警察、殺人事件の捜査忘れて7年間放置、被告人の「免訴」要求は認められる?

弁護士ドットコムニュース / 2016年11月12日 9時41分

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警察が事件の存在を忘れ、約7年も捜査を放置していた殺人事件の裁判が、鹿児島地裁で開かれている。被告人側は、捜査が長年放置され、憲法に定められた「迅速に裁判を受ける権利」が保障されなかったとして、「免訴」(有罪・無罪の判断をせずに裁判を打ち切ること)を要求。判決が11月14日に言い渡される。

殺人の罪に問われているのは、鹿児島市の男性(65)。2008年に介護していた当時81歳の母親と無理心中をしようとして、首を絞めて殺害したとして起訴された。

NHKの報道によると、男性は心中に失敗して入院。警察は男性の快復を待って捜査する方針だったが、2015年までの約7年間、捜査を放置していた。放置の理由について、証人尋問された元警察官は「日常の事件に追われているうちに、事件の存在や後任への引き継ぎを忘れてしまった」と述べている。

男性側の免訴の要求が認められる可能性はあるのか。神尾尊礼弁護士に聞いた。

●「遅延」では、唯一の免訴判決「高田事件」とは?

ーー免訴とはどういうものですか?

たとえば、時効が成立していた場合、有罪か無罪かで審理を続けても意味がないですよね。免訴判決とは、そうした場合などに「裁判手続を打ち切る」判決のことです。

「時効完成」など法律で要件が定められていますが、「裁判等が遅延した」ことは、免訴事由には入っていません。

ーーでは、今回の被告人の言い分はおかしい?

検討する余地がないわけではありません。手続の遅延について争われたものとして、「高田事件」という有名な事例を紹介しましょう。これは、裁判の途中で「15年以上」審理が行われなかった事案です。

最高裁は、「審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判の保障条項(注:憲法37条1項)によって憲法がまもろうとしている被告人の諸利益が著しく害せられると認められる異常な事態が生ずるに至った場合」には、時効完成に準じると判断し、「非常な救済制度」として免訴判決による審理打ち切りを認めました。

このように、裁判が非常に遅れた場合には、免訴判決が出されます。しかし、前例は、この高田事件以外にないとされています。裁判所自体が「非常な救済制度」というほどですから、「極めてまれ」と考えるべきでしょう。

なお、2003年には「裁判の迅速化に関する法律」が制定され、我々弁護士も可能な限りの迅速化を意識しているところです。

ーー今回の裁判はどう判断できるのか?

本件では、「起訴」が遅れただけで、「裁判手続」自体が遅れたわけではありません。ここが高田事件との大きな違いです。

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