東芝が導入する管理職の「社長信任投票」――「法の想定外」の仕組みが機能するには?

弁護士ドットコムニュース / 2015年9月6日 12時10分

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巨額の不正会計問題を受けて、東芝がガバナンスの強化に向けて動き出した。社長を指名する指名委員会を社外取締役のみで構成するように変更するとともに、執行役や事業部長など上級管理職約120人による社長の「無記名信任投票」の制度を導入することが発表された。

社長信任投票は、報道によると、「経営トップとしての対応、法令遵守の姿勢に問題ないか」などについて投票を実施するというものだ。否定的な回答が多数(おおむね20%以上)の場合、追加調査する。投票結果は、指名委員会だけが把握し、社長を再任指名する際の参考にするという。

株主による経営監視ではなく、企業内部の信任投票であるため、実際にどれだけ機能するのか注目されている。この制度を有効に機能させるためには、何が必要なのだろうか。コーポレートガバナンスの問題に詳しい熊谷真喜弁護士に聞いた。

●社長に対する牽制が再発防止に

「会社法が定める指名委員会の権限は、株主総会に提出する取締役の選任・解任に関する議案の内容を決定するというもので(会社法404条1項)、執行役の選任・解任権は取締役会が有しています。

ですから、上級管理職による信任投票の結果を参考に、指名委員会が代表執行役社長の選定案を作成し、取締役会がこれを尊重するという仕組みは、会社法が想定していないユニークで大胆なものといえるでしょう」

熊谷弁護士はこのように述べる。

「東芝では、経営トップらの強い関与により不適切な会計処理が行われており、その原因のひとつに『上司の意向に逆らうことができないという企業風土』があったとされています。

これを踏まえると、社長の『部下』から指名委員会にダイレクトに情報が上がるようにして、社長に対する牽制を働かせ、再発防止策とすることは、意欲的なものとして評価できます。日本型のコーポレートガバナンスを探る試みともいえます」

●どのような基準で判断したかを説明すべき

今回の制度は、うまく機能するのだろうか。

「評価を行う『部下』の側がこの制度が意味のあるものだと実感して、積極的に信任投票を行う環境づくりが必要です。

そのためには、指名委員会が、信任投票の結果も含め、どのような基準でどのような判断を行ったか、社内に説明を行うべきでしょう。

『意見を言っても(投票しても)どうせ無駄だ』と思われてしまっては、制度も形骸化してしまうからです。

そうした観点からは、この制度が実効性をもつかどうかは、指名委員会によるフィードバックにかかっているともいえるでしょう」

熊谷弁護士はこのように指摘していた。

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
熊谷 真喜(くまがい・まき)弁護士
1997年東京大学法学部卒業、2000年弁護士登録。外務省に出向して条約交渉に携わった後、弁護士として復帰し、2011年二重橋法律事務所の設立にパートナーとして参加。M&A、企業内不正調査、企業間訴訟など、企業法務全般を手掛ける。複数の上場企業の社外取締役も務める。
事務所名:二重橋法律事務所
事務所URL:http://nijubashilaw.com/

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