ストーカー殺人をきっかけに進む「起訴状の匿名化」 冤罪を生む危険性に注意すべき

弁護士ドットコムニュース / 2013年8月29日 15時35分

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刑事起訴をする際に検察官が裁判所に提出するのが「起訴状」だ。起訴状には被告人がいつ、どこで、誰に対して、どんな犯罪行為をしたかという「公訴事実」を示さなければならない。これまで被害者の実名も明示するのが原則だったが、6月15日の毎日新聞によれば、実名を伏せた「匿名」の起訴状が現れているという。

2012年に逗子市で起きた殺人事件では、メールでストーカー行為を行う男性を脅迫容疑で逮捕した際に、警察官が逮捕状記載の被害女性の現在の姓や住所を読み上げたとされる。この警察の対応が、執行猶予となった犯人による殺人を容易にした――そのような批判が、事件後におきた。

これを受け最高検察庁は、再被害が考えられる事件では、「実名以外」で被害者を特定する方法を検討すべきとの方針を打ち出した。被害者名を旧姓で表記したり、メールアドレスで代用した起訴状も実際に作られているという。

ストーカーや性犯罪の被害者の安全を確保するためには良いのだろうが、何か不都合はないのか。民事事件のかたわら、刑事事件にも積極的に取り組む川口創弁護士に聞いた。

●匿名の起訴状により、冤罪が作られる危険性がある

近年の性犯罪やストーカー事件などをめぐって検察庁が作成する起訴状の傾向について、川口弁護士は次のように説明する。

「最近、検察庁は、被害者の氏名などの個人情報を伏せた起訴状を作成して、裁判所に提出するケースが出てきています。検察庁は『被害者保護のため』としていますが、被告人の防御の点から、匿名化には、危惧をおぼえざるを得ません」

そのうえで、被害者の氏名等を伏せた起訴状の危険性を、過去の弁護活動の経験をもとに、次のように指摘する。

「以前、『被害者女性と面識は一切なく、被害者女性宅に行ったこともない』と被告人が主張する否認事件を担当したことがあります。一方、事件そのものは、犯罪行為が被害者宅で行われており、被害者女性や被害者宅の特定は、犯罪を構成する要素として重要でした。

この事件では、被告人は被害者との接点がないことや、当時被告人は車を持っておらず、被害者宅周辺に行くことができなかったことなどを主張しました。もし、このようなケースで被害者の氏名や被害者宅の住所が明示されなかったならば、被告人は、『その女性との接点はあり得ない』ということや『その家に行ったことがない』というアリバイの主張を、まったくできなかった可能性があります。

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