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熱海土石流、行政の責任は? 十年前から盛土の「危険性」認識しても処分見送り

弁護士ドットコムニュース / 2021年10月22日 10時31分

そのうえで、その時点において是正措置命令を発令すべきであったにもかかわらず、これをおこなわなかったとして、自治体の規制権限の不行使を違法と認めました。

●「不行使の違法性」が認められる可能性は高い

ほかにも類似する事件として、広島地裁平成24年9月26日判決があります。これは自治体が産業廃棄物最終処分場への土砂搬入による盛り土の崩壊の危険性を認識していながら、必要な措置を取らなかったため、土砂崩壊により死傷者を出した事件です。

裁判所は、自治体の規制権限について、違法な宅地造成工事がなされている場合には「近接する住民の生命、身体に対する危害を防止することを目的として、できる限り速やかに、適時にかつ適切に行使されるべきである」と判示しました。

そのうえで、崩壊事故発生までの1年4カ月にわたって措置を取らなかった自治体の不作為について、違法と認めました。

これらの裁判例と比較すると、熱海市は「10年以上も前」から盛り土の危険性を認識していたというのですから、行政の規制権限の不行使の違法性が認められる可能性は極めて高いといえます。

●ただし、「相当因果関係」も認められる必要がある

ただし、国家賠償請求訴訟も、不法行為による損害賠償請求がベースですので、行政の不作為によって、住民の死傷などの結果が発生したこと、いわゆる「因果関係」が認められることが必要です。

不作為というのは、期待されていた行為をしないという消極的な態度なので、実際に生じた事故との間の因果関係を認めるためには、「あのとき、期待されていた行為をしていれば、あの事故は防げたよね」(これを仮定的因果関係といいます)といえることが必要です。

さきほどの広島地裁の判決では、崩壊事故によって崩壊したのが、まさに搬入された土砂のみであったことから、自治体が規制権限を行使していれば、土砂崩壊事故の発生は防ぐことができたとして、損害との間の因果関係が認められました。

一方、横浜地裁の判決では、是正措置命令を発令して是正工事をさせていたとしても地中に浸透する雨水の量の関係もあり、それだけでは崖崩れの発生を防ぐために十分なものであったと認めるに足りないと判断され、因果関係は否定されてしまいました。

これらの裁判例を見ると、盛り土とは別に、ほかの要因もあいまって崩落事故が発生した場合には、因果関係が否定される場合もあるということがわかります。

結論として、熱海市の土石流災害では、1つ目の論点の「不作為の違法性」は認められやすいと思われます。そして、2つ目の論点である「不作為と損害との因果関係」については、崩落の原因が盛り土のみであり、ほかの要因がないといえれば、認められることになるでしょう。

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