【試乗記】 「世界で最も心を奪われるクルマ」 シンガー社が手掛けたポルシェ「911」

Autoblog JP(オートブログ) / 2014年3月1日 17時0分

【試乗記】 「世界で最も心を奪われるクルマ」 シンガー社が手掛けたポルシェ「911」



異常に暖かい南カリフォルニアの秋の夕暮れ。全ての窓を閉め切った車内で私は象徴的なモモ製のステアリングホイール「プロトティーポ」を握り、1時間あまり起伏の激しい渓谷を攻めながら感極まっている。心臓は胸から飛び出しそうなほどバクバクと脈打ち、息は荒く、両手はじっとりと汗ばんでいる。私はすっかりこの素晴らしいマシンの虜になってしまった。
約4年もの間、辛抱強く待った末に、筆者はついにクラシックのポルシェ「911」を運転している。シンガー・ビークル・デザイン社がレストアとモディファイ、チューニングを施した911だ。筆者を包み込むこのクルマは、現在の状態でポルシェの組み立てラインから出たことは一度もない。しかし、その外観は時を経ても色あせず、品質は息をのむほど素晴らしく、ドライビングダイナミクスは他の追随を許さない。

クルマのエンスージアストである筆者にとって、このクルマは世界で最も心を奪われるクルマだ。



このポルシェ911を作り上げた立役者は、ロブ・ディキンソ氏だ。彼はレンチを握って生まれてきたわけではない。20代から30代にかけて、英国のオルタナティブ・ロックバンド「キャサリン・ホイール」でボーカルを務めていた。だから「シンガー・ビークル・デザイン」というキャッチーな社名になった理由もうなずけるだろう。だがそれは何十年も前の話だ。

筆者はロサンゼルスにある同社のショップにお邪魔し、クラシックのポルシェ911と思われる4台のモデルを眺めている。その4台はそれぞれレストアの段階が異なり、シャッタードア付近に置かれたモデルは、レストアが完了した顧客のクルマで、太陽の下で走らせてくれと懇願しているようだ。日の光から一番遠いショップ後方では、下塗りされただけのむき出しの車体が粉体塗装されたスチールの台車の上でじっと待っている。前回、1年以上前に筆者が同ショップを訪れたとき、ここには1台しかなかった。だが、今では組み立てラインができている。シンガー社はとても長い道のりを歩んできたのだ。

ディキンソン氏が先頭に立って舵を取るシンガー社は、作品となるクルマ一つひとつに並々ならぬ努力ときめ細やかさを注ぎ込んでいる。ナットからステッチ、グロメット、ビスに至るまで、手が入れられないものは1つもない。完璧で徹底的なレストレーションはあらゆる箇所に至る。Autoblogではこれまでに何度もクルマの試乗記をお届けしているが、今回はより深くお伝えする必要がありそうだ。

Autoblog JP

トピックスRSS

ランキング