日本一ひどい悪人に選ばれた「明智光秀」 裏切り者と呼ぶのは「名誉毀損」でないか?

弁護士ドットコムニュース / 2014年8月13日 14時35分

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日本で一番の悪人は「明智光秀」だった――。女性向けサイト「マイナビウーマン」が、「日本史上、一番ひどいと思う悪人は誰か」とユーザーにたずねたところ、織田信長を討った明智光秀が24.8%で堂々の一位を飾った(有効回答数452人)。

「裏切り者というイメージだから」「ドラマでいい描かれ方をしているのを見たことがない」と散々な評価だ。たしかに、明智光秀は歴史ドラマでも「裏切り者」として描かれることが多い。

ただ、歴史上の人物とはいえ、実在した人間を「悪人」呼ばわりするのは、名誉毀損にならないのだろうか。また、今年1月の報道によると、明智光秀の子孫が講演で「謀反人のレッテルが嫌でしかたなかった」と述べているが、子孫に対して「光秀は謀反人」と言うことはどうなのか。西口竜司弁護士に聞いた。

●死者に対する「名誉毀損罪」はあるが・・・

「歴史上の人物に関する評価には様々なものがあります。とりわけ、本能寺の変の実行者である明智光秀については、日本史上最悪の『裏切り者』といったレッテルが貼られています。

他方、明智光秀が領地としていた丹波地方の人々は今でも明智光秀を『名君』と称えています」

見方によって様々な評価があるのが、歴史の面白いところだ。では、「悪人」のレッテルを貼ることは、法的に問題ないのだろうか。

「通常の感覚からすれば、刑法上の問題が出てくるはずがないと思うでしょう。しかし、刑法230条2項には少し変わった規定があります。それは『死者の名誉毀損罪』です。

『死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない』

このように定められています。逆にいうと、虚偽の事実を示して、死者の名誉を毀損した場合は、罰せられる可能性があるということです。

これは、死者の名誉を保護する規定であり、死後においても正当な評価をおとしめられないよう、利益を保護するものです」

●子孫に対する名誉毀損が認められる可能性も

では、明智光秀の場合はどうなるのだろうか。

「明智光秀が『悪人』と書かれたとしても、社会が一般的に『謀反人』という評価を与えているわけですから、『虚偽の事実』を示したとは言えないと思います。刑法上、処罰の対象にするのは難しいでしょう」

なるほど、本能寺の変で謀反を起こしたこと自体は史実とされているから、名誉毀損とはいえないようだ。ただ、子孫は「謀反人の一族だ」と言われることを我慢し続けないといけないのだろうか。

「刑事上の責任とは別に、『社会的に受忍の限度を越えて』いるような内容の記事を書かれた場合、遺族の名誉侵害として、不法行為に基づく損害賠償請求が認められる可能性はあります。

今後、このような問題も出てくるのではないかと思います」

本人ではなく、子孫に関しては、別の法的問題が生じる可能性があるようだ。歴史上の人物の評価は時とともに変化するものだが、はたして、明智光秀が見直される日は来るのだろうか。

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
西口 竜司(にしぐち・りゅうじ)弁護士
2007年弁護士登録。知財、経済法事件など企業法務案件が専門だが、高齢者事案を中心に一般民事事件も広く取り扱っている。日本商標協会会員。辰已法律研究所専任講師。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/

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