世代間の「一票の格差」にどう対応すべきか? 憲法学者・木村草太氏の「意外な回答」

弁護士ドットコムニュース / 2013年7月20日 12時38分

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参議院選挙の投開票が7月21日に迫るなか、若者に「投票にいこう」と呼びかけるキャンペーンが盛んだ。だが、少子高齢化の進展により、高齢世代のほうがもともと「票数」が多いため、仮に若者世代の投票率が高齢世代と同じだったとしても、その影響力で劣ってしまうという問題がある。

たとえば、2012年の住民基本台帳によると、20代の人口は約1340万人で、60代の約1820万人の7割しかない。つまり投票率が同じなら、20代は60代の7割の影響力しかもてないということだ。「世代間の一票の格差」といわれる課題だ。

そうなると、政治家はどうしても「票数」が多い高齢者を重視した政策をとりがちで、将来の日本を担う若者に向けた施策に消極的になってしまう。そんな問題を解決するため、たとえば作家の平野啓一郎さんは「若者の投票権を一人二票に増やす」という提案をしている。

この「世代間格差」について、どのように考えるべきなのだろうか。若手憲法学者、首都大学東京の木村草太准教授に聞いた。

●「投票権は自分の利益ではなく、公共の利益のために行使すべき」

「世代間格差という問題設定は、民主主義のあるべき姿を誤解していると思います。

そもそも『世代間で一票の格差が生じている』という言説は、『各世代が、自らの世代の利益のみを追求し、公共の利益のための投票を行わない』との前提に立っています。

しかしもし、この前提が正しいとするなら、その国は直ちに民主制を止めた方がよいでしょう」

――自分自身の立場を有利にするため投票するのは、普通のことなのでは?

「それは違います。確かに、自分にとって有利なものを選びたい、という欲望はあるでしょう。しかし、投票権は、そもそも自分の利益だけを考えるのではなく、他の人にとっても納得のいく内容か、すべての人を従わせるだけの正統性をもっているか、を考えて行使されなければなりません。つまり、公共の利益のために行使しなければならないのです。

世代間格差が問題とされているということは、国民の間で、『他の人は自分のことしか考えていないのではないか』という疑心暗鬼が蔓延しているということです。

今、真剣に取り組むべきなのは、そういう猜疑心をどうやって払拭していくか、『みんなが公共の利益のことを考えて投票すべきだし、現にそうしている』という規範と信頼をどのように実現すべきかという問題です。

日本が今後、民主制を維持できるかどうかは、この問題に十分な回答ができるかどうかにかかっていると言えます。みなさんの責任は重大なのです!」

確かに、多数派が自分たちの目先の利益だけを追及するのであれば、それは民主主義ではなく単なる数の暴力となってしまう。多数派世代も若者世代も「有利不利」といったせせこましい考えは捨てて、「どんな政治が公共の利益のためになるのか」に思いを馳せながら、投票するべきだということかもしれない。

(弁護士ドットコム トピックス編集部)

【取材協力】

木村 草太(きむら・そうた)首都大学東京准教授

1980年生まれの若手憲法学者。研究テーマは思想・良心の自由、平等原則、代表概念論、公共建築と法など。「高度な内容を分かりやすく」が信条で、著書に一般向けの入門書『キヨミズ准教授の法学入門』(星海社新書)もある。世代間格差の問題については『憲法の創造力』(NHK新書)第2章が参考になる。ツイッターは@SotaKimura

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