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企業の退職勧奨、「パワハラだ」と労働者に訴えられる新たなリスク

弁護士ドットコムニュース / 2021年9月25日 9時37分

ただ、時期が来たら再度退職勧奨をやると思います。退職勧奨を重ねて、それでも応じなかったら最後は解雇を検討します。証拠が蓄積され、裁判で勝てると確証できれば、ハードルが高くても解雇に踏み込みます。

――必要性と相当性さえあれば、企業は安心して退職勧奨ができるということでしょうか。

企業が注意しなければならないのは、場合によっては退職同意が有効ではないと、裁判所によってひっくり返されるリスクがあるという点です。

過去にあった山梨県民信用組合事件では、真摯な同意があったかどうかについて、「客観的で合理的な理由」という基準が用いられました。この事件は、労働条件の不利益変更について、労働者の同意が有効かどうかを判断するものでしたが、最近では退職合意に関しても使わるようになっています。

この基準の方が、民法に規定されてある詐欺や錯誤といった意思表示の瑕疵の主張よりも労働者にとって使いやすいといえます。

つまり、単なる説得による退職だけでは、真摯な合意がなかったと裁判所が判断してしまい、労働者が守られる場合があります。退職勧奨する際は、企業も多少譲歩して退職金に上乗せをし、客観的に労働者も同意するだろうという状況を作る必要があります。

●解雇無効の労働契約解消金制度、企業側にとっては使いづらい

――企業が解雇に踏み込んだ場合の新たな制度として、解雇無効の場合の労働契約解消金制度が議論されています。これは、裁判で解雇が無効だと判断された場合、労働者に金銭を支払うことで労働契約を終了させることができる仕組みです。退職勧奨が、解雇の「前」の話だとすれば、解決金制度は解雇の「後」の話だともいえます。議論が停滞している印象もありますが、制度を導入すべきでしょうか。

現状の方向性について、私は消極的です。

現在検討されている制度は、解雇無効を前提に、労働者が労働契約解消金請求を申し立てる2段階の仕組みです。つまり、労働者が申し立てないと企業側から主張できない制度になっているのです。

企業側にとって使いづらいですし、どれだけの金額を支払わなければならなくなるのか不明確です。裁判所は、一定の基準をできていない制度には消極的と漏れ伝わっています。この態度に関する情報は、私が労政審議会労働条件分科会公益代表委員に居た当時、最初の労働契約法制定の際の審議でも伝わっていました。

外国ではこのような制度があります。しかし、日本では、企業に対して高額の支払いが命じられることもあるので、商工会議所出身の委員を中心に、中小企業が反対しているのも理解できます。

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