鉄道の「人身事故」で賠償請求 遺族が取りうる対応策とは?

弁護士ドットコムニュース / 2013年4月12日 16時23分

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首都圏のどこかの鉄道で、毎日のように起きている鉄道自殺による「人身事故」。乗客にとっては電車遅延をひきおこす困った出来事ともいえるが、亡くなった人の家族にしてみれば、肉親を突然失う悲しみは計り知れないだろう。しかし、現実には悲しんでばかりもいられない。関係先への連絡や葬儀の手配に追われるだけでなく、鉄道会社から損害賠償を請求される可能性があるからだ。

弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」には、子どもが電車にはねられて亡くなった後に、鉄道会社から損害賠償を請求された母親の相談が寄せられている。会社からの請求額は90万。「とても払えない」と伝えたところ、50万に減額されたというが、精神的なショックがさめやらぬなか、戸惑いを隠し切れない様子だ。

このように、もし万が一、家族の誰かが鉄道で自殺をはかった結果、鉄道会社から損害賠償を請求された場合、何かとりうる対応策はあるのだろうか。佐藤健宗弁護士に聞いた。

●鉄道会社からの賠償請求は常に行われるわけではない

「人身事故とは、正しくは『鉄道人身障害事故』と言い、省令である鉄道事故等報告規則に定めがあります」

このように述べたうえで、佐藤弁護士は、次のように説明する。

「人身事故のほとんどは自殺(最近は自死という表現もよく見るようになりました)ですが、自殺以外でも、誤って駅のホームから転落して列車と接触して死傷したものも含まれます」

では、人身事故が起きると、どうなるのだろう。

「実際に人身事故が発生した場合、鉄道会社から被害の賠償請求が行われることがあります。その内容は、列車の修繕費、振替代替輸送の費用、遅延により払い戻された特急料金、職員への手当などです。

鉄道会社の被害額がどの程度になるかは人身事故が与えた影響によりかなり差が出てくると思います。

ただし鉄道会社からの賠償請求は常に行われているとは限りません。また民事訴訟になることはほとんどないようです(かつてメディアにも協力してもらって、大きな裁判所の民事訟廷の受付で調べてみたことがあります)」

●対応策として考えられる「相続放棄」

もし鉄道会社から賠償請求されたら、何か対応策はあるのだろうか。

「鉄道会社から賠償請求があった場合、対応策として相続放棄が考えられます」

相続放棄とは、家庭裁判所に申請することで、すべての借金や財産の相続を放棄する手続きのことだ。もし賠償額が資産を上回るような場合には「相続放棄」したほうがいいことになるが、相続開始および自分が相続人になったことを知ったときから、「3か月以内」に手続きを行わないといけないので、注意が必要だ。

さらに、佐藤弁護士よると、「人身事故で亡くなった方の名義の不動産などがある場合など、相続放棄ができない場合もあります」ということだ。「その際には、鉄道会社と誠意をもって交渉する必要があります」。

自分の家族が人身事故の当事者になる可能性なんて、あらかじめ想像したくもないはずだ。ここでは「もし万が一」ということで対応策を考えてみたが、根本的には、そのような事故が極力起こらないような方策が求められているといえるだろう。

(弁護士ドットコム トピックス編集部)

【取材協力弁護士】
佐藤 健宗(さとう・たけむね)弁護士
関西大学社会安全学部客員教授、TASK(鉄道安全推進会議)事務局長、国土交通省運輸安全委員会業務改善有識者会議委員
事務所名:佐藤健宗法律事務所


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