ネットの誹謗中傷、「迅速な被害回復」と「匿名表現の自由」をどう両立すべきか 丸橋透教授に聞く

弁護士ドットコムニュース / 2020年8月4日 9時54分

誹謗中傷関連でも、わずかながらですが、侮辱発言について限度を超えたものなど任意で開示できる局面はあります。

――裁判手続きを簡素化しすぎると弊害もあります。具体的にはどのような方法が考えられるのでしょうか。

SNSなどのコンテンツ共有事業者とアクセスプロバイダに対し、裁判所が一つの裁判手続き内で順番に指示をしていくイメージではないでしょうか。

まず、コンテンツ共有事業者に対して、アクセスプロバイダ側で特定できるのに足りる情報を出させる。それを基に、アクセスプロバイダに保全させ、発信者の特定作業を行わせる。その上で発信者と連絡が取れるのであれば、アクセスプロバイダが発信者に意見聴取することになると思います。

それは、コンテンツ共有事業者側がアクセスプロバイダに対し訴訟告知(民事訴訟法53条)し、訴訟に参加してもらうような構造を非訟手続で実現することになるのでしょう。

今は、アクセスプロバイダが何者であるかという情報すら通信の秘密にかかる可能性がある、という問題があるので、そこは解消しないといけません。発信者の権利を侵害しないように設計することは十分にできると思います。

●プロバイダの任意開示をどう進めるか

――名誉毀損についても、プロバイダ責任制限法発信者情報開示関係ガイドラインを手厚くすることで任意開示が進められるのでしょうか。

はい、どういう時に任意で開示していいのか、このガイドラインでもう少し手厚く考え方を整理することはできると思います。裁判例もだんだん蓄積して来ており、この3、4年で判例データベースへの収録件数も急増しました。さらに判例分析をすることで、もう少しはっきりする部分もあるのではないでしょうか。

一方で、ただ、ガイドラインだけで乗り越えられる部分と乗り越えられない部分があります。アクセスプロバイダ側は、通信の秘密の侵害からの免責がないと、どうしても開示を躊躇してしまいます。過失により、裁判外で開示した場合には、通信の秘密の侵害に係る刑事責任を問われないことをガイドラインに明記した方が良いと思います。

実際、自分が実務をやっていた時に、特にこの部分を気にしていたわけではありませんが、権利侵害の明白性があると信じて開示した場合、通信の秘密の侵害罪に問われないとはっきりさせるだけでも前進するのではないでしょうか。

●発信者の意見、どう反映する?

――丸橋教授は、2006年から17年までニフティの法務部長を務めていましたが、発信者情報開示請求の実務で気をつけていたことはありますか

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