再審制度の課題が浮き彫りに…「布川事件」国賠訴訟、画期的判決に隠れた問題点

弁護士ドットコムニュース / 2019年6月2日 9時43分

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茨城県で大工の男性が殺害された「布川事件」(1967年)をめぐり、冤罪被害者の桜井昌司さん(72)が起こしていた訴訟で、東京地裁(市原義孝裁判長)は5月27日、国と茨城県の責任を認め、桜井さんに約7600万円を支払うように命じた。

特徴的なのは、検察の「証拠隠し」に言及したことだ。判決は、二審で弁護人が開示を求めた「捜査報告書」や「供述調書」について、検察が開示を拒んだことを違法とし、開示されていれば、二審で無罪が出ていた蓋然性が高かったとした。

冤罪事件の「再審」に取り組む鴨志田祐美弁護士は、この判決について「証拠開示義務をうたったという点では、エポックメイキング」と評価。一方で「再審の部分になると、急に腰が引けている」とも指摘する。

桜井さんは無実の罪で29年間自由を奪われた。再審無罪判決の確定は事件から40年以上たってから。「袴田事件」の袴田巌さんのように、気の遠くなるような時間と労力をかけても、なお無罪確定まで遠いのが再審の現実だ。

判決から、再審をめぐる課題を見ていきたい。

●証拠開示義務を認めたことは意義深い

今回の判決は、検察官の手持ち証拠について、「裁判の結果に影響を及ぼす可能性が明白であるもの」は、法廷に出す義務があると判示している。

加えて、明白であるとまでは言えないものでも、被告人側から具体的に特定しての証拠開示の申立てがあれば、開示をしない合理的な理由がない場合には、証拠開示義務があるとした。

しかし、布川事件の二審があったのは1970年代前半。現代の刑事裁判にどれだけ影響するのだろうか。

「判決で問題視されている証拠は、現在なら当然開示されているものです。今は『こんなの出して当然でしょう』という状況があるからこそ、当時は法律がなかったとしても『出すべきだったよね』と言いやすいんですよ」(鴨志田弁護士)

裁判(通常審)の証拠開示については改善が進んでいる。裁判員裁判の導入に先立ち、2005年から一部の重大事件などで「公判前整理手続」が導入された。裁判を迅速に進めるため、あらかじめ事件の争点や証拠を整理する仕組みだ。

この中で、証拠開示(類型証拠、主張関連証拠)の充実も図られている。2016年には、同手続の中で証拠一覧表の交付制度も始まった。

ただ、制度の対象にならない事件も多く、対象になっても本当にすべての証拠が開示されている保証はない。その点で検察官の証拠開示義務に触れた今回の判決の意義は大きい。

●再審での証拠不開示については踏み込まず

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