「危険ドラッグ」吸ってナイフで切りつけたが「覚えてない」 無罪の可能性がある?

弁護士ドットコムニュース / 2014年12月5日 13時50分

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東京都世田谷区のマンションの一室に侵入し、女性をナイフで切りつけて顔にケガさせたとして、隣の部屋に住む31歳の男性が12月3日、傷害罪の容疑で現行犯逮捕された。

報道によると、男性は「危険ドラッグ」を吸引していたとされる。突然女性の部屋に侵入し、奇声をあげながら室内にあったナイフで女性を切りつけ、顔や手などにケガをさせた疑いが持たれている。男性は、警察の取り調べに対して「しぇしぇしぇのしぇ」など意味不明な発言を続け、マスコミのカメラに向けて笑顔でピースサインをするなど、奇行ともいえる行動をとっている。

ところが、12月4日東京地検に身柄を移された後の取り調べで、男性は「何も覚えていない」などと述べ、傷害の容疑を否認しているという。

法律的には、自分が何をしているかが分からず、自分の行動をコントロールできないような状況を「心神喪失」といい、そうした状態だと「責任能力がない」として、無罪になる場合もある。危険ドラッグを吸引して犯罪行為をして、後で何も覚えていないといった場合はどうなのだろうか。刑事事件にくわしい神尾尊礼弁護士に聞いた。

●「心神喪失」のハードルは高い

「『危険ドラッグ』を吸引していたことが、罪の成立に影響を与えることは少ないでしょう」

神尾弁護士はこう述べる。「何も覚えていないから、心神喪失で無罪だ」と主張しても、認められないということだろうか。

「そもそも、実務上、『心神喪失』や『心神耗弱(こうじゃく)』は、簡単には認められません。そう判断されるための壁は厚いのです。

たとえば、名古屋地裁は2013年6月10日の判決で、当時脱法ハーブと呼ばれていた危険ドラッグを吸引中に起こした危険運転致死事件について、被告人に完全な責任能力があると判断しました。

被告人は『事件当時の記憶がない』と主張しましたが、それは薬効で、短期的に記憶が阻害されたにすぎないとして、責任能力には影響を及ぼさないと判断されたのです」

●心神喪失だったとしても?

「また仮に、犯罪行為の当時、『心神喪失』状態だったと認定されても、罪の成立には原則無関係であると考られます」

それは、なぜだろうか。

「自分が暴れるのが分かっていて泥酔し、案の定暴れた場合は、暴れたことの責任を取るべきである、と考えられているからです。これは刑法学で、『原因において自由な行為』と呼ばれる理論です。

今回のケースでいうと、『危険ドラッグを使用すれば自分が暴れてしまうかもしれない』と認識していれば、罪に問えるということになります」

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