川崎中1殺害で賠償命令も…。5500万円支払える? 被害者支援の課題を考える

弁護士ドットコムニュース / 2019年8月7日 9時47分

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多摩川河川敷で2015年2月に川崎市の中1男子が殺害された事件で、遺族が加害者側を訴えていた裁判の判決が7月26日、横浜地裁であり、計約5500万円の支払いが命じられた。

事件では、犯行当時18歳だった男性が殺人と傷害、17歳だった男性2人がそれぞれ傷害致死で起訴され、 いずれも不定期刑が確定している。

神奈川新聞によると、遺族は元少年3人とその親を合わせた計8人を提訴。判決ではこのうち、主犯格の男性にカッターナイフを渡した元少年の両親については、賠償責任を認めなかった。つまり、6人に計約5500万円の賠償を命じたことになる。

ただし、判決が確定しても実際に支払いがあるとは限らない。報道では、加害者側にも複雑な家庭事情があったとされる。少年たちが出所後の働き口を見つけるのも容易ではないだろう。仮に支払う意思があったとしても、現実的に無理なこともある。

裁判から見える被害者支援の課題について、犯罪被害者支援に取り組んでいる宇田幸生弁護士に聞いた。

●6割の事件で賠償金の支払いゼロ

ーー判決が出たあとの回収の難しさについて教えてください

犯罪の加害者から被害者への賠償金が支払われない例が相次いでいることは、報道でもしばしばされているところです。

日弁連が2015年当時に行なったアンケート調査でも、殺人などの重大犯罪については、賠償金を満額受け取ったという回答はなく、60%の事件でも支払が一切なかったというデータがあります。

重大な犯罪被害事件においては、たとえ判決が出ていたとしても回収が極めて困難であるというのが実情といえるでしょう。

●今年5月、実効性高める改正法が成立

ーー相手が払わない場合、どういう手続きを取るのでしょうか?

相手(債務者)に支払う意思がない場合には、確定判決を得た者(債権者)は「強制執行」の申し立てを裁判所に行い、裁判所の命令によって、債務者の財産を強制的に差し押え、現金化する等して、強制的に賠償金の取り立てを行なうことになります。

しかし、裁判所の判決は「強制的に債務者の財産から取り立てをして良い」といういわば許可書でしかないため、差し押さえるべき財産を「債権者自ら」探し出す必要があります。

ところが、債権者には警察のような捜査権限がなく、十分な調査ができません。現行法上は、弁護士法に基づく弁護士会照会制度(弁護士法23条の2)を利用して債務者の財産を調査したり、裁判所への申立てによって債務者から自主的に財産内容の開示を求める「財産開示手続」(民事執行法196条以下)を駆使したりして、取り立てすべき財産を探し出している状況です。

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