痴漢典型例は「家庭持ち四大卒の会社員」「監視強めても続く」千人の分析で見えた実態

弁護士ドットコムニュース / 2017年8月27日 8時18分

「厳罰や監視が機能するのは、現時点で痴漢をやってない『潜在的痴漢群』や、初犯の人に対してです。常習化している人にはあまり効果がないのです。では、どうすればいいのか。やはり、治療の視点が不可欠です。海外では性犯罪者に対してGPS監視を行う国もありますが、ただ単に二重刑のように追い詰めて社会から排除するだけでは、真の意味での再犯防止には繋がりません。

埼京線で痴漢犯罪防止のための防犯カメラが設置されました。東京オリンピックを見据えて2018年春には山手線の全車両にも設置される予定です。これもすでに問題行動(痴漢)が常習化している人に対しては効果がないと考えます。防犯カメラがついたからこそ、『ハードルが上がる』と燃えて、痴漢行為に邁進するタイプもいるからです。映像は裁判で証拠として提出され、対象行為を検証する材料にはなると思いますが、再犯抑止にどれだけ繋がるかというのは疑問です。

もちろん罰を与えるというのも大事な視点です。被害者がいる以上、犯罪行為に対してはその行為責任をとるために罰を受ける必要はあります。その上で、適切な治療教育に繋げる道筋を作らないと、受刑後出所してきても繰り返すだけです」

ーー現在、刑務所などで再犯防止のためのプログラムはどうなっているのでしょうか。

「刑務所内では『性犯罪再犯防止指導(R3)』が実施されています。再犯防止に効果ありという結果も出ていますが、痴漢は迷惑防止条例違反などで処罰されるため刑期が1年程度と短いので、プログラムの対象から外れてしまうケースが多いです。また、出所後に保護観察所で受けられる『性犯罪者処遇プログラム』もありますが、一般的には3ヶ月間に計5回のプログラムで終わりです。

クリニックの治療プログラムにつながる人もいますが、やりたいという気持ちは一生なくなりません。条件反射の回路ができあがっているため、一度学習したものは脳にインプットされ身体が覚えています。その一方で、現在『治療的司法』が叫ばれていますが、刑事手続きはぶつ切りで法務省がうたう途切れのない連携とは程遠いです。結局、性犯罪者が野放しになっています。このままでは被害者が減りません。この問題をどうしていくかが、我々に与えられた大きな課題だと思います」

【プロフィール】斉藤 章佳(さいとう・あきよし)精神保健福祉士、社会福祉士。大森榎本クリニック精神保健福祉部長。榎本クリニックにて、アルコール依存症を中心に性犯罪、ギャンブル、薬物、摂食障害、虐待、DV、クレプトマニア(窃盗症)など様々な依存症問題に携っている。専門は加害者臨床で「性犯罪者の地域トリートメント」に関する実践・研究・啓発を日本で先駆的に行っている。

(弁護士ドットコムニュース)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング