ネットの誹謗中傷、「迅速な被害回復」と「匿名表現の自由」をどう両立すべきか 丸橋透教授に聞く

弁護士ドットコムニュース / 2020年8月4日 9時54分

――諸外国では、違法コンテンツに対し、プラットフォーム事業者に厳しい対応措置を求める法律も規定されています。

ニュースポータルのコメント欄に関する欧州人権裁判所の裁判例があります。エストニアのデルファイというニュースポータルで、攻撃的で罵倒するようなコメントに対して、サイト側の責任を認める判決です。

ニュースポータルなんだから、たとえテキストスクリーニングしていたとしても、それだけでプロバイダのような扱いにはならない。ニュースポータルとして責任を取ってねという内容です。

たとえば、ヤフーニュースのコメント欄は、機械学習による対策をおこなっていますが、それは当たり前です。なぜなら、ニュースメディアだからです。ユーザー投稿を許している以上、最終的にメディア側が責任を取らなければいけない内容であり、それをユーザーだけの責任であるかのような言い方をするのはおかしいです。

一方、ニュースメディアとは言えないプラットフォームについては、ドイツが違法な投稿の削除を大規模事業者側に義務づけているなど、ヨーロッパはコンテンツをコントロールする方向性にあります。ただ、フランスの憲法裁判所は、プロバイダにヘイトスピーチ等の24時間以内の削除義務を課すのは違憲との判決を出しています。

では、日本はどの辺りを目指すのか。ヘイトスピーチ規制の一環として、故意に削除しないプロバイダに罰則を課して実効性を担保するというのは、実態がひどくなれば、議論の遡上に載せてはいけないほどではないと思います。

●今後の議論のポイントは

――研究会は「中間とりまとめ案」に対するパブリックコメントを受け、年内に最終報告がまとめられる予定です。今後の議論のポイントはどのような点ですか。

ログイン情報は今後考え方の整理をし、法令改正も必要かもしれません。新しい裁判手続きについては、発信者の意見は今まで以上に反映しやすくするという方向性だと思います。すでに定型化している任意での発信者情報開示は、より広くおこなえるよう目指すべきだと思います。

日本では匿名表現の自由があり、現在は、完全な匿名ではないけれども半分匿名状態で自由な情報発信がなされています。

プロ責法の考え方はその価値を認めた上で、被害が出るものについてどの程度通信の秘密を犠牲にして救済するか。それの均衡点が、権利侵害の明白性との位置づけです。ですから、権利侵害の明白性を取っ払うという議論は、ありえないと思います。

【プロフィール】丸橋透(まるはし・とおる)。明治大学法学部教授。京都大学法学部卒、コーネル大学ロースクール修了。ニューヨーク州弁護士。富士通法務第一部長、ニフティ法務部長などを経て、2018年4月から現職。研究分野は情報法、サイバー法。共著に『インターネットの法律問題-理論と実務-』(新日本法規出版)、『ITビジネス法入門—デジタルネットワーク社会の法と制度』(夏井高人監修・TAC出版)など。

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