールベースが長くなった分、足元のスペースも広がった。

シャシーに話を移すと、新型ケイマンはボディシェルの44%にアルミニウムを使用し、塗装前の重量は約103ポンド(約46.72kg)も軽くなっている。しかし、ねじり剛性は40%向上。ポルシェによれば、ボクスターの約2倍のねじり剛性で、911よりも高いという。ということは、ケイマンSは世界でも有数のねじり剛性を持ったモデルだということだ。














さて、気になるパワーだが、ケイマンは2.7リッター、ケイマンSは3.4リッターの水平対向6気筒エンジンを搭載。我々が試乗したケイマンSは、最高出力が325ps/7400rpm、最大トルクは37.60kgm/4500-5800rpm。 さらに感銘深いことに、この6気筒エンジンはリミッターが作動するまで回せば、タコメーターの針を7800rpmまで運ぶことができる。また、ベースは6速マニュアルだが、 7速のポルシェ・ダブルクラッチ式ギアボックス(PDK)搭載車も用意されている。ドライビングの手ごたえを感じたくてマニュアルを選んだドライバーも、今やスポーツモードを選べば自動的に回転合わせが行われるシフトダウンが楽しめる。

スポーツカーのエンジニアは、加速時のパフォーマンスの向上に全力を注ぐものだが、ケイマンSの開発チームは、減速においても同様に高いパフォーマンスを実現させている。ケイマンSはフロントブレーキにあの素晴らしい911と同じ対向4ピストン式のアルミニウム製モノブロックキャリパーを装備し、冷却効果が高い大型の13インチ(約33cm)のブレーキディスクを使用している。今回、ポルトガル南部の丘陵地帯、モトGPやF1のテスト走行でも使われるアルガルヴェ国際サーキットで2日間にわたってケイマンSを乗り回したが、クランプには何の問題も生じなかった。さらに、オプションでセラミックコンポジッション・ブレーキ(PCCB)も用意されている。過酷なモータースポーツを耐え抜いてきたこのブレーキシステムなら、公道での走行は"生涯問題がない"と言っていいかもしれない。しかも、ポルシェによれば、PCCBはブレーキシステムの総重量が標準のブレーキに比べ、52ポンド(約23.6kg)軽くなるという。

しかし、どんなに数字を並べたところで、実際にドライブをした感想に勝るものはない。新型ケイマンのシートに乗り込むと、一瞬の無駄な時間を浪費せずとも完璧なドライビング・ポジションが決まる。着座位置も申し分なく、フェンダーの先端以外はすべて見える(それだけ見切りがいいということだ)。キーを捻ると、ボクサー・シックスは吠えるような声を轟かせた後、スムーズなアイドリングに落ち着く。このエンジン音を聞いて、胸の高鳴りが感じられないような人がいたら、体調が悪いに違いない。すぐにも医者に診てもらうことを勧める。



一般道を走行中、PDKはほとんどシフトしたことが分からないくらい、滑らかなシフトチェンジを繰り返していた。減速時にはPDKが自動的にギアを切り離すコーストモードに入り、コースティング状態(エンジンとトランスミッションの接続が切り離された状態)で走行する。これによって、ガソリンを大幅に節約することが可能になった。また、オートスタート/ストップ機能がついているので、燃費効率もさらに向上している。オプションのスポーツクロノパッケージなら、さらに大胆な走りを手に入れることができる。ポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメントシステム(PASM)を装着した車両なら(走行モードをスポーツにすれば)、サスを固めのセッティングにすることも可能だ。また、オプションで装着できるスポーツエグゾーストシステムのサウンドは、最高にダイナミックだ。このケイマンSは、快適でありながら、実にワイルドな走りを体感させてくれる。

スロットルを全開にすると痺れるようなレスポンスがある。6気筒ボクサーエンジンは首の骨が折れるほどの加速をみせるわけではないが、エンジンがいよいよトルクを発揮し始めると蹴飛ばすように車体を前へ推し進める。ポルシェによると、ケイマンSは0-60mphが4.7秒(日本公式サイトでは、 スポーツクロノパッケージを装着時、0-100km/hが4.7秒)。最高速度は、175mph(日本公式サイトでは最高速度は283km/h)となっている。 ケイマンSが叩き出した、かの有名なニュルブルクリンクでの記録、7分55秒は、先代に比べて11秒速かったという。

ケイマンの実力を本当に感じられるのは、ワインディング・ロードに持ち込んだときだ。曲がりくねったアスファルトの上を走り始めると本気で忘我の境地の達してしまう。ケイマンのシャシーは自信を奮い起こしてくれるし、コーナーの度に後ろから囁く官能的なドイツ娘の声を耳にしていると、世界ラリー選手権に出場しようかと勘違いしてしまうほどだ。














ケイマンが電動式パワーステアリングを採用したと聞いて、胃が痛いとか言っていた人は、口を閉ざしておいた方がよかったようだ。このパワステはこれ以上望めないほど正確で、路面と充分なコミュニケーションが取れるだけの素晴らしいフィードバックを伝えてくれる。運転中にもし前輪の状態が分からないようであるなら、それはクルマのせいではない。

自分の好みのドライビングをしたいために、筆者はいままでオートマチックトランスミッションを避けてきたが、ポルシェのPDKだけは例外となった。どういうわけか、自分の望みどおりのギアを自動選択してくれるのだ。まるで私の頭の中に妖精が住みついて、ギアボックスに司令を出しているかのようだった。筋金入りのマニュアル車派の私だが、このパドルシフトが非常に気に入ってしまい、ドライビングを最高に楽しむことができた。

ポルトガル南部の風光明美な景色を後にして、いよいよサーキット走行となった。そこではポルシェがどんなふうにこのクルマを味付けしたかがすぐに明らかになった。このシャシーは信じられないほど寛容にチューニングされており、私のようなヘタレでも立派に周回をこなすことができる。少しプッシュすると、ケイマンは緩やかに見事なスライドを起こし、テールを沈めてコーナーを飛び出すように立ち上がっていく。強力なブレーキは酷使に耐え、ドラマもフェードも起こらず、信頼できるペダルの感触と素晴らしい路面への食い付きを変わらずに供給してくれる。この間には実際、911を追い掛けて取り分けハードに攻めたラップも含まれるのだ。



この試乗記が2014年型ケイマンSに対するラブレターのように見えたとしたら、それは否定できない。ただ、私は完全にほだされたというわけではない。ケイマンSは最高に魅力的ではあるが、試乗車のようなレベルのケイマンSを手に入れるためには、それなりのお金が必要となる。ざっと計算してみただけで、約9万ドル(約850万円)近くにはなるのだ。ケイマンのメーカー小売希望価格は5万2600ドル(日本での販売価格:約612万円)。ケイマンSにいたっては6万3800ドル(日本での販売価格:773万円)である。ちなみに、私が試乗したモデルは様々なオプションが付いているため8万8220ドル(約830万円)だった。この価格になると、「コルベット Z06」や、他にもAMG、M、CTS-Vなどの文字が付いた高性能車に手が届く。

果たしてそれらのクルマはケイマンS並みのハンドリング性能を持つか? 答えはノーだ。しかしそれでも充分とも言えるし、ケイマンSを遙かに凌ぐ強大なパワーが手に入る。

ケイマンSは非常に魅力的な車である。しかし、2日間たっぷりと乗り回した後でも、これは"買いだ"と言いきれないものがあった。ポルシェは素晴らしいクルマを作ったが、それに過給器は付けなかった。スポーツカーの価格について考えれば、いま、歴史上最も恵まれた時代に我々は生きている。より低価格でパワーのある選択肢は他にも溢れているのだ。この私に市場にある他のクルマではなくケイマンSを選ばせようとするなら、もっと甘い言葉で誘う必要があるだろう。

【基本情報】
エンジン: 3.4リッター6気筒ボクサーエンジン
パワー: 最高出力325ps 最大トルク272lb-ft(約37.60kgm)
トランスミッション: 7速DCT
0-100km/h : 4.7秒 (スポーツクロノパッケージ装着時)
最高速度: 175MPH(日本公式サイトでは時速281km)
駆動方式: ミッドシップエンジン後輪駆動
車両重量:2910ポンド(約1320kg)
座席数: 2
荷室容量: 15立法フィート(日本公式サイトでは、フロント:150リッター、リア:275リッター)
メーカー希望小売価格: 試乗車 $88,220(約833万円)

By Zach Bowman
翻訳:日本映像翻訳アカデミー

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