20年前に借りた本を「返せ」と言われた・・・「もう時効だよね」と拒否できる?

弁護士ドットコムニュース / 2014年5月4日 18時20分

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「20年ほど前に借りた本の返却を請求されましたが、返還義務はありますか?」。そんな内容の質問がネットの相談サイトに投稿されていた。本の借主としては、「いまさら返せと言われても困る」という気分なのだろう。

法律には「時効」という制度があって、お金を貸した人が何もしないで放っておくと、時間の経過によって、「お金を返してほしい」と請求する権利が消滅してしまうとされている。本を借りた場合も、時効のおかげで、借主は返さなくてよくなるのだろうか。石井龍一弁護士に聞いた。

●所有権は「消滅時効」にかからない

「ひと口に時効といっても、実は、2つの種類があります。一つは、時間の経過によって権利を取得できる『取得時効』。もう一つは、時間の経過によって権利がなくなってしまう『消滅時効』です」

こう石井弁護士は切り出した。では、本を誰かに貸した場合も、一定の時間の経過すると、「本を返してくれ」という権利がなくなってしまうのだろうか。

「いいえ。自分で買った物に対する『所有権』は、どれだけ時間が経過しても『消滅時効』にかからないとされています。したがって、自分の本を貸した場合は『消滅時効』は問題となりません。

その場合に問題となるのは、借りた側に『取得時効』が成立するかどうかです」

では、取得時効が成立するのは、どんな場合だろう?

「通常、『取得時効』は、自分の物として20年間持ち続けることで成立します。『取得時効』の成立により、20年間持ち続けていた者が新たに所有権を取得します。一方、もとの所有者は所有権を失うことになります」

●「取得時効」が成立するための条件とは?

本を20年間、借り続けていれば、取得時効が成立するのか。

「実は、ただ借りているだけでは、『自分の物として』持ち続けていたとは言えないので、取得時効は成立しません。そう言えるためには、所有者に対して『この本は今からは私のものだ!』とはっきり宣言しておく必要があります。でも、そんな宣言をされたら所有者としては放っておくことはないでしょうね」

そうなると、本を借りている場合に取得時効が成立することはほとんどないといえそうだ。

「取得時効が成立していなければ、貸し主はその本の所有者として、本の返還を請求することができます」

このように石井弁護士は述べたうえで、次のように注意をうながしていた。

「法律の理論としては、これまで説明したとおりですが、もしも『返せ・返さない』のトラブルがこじれて裁判になった場合、所有者はその本が自分の所有物であることを証明する必要があります。この証明に失敗すると、裁判に負けてしまうおそれがあるので、注意が必要です」

(弁護士ドットコム トピックス)

【取材協力弁護士】
石井 龍一(いしい・りゅういち)弁護士
兵庫県弁護士会所属 甲南大学法学部非常勤講師
事務所名:石井法律事務所


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