名前晒し「2人の縁が切れ、私と結ばれますように」縁切り神社の絵馬に見た怨念

弁護士ドットコムニュース / 2017年5月20日 10時5分

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絵馬に書かれた願い事。夢や希望に溢れたものをイメージしそうですが、なかにはドロドロとしたものも存在します。人と人の縁を切ることを願う「縁切榎」について、ライターの平塚太陽さんによる寄稿レポートと、松本常広弁護士による名誉毀損などについての法律解説をお届けします。

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生きていれば誰しも人間関係の問題に直面する。かく言う私も人間関係の軋轢に耐え兼ね、一時は夜も眠れず、憂鬱と吐き気に苛まれて何も手付かずでいた。今はある程度精神面が安定してきたこともあって、ここで心機一転と、知人に勧められた「縁切榎」へ足を運んでみることにした。どうやら都内有数の縁切りスポットとして名を馳せているらしい。

最寄りの板橋本町駅(都営三田線)を降り、長閑な商店街を歩くこと5分。この辺りだろうと周囲を見回すが「縁切榎」の影はない。どうやら行き過ぎたらしい。注意しながら一つ交差点を戻ると、果たしてそこに「縁切榎」を見つけた。商店街の只中、交差点の片隅に密かに立っている。ふと顔を上げれば、交差点の名前も「縁切榎前」とあった。

「縁切榎」は、小さな社の中に立つ榎の木だ。境内には社殿と絵馬掛が目立つ。他には石碑と腰掛けがあった。絵馬は近くの商店で買うよう張り紙がされている。しかし小心者の私は、いざここまで来て、些かの躊躇いを覚え始めた。そうして数百を超える膨大な数の絵馬に埋め尽くされた絵馬掛を、踏ん切りがつかぬままに呆然と眺めていると、こちらに表を向けて掛かる一つの絵馬が目についた。

「どうかこの悪縁を絶って下さい。この精神的圧迫から救って下さい」こんな言葉が相手の住所氏名と並記されていた。違和感を抱いた私は、他の表向きの絵馬にも目を通す。やはり幾つかの絵馬は氏名を明示して縁切りを願っている。願いを叶える為に特定の誰かを明示したいのは分かるが、しかし実名や住所まで記して良いのだろうか。境内に訪れるのは神だけではないはずだ。

「二人の縁が一日も早く切れますように。あの人と私の縁が深く強く結ばれますように」といった略奪愛の願いや、夫の不倫を止めさせるよう願ったものなど、縁切りとはいえ過激な内容の絵馬も多かった。そうした絵馬を見るうちに、目の前の無数の絵馬、表を向けていない絵馬の数々が、私の不幸な想像力を煽り立て始め、やがては願を立てる気力も失くしてしまった。

斜陽に浮かぶ長閑な商店街の片隅、密かに佇む「縁切榎」の境内は、行き場のない現代人の苛烈な鬱積を抱え込んでいたのだ。心機一転やり直しに来たはずが、気づけば沈鬱な面持ちで帰途に着いていた。畢竟、再び憂鬱を引きずり始めることになったが、境内で抱いた疑問は引きずるまい。このような絵馬は、如何なる法的な問題を生じうるのか。

●松本弁護士の解説「絵馬で不倫暴露は名誉毀損罪にあたり得る」

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