ネットの誹謗中傷、「迅速な被害回復」と「匿名表現の自由」をどう両立すべきか 丸橋透教授に聞く

弁護士ドットコムニュース / 2020年8月4日 9時54分

そうすると、個人による情報発信とマスメディアの編集作業が入った情報発信の間の仕組みについて、価値がないという判断を我々国民がするのか、ということが問われてきます。

――不適切な内容の投稿について、プラットフォームの仕様で解決できるものでしょうか。

確かに、プラットフォーム事業者だからできることはたくさんあります。例えば、プラットフォーム事業者各社はたくさんの投稿を処理するのにAIを用いた自動検知機能を活用して、スクリーニングをしています。ただ、それはそれで、良い面と悪い面があります。

各社が総務省のプラットフォーム研究会で発表した誹謗中傷等への対策状況を見ると、ユーザーから指摘される前に削除しているものもあります。

発信者が自分の信ずるところを発信し、自分で発言の責任もちゃんと取るつもりだったが、そもそも日の目をみないーー。これは、新聞やテレビの読者や視聴者参加コーナーに採用されず、伝わらなかったというのと同じなわけです。

会社として、ユーザーと一体となって世の中に対して積極的に意見を出していくというのは、まさにメディアですよね。全てのユーザーの発言を自分ごととして扱うとするのは、それはそれで構わないと思います。

しかし、前もった削除が増えれば、被害者救済と個人の表現の自由に配慮するこれまでのプロバイダ責任制限法はなんだったのか、ということになります。

また、アーキテクチャによる言論空間の支配という問題もあります。プラットフォーム事業者が表現内容に直接関わる仕様を決めていいのか。最近は、リツイートの仕様から著作者人格権侵害が認められた裁判例、そして、ツイッター内部の検索機能を重く見るRT判決も出ています。

検索事業者について、「忘れられる権利」を巡るグーグルの最高裁決定(平成29年1月31日)は、「現代社会においてインターネット上の情報流通の基盤として大きな役割を果たして」おり、安易に検索結果の削除をしてはいけないとしています。

ただ、そんなに大層なものなのか、個人的には疑問に感じています。例えばサジェスト機能のように、情報発信の信頼性をゆがませてしまうようなものもある。あれはユーザーの利便性のために出しているもので、それを「インターネットの表現の基盤」というのは変だと思います。

検索事業者にせよプロバイダにせよ、加工せずできることがどこまでなのか、法制度としての限界を探るのが健全だと思います。例えば、ヘイトスピーチや児童ポルノの削除については、だいぶ相場観がはっきりしてきています。もちろん、規約による対応でできることは原則としてやって良いと思います。

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