池袋母子死亡事故、本当に運転男性を「逮捕」すべきなのか? 批判の声やまず

弁護士ドットコムニュース / 2019年5月21日 19時40分

今回、(1)を満たすことはあきらかですが、(2)は満たさず、(3)または(4)の理由があるか、が問題となります。

報道によれば、捜査機関は、防犯カメラやドライブレコーダー等の客観的証拠をすでに入手していると思われます。目撃者の供述も確保しているでしょう。被疑者は、すでに任意の事情聴取には応じているとのことです。そうすると、(3)の証拠隠滅のおそれは低いと判断しているものと思われます。

また、(4)逃亡のおそれについても、被疑者が87歳と高齢で、身元もはっきりしていることから、現実的に逃亡するおそれは低いと判断しているものと考えられます。

このように、逮捕・勾留の必要性が低い一方で、被疑者が高齢であり、ケガもしていることから、逮捕・勾留によって身柄を拘束することが相当ではないと判断しているのでしょう。

●「今後も逮捕・勾留されないという保障はない」

それから、事件全体の捜査状況も影響している可能性があります。今回の事件は、被害者多数で、事故状況も複雑であり、捜査には時間がかかると推測されます。

いったん被疑者を逮捕し、引き続いて勾留すると、検察官は、逮捕から最大23日間以内に起訴するか不起訴とするかの判断を迫られますので、被疑者の身柄を拘束する必要性が低い一方で、捜査期間に厳しい制限がかかるのは避けたいという捜査機関側の判断がある可能性もあります。

以上のように、逮捕・勾留の要件の面と、必要性・相当性の面から、捜査機関は今のところ逮捕・勾留を見送っているのではないかと思います。もっとも、今後も逮捕・勾留されないという保障はありません。

●「マスコミは『被疑者』に統一したらどうか」

なお、被疑者が逮捕されないことで世論が沸騰する背景には、逮捕された被疑者は「容疑者」と呼称される一方で、逮捕されない被疑者は肩書き付きで呼称されるといった取扱いの差異があります。

刑事訴訟法上では、逮捕されてもされなくても「被疑者」であることに変わりはなく、在宅のままで起訴されて公判で実刑判決を受ける可能性もあるわけですから、逮捕されたかどうかでこのように呼称に差異を設けるのは合理的ではありません。

この際、マスコミは、被疑者の呼称を、逮捕されても、されなくても「被疑者」に統一したらどうかと思います。

(弁護士ドットコムニュース)

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