球数制限「7日で500球」で子どもの体は守られる?

ベースボールキング / 2019年9月25日 18時35分

9月20日に開かれた日本高野連の「投手の障害予防に関する有識者会議」の第3回会合では、「投球数は7日間で500球を上限とする」ことなど、具体的な方向性が示された。その中で「7日で500球」の意味するものについて考えたい。




■「7日で500球」は異常な数字


「7日で500球」は、数字だけを見れば「球数制限を実施した」とは言えない。
アメリカのピッチスマートでは、高校生に相当する17-18歳の1日の球数の上限は105球。76球を超えると最低でも中4日の休養が求められる。7日間で投げることができるのは、最大でも210球だ。
NPBの先発投手は、1週間に1回の登板が一般的になっている。7日で120級程度。ごくまれに週2回先発登板する投手もいるが、それでも7日間で200球を超える投手はいない。
またMLBでは、先発投手は中4~5日程度の間隔で投げるが、今季、ア・ナ両リーグで最も多くのイニング数を投げているナショナルズのマックス・シャーザー投手でも、7日間での最大の球数は5月6日~11日の227球だった。
体が完成されたプロ野球選手でも、7日間で250球投げる投手はほとんどいないのに、日本の高校野球はその倍の球数を投げることができる。これは依然として異常な数字だ。

■実質的な「現状追認」


今夏の甲子園で最も多くの球数を投げたのは、履正社の清水大成が594球、これに次ぎ星稜の奥川恭伸が512球を投げたが、7日間に限定すれば履正社清水は327球、星稜奥川は379球だ。両投手ともに7日間で3回戦、準決勝、決勝に先発したが、準々決勝は他の投手に任せている。
過去5年間の夏の甲子園で「7日で500球」を超えたのは、2018年夏、金足農の吉田輝星が3回戦164球、準々決勝140球、準決勝134球、決勝132球の580球を投げた例があるだけだ。

実質的に「7日間で500球」は、甲子園に出場する様なレベルの高校の場合「現状追認」と言っても良い形だ。
ピッチスマートなど、海外の「球数制限」と比較すれば、その差はあまりにも大きいと言わざるを得ない。

■それでも投手の酷使の歯止めにはなる


では、今回の有識者会議で示された「方向性」は、まったく意味がないかというと、そうとも言い切れない。

今夏の甲子園で、個人が1試合で投げた最大投球数は立命館宇治の高木要が2回戦で投げた170球だったが、これだけの球数を投げてしまうとこれに続く7日間で500球を超える可能性が出てくる。指導者が球数を見て、投手を交代させるなど、調整をするケースも出てくるだろう。

また、当初、有識者会議では「球数制限は、甲子園の準々決勝以降に適用する」方向性だと報じられたが、今回の有識者会議で規制の範囲は「日本高野連主催の全国大会(甲子園など)だけでなく、各県高野連主催の地方大会、さらに軟式野球にも及ぶ」ことが明らかになった。

今夏の地方大会では、秋田県大会で、金足農の1年生の山形琉唯が、タイブレークも含めて233球を投げるなど、200球前後の球数を投げる例が、各地で見られた。投手の投球過多は、甲子園よりも地方大会の方が深刻なのだ。
「7日で500球」という規制は、あまり報道されることがない地方大会での投球過多を抑制するうえで、一定の効力があると考えられる。

また、有識者会議は、甲子園、地方大会の「日程」の問題にも言及するとされる。甲子園、地方大会ともに、現状では「7日で4試合」が組まれているが。これを3試合以下にすることで、登板間隔が開いて投手の負担は軽くなる。
「球数制限」と「登板間隔」は、投手の健康を守るうえでは「車の両輪」のようなものだ。有識者会議が投手の健康を守るために、試合間隔の改善に言及したのは評価できる。

さらに言えば、全国の高校野球指導者がこれによって「球数」を意識することも大きい。これだけ「球数制限」が大きな話題になっていても、投手の球数に無関心な指導者もいるのだ。こうした指導者が「球数」についての意識を持つことの意義も大きい。

■今後、詰めるべきこと


「7日間で500球」という数字の根拠は、2005年に「日本臨床スポーツ医学会学術委員会」の「青少年の野球障害に対する提言」として示された、

“全力投球数は,小学生では1日50球以内,試合を含めて週200球をこえないこと。中学生では1日70 球以内,週350球をこえないこと。高校生では1日100球以内,週500球をこえないこと。なお,1日 2試合の登板は禁止すべきである”

だと思われる。この「7日間で500球」は、「練習、試合での全力投球」だった。本来ならばブルペンでの投球練習も含めての数字であるべきだ。このあたり、有識者会議でさらに詰めてほしいと思う。

さらに「7日間で500球」は、春夏の甲子園や地方大会、春季大会、秋季大会などの公式戦だけではなく、練習試合にも適用されるべきだ。
今、有力校は公式戦も含めて年間100試合近い試合をこなしている。こうした練習試合での球数も規制しないと、まったく意味はない。

有識者会議は、11月に日本高野連に提言を行うが、それまでにそういう詳細もしっかり詰めて「ざる法」にならないようにしていただきたい。
(広尾晃)

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